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【20-052】「早に白帝城を発す」―重慶での有馬朗人先生との思い出

茶山 秀一(JST北京事務所所長) 2020年12月15日

 科学技術振興機構(JST)中国総合研究・さくらサイエンスセンター(CRSC)の有馬朗人センター長が去る12月6日、逝去されました。有馬先生の日中協力・交流への長年の御尽力に中国の科学技術・学術関係者から数百の弔意が寄せられています。

 有馬先生は、1981年以来、講義やシンポジウム、そしてCRSCの業務等で、何度も熱心に足を運ばれました。最後に中国をご訪問されたのは、2019年5月、成都で開催された日中大学フェア&フォーラムへのご出席と重慶での講演のためでした。

 重慶では、中国の高校生たち1,200人を前に物理学の発展をテーマに講演されました。

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重慶南開中学(日本の高等学校に相当)での講演

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講演会場のようす

 物理学の発展の歴史的過程を追いながら、古くは長岡半太郎、そして李政道、楊振寧、呉健雄、さらに南部陽一郎、益川敏英、小林誠ら日本・中国の研究者がどのような役割を果たして来たか、俳人でもあり、両国の文化にも造詣が深い先生が、西欧との自然風土との違いにも触れつつ、説明されました。生徒たちに対するメッセージとして、将来、大きな志の下に、科学のおもしろく、かつ重要な問題に取り組むことを勧められました。

 学校から、生徒が書いた王維の漢詩、竹里館の書が贈られたときに、有馬先生は、「李白、杜甫らに関わりの深い重慶をぜひ一度訪れたかった」との想いを語られました。

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中国の高校生から漢詩の書を贈呈

 有馬先生が、日本の漢文の読み方で李白の「早に白帝城を発す」を朗読されると、生徒たちが自然と中国語で唱和し、会場が一体感に包まれたことを深い印象とともに思い出します。

 謹んで哀悼の意を表します。

《开讲啦!丨 有马朗人做客重庆南开中学》日本国驻重庆总领事馆2019年5月30日
2019年 5月27日 日中大学フェア&フォーラム開催報告&資料「千人以上の日中大学関係者が成都に集結 日中大学フェア&フォーラム