【14-18】軍事衝突回避は強い経済力と自衛隊能力の維持

2014年 8月13日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)

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 中国の軍事戦略に詳しい小原凡司東京財団研究員が8月8日、日本記者クラブ主催の研究会で講演、中国は日本と軍事衝突できないとし、そ の理由として自衛隊の能力に対する評価と日本からの投資を必要としている中国の内情を挙げた。

 氏は日米同盟の重要さを指摘しつつ、特徴的な戦闘においては自衛隊にかなわないとの意識が中国側にあるとの見方を示した。同時に土地開発による経済発展が限界に来ているため、日 本からの技術を伴った投資を必要としている中国の実情も挙げている。

 この2つの理由によって中国は日本に手を出せないのだから、日本が軍事衝突を防ぐには強い経済力の維持と、自衛隊の能力をしっかり維持することが重要だ、というのが氏の結論だった。

 中国は7月20日から8月15日にかけて3カ月にわたる大規模演習を実施している。この演習の実態、さらには習近平国家主席の人民解放軍への対応についても、小原氏は興味深い分析をしている。ま ず大規模演習とはいえ、部隊が移動しながら個別の演習をしている結果、期間が長くなっただけ。大きなシナリオに沿った総合演習が実施できる力を人民解放軍は持っていない、と断じた。そ の背景に江沢民元国家主席の影響を挙げ、江氏が「訓練で死者を出すな」という指示を出したのをよいことに、人民解放軍は胡錦濤政権下で十分な訓練をしてこなかった、としている。

 習近平氏がやっていることは、人民解放軍をたたき直して戦える軍隊にしようとしていることで、6月に徐才厚・前中央軍事委員会副主席に対し、党籍剥奪という重い処分を科したのは、軍 に忠誠を誓わせるための強い行動だった、と氏は見ている。現在の中国指導部の大きな目標は、共産党による長期安定と継続的な経済発展であって、米国との戦闘は避けなければならない。ただし、海 外での経済活動を展開するために有利な地域情勢をつくり出すため、「小国」との衝突はやむをえない。米国の干渉を抑えつつ、利益獲得のために自由に行動する…という中国の軍事戦略を紹介した。

 日本をことさら「小国」と見下したがる軍関係者も、「制服は着ていても軍事のことはよく知らない政治将校が多く、実際に現場で指揮を執る人たちには、今日本と戦闘しても勝てないと認識している人が多い」と 語った。

 中国の空母、駆逐艦、フリゲート艦、原子力潜水艦の配備状況、米中共に開発に熱心な極超音速滑空ミサイルについての両国の考え方の違いについても詳しく紹介したうえで、軍 事力比較では圧倒的な米軍優位な現状が、技術的な優位については減少の傾向にあるという見方も示した。

小原凡司氏プロフィール:

1985年防衛大学校卒。98年筑波大学大学院修士課程修了。海上自衛隊第101飛行隊長、 防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊 第21航空隊副長~司令などを経て、2011年 IHS Jane’s アナリスト兼ビジネス・デベロップメント・マネージャー、2013年から現職。2003年3月~2006年4月まで 駐中国防衛駐在官(海軍武官)も務める。

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