【14-22】日本企業と共同研究盛んな清華大学 共著論文数世界3位

2014年10月31日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)

 日本企業が共同研究の相手として選ぶ海外の大学として、中国の清華大学が主要な位置を占めていることが、科学技術・学術政策研究所の調査研究で明らかになった。

 科学技術・学術政策研究所が10月17日に公表した報告「共著論文から見た日本企業による国際産学共同研究の現状」は、日本企業1,686社を対象に、2 003~2009年に所属研究者が国内外の大学研究者とどれだけ共著論文を発表したかを調べている。

 報告によると、1,686社のうち44%に当たる749社の研究者が海外の大学との共著論文を出版していた。749社のうちの55%、415社は米国の大学との共著論文がある。続 いて多いのが中国の大学で、257社(34%)に上った。続いて英国(27%)、韓国(24%)、ドイツ(20%)という順になっている。

 共著論文の数が多い大学を見ると、米スタンフォード大が1位で日本企業と2009年までの7年間で299本の共著論文を発表している。2位も同じ米国のハーバード大で日本企業との共著論文数は201本。続 く3位に清華大学が入っている。日本企業との共著論文数は194本だ。10位内に入っている大学のうち7つは米国が占めており、残りは5位のカナダ・ト ロント大と7位の英ケンブリッジ大だけだから清華大の3位は目立つ。

日本企業所属研究者との共著論文の多い海外大学上位10校(整数カウント)

資料1

(科学技術・学術政策研究所)

 清華大学との共著論文が多い日本企業は、2003~2005年ではIHI、日立製作所、三菱重工、2007~2009年ではオムロン、IHI、三菱重工の順となっている。ま た2003~2005年の共著論文数と2007~2009年の共著論文数を比べると7割増になっていることなどからみても、日本企業の清華大に対する評価が近年、さらに高まっていることも分かる。

 調査報告は、日本企業研究者と上位10大学研究者との共著論文が対象としている分野についても分析している。全体としてみると工学が最も多い。ただし、1位のスタンフォード大とは物理・天文学、2 位のハーバード大とは医学分野が最も多く、工学分野が突出して多い清華大と好対照を見せている。

 報告はまとめの中で「アジアの大学、とりわけ中国の大学との間の共著論文が近年増加傾向にあること」とともに、「規模の大きな企業は、欧 米の大学に所属する研究者との国際産学共著論文を執筆している割合が高まり、比較的規模の小さい企業はアジアの大学に所属する研究者との国際産学共著論文を執筆している割合が高い傾向があること」も指摘している。 

 10月30日、中国の大学の現状に詳しく最近も「北京大学清華大学」(丸善プラネット)を出版した林幸秀科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェローが、科 学技術振興機構中国総合研究交流センター主催の研究会で講演した。氏は、北京大学清華大学がいずれも「教員や学生が国際的に活躍することに特化して、施策を推し進める」といった大学の国際化、「実力で採用し、外 国での研究、教職経験を重視する」選び抜かれた教員、「大部分の企業は研究能力がほとんどない」ことに起因する盛んな産学連携といった優れた特徴を持つことを指摘した。

 「日本企業は欧米の有名大学と共同研究するより安上がりですむし、大学側は研究資金が増えるので大歓迎だ」。清華大学と共著論文を発表する日本企業が増えている現状について、氏は当然とみている。 

日本企業所属研究者との共著論文の多い海外大学上位10校との
国際産学共著論文において各学術分野の占める割合(整数カウント)

資料2

(科学技術・学術政策研究所)

 中国の大学に対する評価の高まりは、日本企業だけでなく日本の学生の間にも見られる。10月2日、科学技術振興機構中国総合研究交流センター主催の研究会で講演した宮内雄史東京大学北京代表所所長は、2 001年当時、中国への日本人留学者数は5万2,000人、日本への中国人留学生は7万9,000人であったが、10年後の2011年には逆転し、中国へは29万.2,000人が留学する一方、日 本へは16万3,000人にとどまった、という事実を紹介している。

 宮内氏はまた、英誌「ザ・タイムズ・ハイアー・エデュケーション」の世界大学ランキング2013-2014で、北京大学が45位、清華大学が50位にランクされていることを挙げ、こ れら両大学の学生にとって、日本で唯一、自分たちよりランクが上にある東京大学(23位)以外の日本の大学に留学を検討することは「『格落ち』と感じることが少なくない」という興味深い現実にも触れていた。 

科学技術・学術政策研究所・調査研究成果公表
共著論文から見た日本企業による国際産学共同研究の現状」( 2014年10月17日)
ザ・タイムズ・ハイアー・エデュケーション誌「 The World University Rankings 2013-2014
科学技術イノベーション競争力大学ランキング(2013-2014年)
2012 中国大学ランキング(中国校友会ネット版)
2012 中国大学ランキング(中国人民大学高等教育研究センター版)
2012年 中国の大学ランキング(武書連氏主宰の「中国大学評価」課題チーム)

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