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【22-02】対中国関係不安視85.2%に 内閣府世論調査で前年上回る

2022年01月31日 小岩井忠道(科学記者)

 中国との現在の関係について良好だと思わない日本人は85.2%に上り、前年の81.8%から増えていることが、内閣府の調査で明らかになった。中国に親しみを感じないとする人も前年と大きな変化はないものの79.0%に上る。一方、「今後の日本と中国との関係の発展は両国やアジア・太平洋地域にとって重要と思うか」という問いに対しては、前年とほぼ同じ78.7%もの人たちが「重要だと思う」と答え、「重要だと思わない」の20.9%をはるかに上回った。

 1月21日に内閣府が公表した「外交に関する世論調査」結果は、日本国籍を持つ18歳以上の全国民から層化2段無作為抽出法という手法で選び出された3,000人を調査対象としている(有効回収率56.7%)。昨年10月から12月にかけて実施された。新型コロナウイルス感染拡大のため、内閣府は2020年の9月以降、すべての世論調査をそれまでの調査員による訪問聴取法から郵送による手法に変更している。「外交に関する世論調査」も、2020年10月から12月にかけて実施された前回の調査に続き2回続けて郵送法に変わった。

中国に親しみ感じる人は2割

 調査の結果、中国に親しみを感じている人が大きな変化とは言えないものの前回調査より減った。「親しみを感じる」と答えた3.4%と「どちらかというと親しみを感じる」と答えた17.2%を合わせ、20.6%に留まる。前回、2020年の調査では22.0%(「親しみを感じる」3.9%プラス「どちらかというと親しみを感じる」18.2%)だった。一方、親しみを感じない人は79.0%(「どちらかというと親しみを感じない」35.4%プラス「親しみを感じない」43.5%)。前回調査では77.3%(「どちらかというと親しみを感じない」36.4%プラス「親しみを感じない」41.0%)だったから、やや増えている。

 年齢別に見ると親しみを感じる人の割合は18~29歳、30歳代で高く、親しみを感じない人の割合は60歳代、70歳以上で高くなっている。若い世代で親しみを感じる人の割合は比較的高く、高齢層で親しみを感じない人の割合が比較的定高いという傾向は、前回調査と変わらない。

中国に対する親近感

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(内閣府「『外交に関する世論調査』結果の概要」から)

日中関係良好と見るは14.5%

 現在の日本と中国との関係については、より厳しい見方をする人の割合が増えている。「良好だと思う」0.9%と「まあ良好だと思う」13.6%を合わせても14.5%に留まった。前回の調査では17.1%(「良好だと思う」1.4%プラス「まあ良好だと思う」15.7%)だったから、2.6ポイント低下している。一方、良好だと思わない人は85.2%(「あまり良好だと思わない」47.7%プラス「良好だと思わない」37.5%)に上る。前回の調査結果81.8%(「あまり良好だと思わない」45.7%プラス「良好だと思わない」36.1%)に比べ、3.4ポイント上昇した。

 年齢別に見ると、良好だと思う人の割合は18~29歳で高く、良好だと思わない人の割合は60歳代で高くなっている。この傾向は前回の調査結果と変わらない。

現在の日本と中国の関係

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(内閣府「『外交に関する世論調査』結果の概要」から)

8割弱が今後の関係重要視

 日本人の対中国観が1年間でさらに厳しくなっている中で目を引くのが、今後の中国との関係に対する見方だ。日本と中国との関係の発展が両国やアジア・太平洋地域にとって重要だと思う人の割合は、78.7%(「重要だと思う」38.2%プラス「まあ重要だと思う」40.4%)に上り、重要だと思わない人の20.9%(「あまり重要だと思わない」11.8%プラス「重要だと思わない」9.1%)をはるかに上回る。前回調査で重要だと思う人の割合78.2%(「重要だと思う」40.1%プラス「まあ重要だと思う」38.1%)とほとんど同じで、日中関係を重視する日本人が大多数を占める状況は変わらないことが分かる。年齢別に見ると、重要だと思う人の割合は18~29歳、40歳代で高く、前回調査に比べ年齢幅が広がる傾向もみられる(前回調査で高かったのは18~29歳だけ)。

今後の日本と中国との関係の発展

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(内閣府「『外交に関する世論調査』結果の概要」から)

大きい46年間の変化

「外交に関する世論調査」は、内閣府が実施してきた数多い世論調査の中でも最も古くから実施してきた調査の一つ。1975年からほぼ毎年、調査員による訪問聴取という手法で実施されてきた。前回(2020年)と今回(2021年)は郵送法に調査手法が変わったため、内閣府は前々回以前の調査結果との単純比較は行わないとしているが、過去の調査結果をみると日本人の対中国観は大きく変化していることが分かる。

 中国に親しみを感じる人の割合は、この調査項目が入った最初の年で日中平和友好条約が締結された年でもある1978年には61.2%と6割を超えていた。2年後の1980年には78.6%に上昇している。以後9年間は70%台ないし60%台を維持し、その後徐々に低下し続けたものの2003年まで40%を下回ることはなかった。しかし、尖閣諸島の民有地を国が購入すると閣議決定した2012年に18.0%と初めて2割を下回って以来、10%台が続く。2018年に20.8%、2019年に22.7%と20%台に回復にしたものの、郵送法に変わった前回以降もほとんど変化はないことになる。一方、今後の日本と中国の発展に関する発展を重要と考える人の割合に関しては、2016年以降、2019年まで70%台と80%台が続き、前回と今回も8割近い割合を維持している。

行動規範つくりあげる外交求める声も

 日本と中国との関係について両国民がどのように見ているかについて、民間の非営利シンクタンク「言論NPO」が中国国際出版集団と2005年から毎年実施している共同世論調査がある。昨年8~9月に実施された第17回調査によると、一昨年の調査から悪化している日本国民の中国への「印象」に改善は見られないとしている。中国に「良くない」という印象を持つ日本人は90.9%(前年は89.7%)と9割を超え、これまでで4番目に悪い水準となった。現状の日中関係を「良い」と思う日本人はわずか2.6%で、「悪い」と見ている人は54.6%(前年54.1%)と半数を超える。

 一方、日本に対して「良くない」という印象を持つ中国人も前年の52.9%から66.1%に大幅に増加し、「良い」が前年の45.2%から32.0%と大きく落ち込んだ。現状の日中関係を「良い」と思う中国人も前年の22.1%から半減し、10.6%となった、という結果が公表されている

 共同世論調査だけでなく日中両国民の対話を重視し、2005年以来、毎年、東京と北京で交互に(2009年だけは大連)「東京-北京フォーラム」を開催している言論NPOの工藤泰志代表は27日、日本記者クラブ主催の記者会見で、日中間の民間外交の重要性をあらためて強調した。工藤代表はさらに日本政府への注文として、二国間のコミュニケーションを重視する外交にとどまらず、米中間の外交のように行動規範をつくり上げる取り組みを提言した。

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記者会見で行動規範をつくり上げる日中間外交などを提言する工藤泰志言論NPO代表(1月27日、日本記者クラブ)=日本記者クラブYouTube会見動画から

関連サイト

内閣府「外交に関する世論調査

内閣府「外交に関する世論調査一覧

言論NPO「第17回日中共同世論調査

日本記者クラブ「会見リポート:工藤泰志・言論NPO代表

同「YouTube会見動画

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