【21-008】《NSFC》国家自然科学基金委員会の改革への取り組み
JST北京事務所 2021年02月15日
中国における基礎研究の公募型研究費支援機関である国家自然科学基金委員会(NSFC)は、近年、積極的に改革に取り組んでいる。
以前は、独立した組織であったが、2018年に科学技術部が管理する組織となった。近年の改革の動向を説明する。
1.国家自然科学基金深化改革要点[1]
NSFCは、2018年12月に「改革の要点」を発表した。ポイントは次のとおりである。
【背景】
①新たな科学技術革命とも言うべき科学技術の発展動向、②国家のニーズやグローバルな課題へのチャレンジ、③ビッグデータ、オープンサイエンス、グローバル化等研究開発の方法の変革、④分野横断・融合といった背景の下、
【任務】
①課題の性質に応じた明確・適切な支援、②評価体制の改善、③分野横断・融合を促進し、全体のバランス・レイアウトをより優れたものとする。
【目標】
これらの任務の達成により、新しい時代の科学基金のあるべき体系を確立し、卓越した学を生み出していく。
【段階】
第1段階(2018~2022年)、第2段階(2023-2027年)
2.2019年の改革[2]
(1)分類しての申請と評価
・重点プロジェクトや一部分野について、科学の課題の属性に応じて、申請者が次の4つのいずれかを選択して申請する。NSFCは、それに応じた評価と管理の体制を確立する。
①新しい発想での探索と突出したオリジナリティを目指す、②世界の科学の最前線にフォーカス、独自の世界を切り拓く、③国家の重大なニーズや経済の主戦場でニーズドリブンな研究でボトルネックの背景にある科学の課題を突破する、④分野横断的な共通性と特徴ある課題に挑む
(2)他者との連合基金による助成
・地域や産業、企業のニーズ、キーとなる領域の核心的な課題、新興・最前線の課題等に対応。
①企業イノベーション発展連合基金;1対4の割合で経費を投入。2019年12月時点で中国電化、中国石化、中国海油が加入
②区域イノベーション発展連合基金;1対3の割合で経費を投入。2019年12月時点で四川、湖南、安徽、吉林の各省が加入。
③部門連合基金;1対2の割合で経費を投入。例;中国工程物理研究院とのNSAF連合基金[3]
2019年は、①~③で25の連合基金と協議。2019年のNSFC公募ガイドライン中に③の23の連合基金の公募を記載。①と②は別に単独のガイドラインで公募。
(3)大型の基礎科学センタープロジェクト
・各分野原則2件を採択。5年(最長2期)。1期;8,000万元(数学と管理科学は6,000万元)。PI5人、3機関以内。
(4)イノベーション研究グループプロジェクトの改革
・減額せず、期間を短縮。採択件数を増加。期間延長の廃止。
(5)人材支援制度の改革
・中国本土の研究者と協力する海外(華人)・香港・マカオ地区研究者向けのファンディング(「2+4」と呼ばれる2年の支援の終了後に、継続支援4年を申請できる仕組みであった。)は2019年より2年の支援の公募、2020年より継続支援の公募がそれぞれ停止(香港・マカオの研究者への支援は後述の(7)の支援形態に変更された。)
(6)申請の簡素化
(7)香港・マカオ地区研究者への申請の開放
(8)研究倫理遵守の強化(研究倫理に関する署名書面を申請時に提出)
2. 2019年度国家自然科学基金改革挙措
および同タイトルの2018年12月14日付Wechat公式アカウント
3. NSAF連合基金については、以下を参考とした。
NSAF連合基金
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2019年12月26日 北京便り「 国家自然科学委員会、新プログラムで独創的な探索研究の支援強化」
2019年12月18日 北京便り「 中国NSFC、UKRIとファンディングエージェンシーに関するワークショップを開催」