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【20-008】新型コロナウイルス感染症治療薬開発に関する中国の動き

JST北京事務所 2020年2月13日

 武漢市を中心とした新型コロナウイルスに関連した肺炎の感染拡大に対する中国政府の対策の一環として、関連治療薬の研究開発において、以下の動きがあるとみられる。

1)最新の動きとして、米ギリアド・サイエンシズ社(Gilead Sciences, Inc.)は中国の衛生当局と合意のうえ、同社研究開発中の抗ウイルス薬Remdesivir(中国語名:瑞德西韦)を中国湖北省武漢市を中心に発生している新型コロナウイルス(以下、2019-nCoVという)の感染拡大に向けて投入し、フェーズⅢ臨床試験を展開することになった。同薬の臨床試験の展開に必要な登録・審査は、中国科学技術部(MOST)、国家衛生健康委員会および国家薬品監督管理局等の関連当局から協力を受け、速やかに済まされたという。2019-nCoVに効果的な適用薬が既存しない目下、前期に実施された細胞と動物試験において一定のウイルス活性化抑制の効果が表れ、エボラ対応の臨床試験にも進んでいるRemdesivirは、2019-nCoV感染対応の臨床治療での活躍が大いに期待されている。

 今回の臨床試験は、科学技術部支援の応急課題「Remdesivirによる2019新型コロナウイルス感染の治療研究」として、2月5日に、武漢市にある金銀潭病院(注:2019-nCoV感染者を最初に受け入れた病院である)においてスタートした。日中友好病院(注:日本のODAを用いて整備された病院)と中国医学科学院は主要な実施機関となり、6日から最初に選ばれた試験対象者の761人(軽症・中症患者308人、重症患者453人)に対して投薬開始している。

 研究代表者の一人である中日友好病院の曹彬教授によると、今度の臨床試験は、厳格なランダムダブルブラインド法を導入し、Remdesivirの2019-nCoV患者に対する治療の効果と安全性を評価することを目的とする。また、試験は、顕著な臨床症状が出ていない感染確認者に対する治療効果の評価と、比較的重い臨床症状が出た感染確認者に対する治療効果の評価という2項目に分けて進めていくという。

 ギリアド・サイエンシズ社は同臨床試験に当たって、研究に必要な薬品を無償で供与し、研究の設計と実施のためにサポートを提供する。当面の緊迫している情勢に鑑み、同社は、2019-nCoVに対する潜在的な有効性と安全性が試験において判明すれば、同薬の生産を加速できるよう準備を進めている。

関連サイト

环球网搜狐号《好消息!详讯:抗病毒药物瑞德西韦临床试验在武汉启动》

南方都市报搜狐号《抗病毒新药瑞德西韦今天下午在武汉金银潭医院宣布启动临床研究》

环球网搜狐号《刚刚,瑞德西韦临床试验正式在武汉启动:入组患者761例》

 他の動きとして、以下のとおりまとめる。

2)2月4日に行われた国家衛生健康委員会主催の記者会見において、科学技術部生物技術開発センター孫燕栄副主任(副センター長)より、2019-nCoV対応に向けたMOSTの取組が紹介された。

・MOSTは2019-nCoV対応に向けた緊急課題を始動し、治療薬の開発に力を注いでいる。これらの緊急開始のプロジェクトにおいて、科学の規律や倫理等を順守し、快復期の血漿と幹細胞による重症患者に対する臨床治療の効果を含む研究探索を進めるとしている。

・既存の薬物から、2019-nCoV対応に効果が望めるもののスクリーニングについて、上述のRemdesivirの中国における臨床試験の展開に向けた支援を行ったほか、抗マラリア薬のChloroquine Phosphate(中国語名:磷酸氯喹)と抗インフルエンザウイルス剤のファビピラビル(favipiravir 注:富山化学株式会社製)および一部の漢方薬が、コロナウイルスの活性化抑制にも効果があることを発見した。

関連サイト

封面新闻百家号《科技部:药品瑞德西韦即将运抵我国开展临床试验》

3)李蘭娟・中国工程院院士/国家衛生健康委員会シニア専門家グループメンバー/浙江大学医学院教授による取り組みについて

・抗インフルエンザウイルス剤として使われるArbidol(分子式:C22H25BRN2O3S。前ソ連薬物化学研究所開発)およびHIV-1プロテアーゼ抑制剤として使われるDarunavir (分子式:C27H37N3O7S)は、体外の細胞試験において、いずれもコロナウイルスを抑制する効果が見られたと表明。具体的には、Arbidolは10~30μmol濃度で投薬した場合、コロナウイルスを抑制する効果が未投薬の60倍に達する。Darunavirは、300μmol濃度で投薬すれば、ウイルスの再現を明らかに抑制でき、抑制効果が未投薬の280倍に達する。

・李蘭娟教授が率いる研究チームは、感染症国家重点実験室(P3)におけるコロナウィル分離において8株のウイルスを取得できた。その中の何株かがワクチン整備に適し、これを以てワクチンの整備に急いでいる。

関連サイト

百度 封面新闻《李兰娟院士最新研究成果能有效抑制新冠病毒?一些专家这样说》

央视网新闻百家号《李兰娟院士:有几株病毒非常适合做疫苗》

 現在、中国で2019-nCoV治療薬に関する臨床試験への関心が高まっている状況に対し、鍾南山中国工程院院士は、一旦実験室で何らかの兆候があらわれたら、直ちにそのまま臨床へ移していきたくなることがよくあるが、これは十分に注意し、倫理審査を通さなければならない。また臨床の医者も臨床のルールに従わなければならない。」と注意喚起し、「臨床試験の早道を加速してよいが、必要なプロセスを踏まなければならない」と呼びかけている。

関連サイト

2020年2月6日 人民網《钟南山谈抗病毒特效药:必须走程序,按临床规矩做》

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