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【23-26】中国、経済回復の兆しかー「富裕層が多い都市ランキング」でTOP10入りも

松田侑奈(アジア・太平洋総合研究センター フェロー) 2023年04月26日

 投資・移民コンサルティング会社ヘンリー・アンド・パートナーズが4月18日、富裕層が最も多く住む都市ランキング(World's Wealthiest Cities Report2023[1])を発表した。

 Top50は、アメリカの都市が最も多く、計10都市がランクインした。次が中国で、香港、北京、上海、深圳、杭州、広州の6つの都市の名が挙がった。特に、香港、北京、上海は7位から9位を占め、中国で大きく報道された。

 このランキングは、億万長者の数やその増加率等で評価しているが、TOP10には、東京、シンガポール、シドニー等がランクインし、アジアの躍進が目立っている。

 中国では今回の結果について、中国が世界の新たな経済中心地域になりつつある証だとし、経済、科学技術等における著しい成長が高いランキングに貢献したと分析した。また、これから北京、上海を継ぐニューシティーが多く増えると自信を見せた。

 一方、国家統計局は同日、「2023年第1四半期(1~3月)国民経済運用状況[2]」を公開し、第1四半期のGDPが28兆4997億元(1元=約19円)で、同期の実質GDP成長率(前年同期比)は4.5%だったと明らかにした。国民経済総合統計司の付凌暉司長は、中国の経済が徐々に回復を見せているとコメントし、特に、以下の6つのポイントを強調した。

①経済成長率の増加。諸業界の中でも、特に宿泊・飲食・旅行等のサービス業で最も大きい増加(前年同期比5.4%)が見られ、農林牧漁業でも安定した経済成長を見据えている。

②国内消費市場の回復。固定資産への投資は前年同期比5.1%増加し、例年の増加率レベルを保っているが、基礎施設への投資は8.8%、製造業への投資は7.7%と大きく増えた。また外食産業の収入は前年同期比13.9%増加し、コロナの影響で凍りついた消費市場にもついに春が訪れた。

③就職率・物価の安定。都市失業率は前年度第4四半期に比べ0.1ポイント下落したが、大きな変動はなく、概ね安定した数値を見せている。また、物価の上がり幅も1.3%で、良好な水準と評価されている。

④対外貿易の活発化。一帯一路を中心とする発展途上国との貿易が再び活発になっている。貨物全体の輸出入総額は前年同期比4.8%増だったが、一帯一路沿線国家との輸出入総額は前年同期比16.8%も増加した。

⑤科学技術への投資増加。ハイテク産業への投資は前年同期比16%増えている。カーボンニュートラル事業の推進に伴い、低炭素グリーン商品の開発が活発になっており、電気や水素自動車の増加率は22.5%、ソーラー電池生産量の増加率は53.2%に達した。

⑥市場の活気が増加。今年度に入り、ビジネス活動が活発になり、人材の流動性が増えている。物流の数も大きく増加し、景気回復の兆が見えている。

 ここ数年は、他国と同様、中国の経済もコロナの影響を受けている。水際対策や輸出入における制限の緩和により、国内消費・貿易や人材の流動が増えるのはある程度想定内のことであり、これをもって中国の経済が発展したと断言するのは、まだ性急であるが、中国経済が改善を迎えているのは事実である。また、富裕層が最も多く住む都市ランキングでの中国の躍進もこれからの経済成長を予告する良いサインかもしれない。続く第2~4四半期の国民経済運用状況も引き続きフォローしていきたい。


1. 全文:https://www.henleyglobal.com/publications/wealthiest-cities

2. 全文:http://www.gov.cn/lianbo/2023-04/18/content_5751960.htm