千人以上の日中大学関係者が成都に集結 日中大学フェア&フォーラム
2019年 5月27日 曹暉(中国総合研究・さくらサイエンスセンター特任フェロー)
中国科学技術部(国家外国専家局)と国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が共同で主催する、日中最大規模の大学・人材・技術交流イベント「日中大学フェア&フォーラムin China 2019」が5月25日、四川省成都市の錦江賓館で開催された。中国科学技術部や文部科学省で要職を務める関係者や80名を超える日中双方の大学の学長・副学長、また各研究機関の幹部、日中の教育・科学技術分野の専門家ら合わせて1,200名以上が本会に参加した。今回も中国側からは、各省の大学・高専などの多くの教育機関からの参加が見られた。
写真1 日中大学フェア&フォーラムin China 2019開幕式
今回のフェア&フォーラムでは40校以上の日本の大学・高専の学長・副学長、また研究機関および企業の指導層ら230名あまりが成都に足を運び、そして中国からは46の大学・各種学校の学長・副学長、また各方面の研究者合わせ1,000名以上が集まり、日中の大学間で行われる最大規模のハイレベル国際交流イベントとなった。また本会では中国国際人材交流協会、四川省科学技術庁、四川省科技交流中心の全面的な支持と協力を得た。
写真2 大会に参加した日中両国の大学学長・副学長
開幕式では中国国際人材交流協会の潘艶傑副主任が司会を務め、各機関の代表者のあいさつが続いた。
まず中国側を代表して、中国国際人材交流協会の張建国副主席兼秘書長が「日中両国は各々の科学技術の特徴を補え合える関係にあり、その協力には大きなポテンシャルが潜んでいる。日中の共同研究については、中国側では科学技術部が、日本側では文部科学省と外務省、科学技術振興機構、理化学研究所、国際協力機構(JICA)などの多くの関係機関が共同で研究資金を投入し、双方で多くの協力と交流が進展している。2018年8月に日中政府間で行われた第16回科学技術協力委員会で、科学技術部と文部科学省は日中共同研究プロジェクトとして、『日本‐中国国際共同研究イノベーション拠点』に関する覚書の署名も行い、これにより日中双方の産学官連携に関連する機関との間でのさらなる協力と交流が活発になるだろう」と述べた。
また張副主席は「科学技術人材の交流に関して、日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)では2014年にはじめて実施されて以来、すでに9,000人の中国の人材が日本を訪問し、一方、2016年からはじまった「中日青年科学技術人材交流計画(中国政府による日本の若手科学技術関係者の招へいプログラム)では336人の日本の若手行政官、大学や研究機関の研究者が訪中している。2019年4月には科学技術部とJSTは日中科学技術人文交流に関する覚書に調印し、さらなる両国の交流と協力が期待される」と強調した。
写真3 張建国副主席によるあいさつ
次にJSTの甲田彰理事が日本側を代表して登壇し、中国科学技術部外国専門家、国際人材交流協会、四川省科学技術庁、四川省科技交流中心へ本会に対する協力について深い感謝を述べるとともに「日中間の学術交流の最大のプラットフォームである本会には、80以上の大学および研究機関、企業が成都やってきた。この機会に日本の大学・研究機関には多くの中国の大学・研究機関との協力関係を構築し、国際産学官連携を促進し多くの協力に関する覚書を締結し、新たな時代のイノベーション人材・国際人材を共同で育成してもらいらい」と語った。
写真4 JSTの甲田彰理事
JSTの中国総合研究・さくらサイエンスセンターの有馬朗人センター長は、日中の各地より本会に駆けつけた80名以上の講演者と参加者全員に心より感謝の意を表した。その上で草の根交流の重要性を説き「日中大学フェア&フォーラムは2010年にスタートし、大学等の高等教育機関の間の交流に立脚し、現在までに130人以上の日本の大学の学長、200人以上の中国の大学の学長が参加し、共同研究、教員の研修、交換留学等の多くのプログラムについて覚書を結んできた」と、これまでのフェア&フォーラムの足跡を紹介した。
写真5 有馬センター長は「草の根交流」の重要性を説いた
文部科学省科学技術・学術政策の松尾泰樹局長は「昨年に引き続き日中両国の政府間交流はさかんで、昨年5月に李克強首相が来日し、10月には安倍晋三首相が訪中した。科学技術の領域では、昨年8月に両国政府は日中科学技術協力委員会を開催し、今年4月には北京で日中イノベーション協力対話を開催した。現在までに調印された日中の大学間交流の覚書は5,700件を超え、日本の大学における中国からの留学生は、留学生全体の4割を超えている。日中大学フェア&フォーラムの開催は今回で15回目となるが、日中双方の大学間協力・交流、留学、産学官協力を促進する重要なプラットフォームとして大きな貢献をしている」と昨今の日中間の情勢やフェア&フォーラムの意義について述べた。
写真6 松尾局長によるあいさつ
大連理工大学の郭東明学長は、大連理工大学の日本の大学との協力について紹介し、日中双方の大学でのダブルディグリープログラムによる国際人材育成の成功例、そしてこれまで長期にわたって展開してきた日中協力の経験について説明した。現在までに、大連理工大学では立命館大学、東京工業大学、東北大学、名古屋大学等40以上の大学との大学間協力に関する覚書に調印しているという。その中で24の大学と交換留学生の派遣、日中双方の学生による同じ授業の参加、同じキャンパスでの生活を送る、というプログラムを展開している。立命館大学とは2+2(それぞれのキャンパスで2年間履修)協力プログラムを行い、両大学から学位が授与されるという。また東京工業大学とは3+2(3年間大連理工大学で、2年間東工大でそれぞれ学ぶ)というプログラムを推進しているという。一方、名古屋大学とも「短期留学+修士課程連携プログラム」について初歩的な合意が達成されたと発表された。
写真7 日本の大学との協力について説明する大連理工大学の郭東明学長
JST中国総合研究・さくらサイエンスセンターの沖村憲樹上席フェローは、JSTが推進する「さくらサイエンスプラン」について紹介した。「さくらサイエンスプラン」は沖村上席フェローが立ち上げ、中国およびアジアの青少年の短期訪日国際交流プログラムで、その対象を原則として初来日の40歳以下の高校生、大学生、大学院生、ポスドク、教員、研究者や非営利機関の職員となっている。2014年の実施開始以来、すでにアジア各国から26,800人以上が訪日しており、その中で中国からは約9,000人が日本を訪れているという。
沖村上席フェローは、自身の目標として、「さくらサイエンスプラン」を通じて「一刻も早く30,000人のアジアの青少年が訪日し、中国の青少年も1万人を達成したい。この相互理解を深める友好事業にさらに多くの大学、高校の学生・生徒に参加してもらいたい」と訴えた。
写真8 「さくらサイエンスプラン」を説明する沖村上席フェロー
この他、国立高等専門学校機構の谷口功理事長、中小企業基盤整備機構の秋庭英人副理事長、日中経済協会の杉田定大専務理事等が登壇し、日本の職業教育の人材育成制度や中小企業支援制度、日本の経済産業、企業構造、日中のイノベーション技術交流の上場などについて説明を行った。
写真9 国立高等専門学校機構の谷口功理事長
写真10 中小企業基盤整備機構の秋庭英人副理事長
写真11 日中経済協会の杉田定大専務理事
また同日、北京交通大学、上海交通大学、中国科学技術大学とJSTは、協力覚書を更新し、福州大学と兵庫県立大学、青海大学と金沢大学がそれぞれ新たに協力覚書を締結し、同会場にて調印式が行われた。
写真12 協力覚書の調印式