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【22-09】中外合同学校:質と効率を高めてこそ安定した長期的発展が可能

李詔宇(科技日報実習記者) 2022年09月15日

 教育部(省)はこのほど公告を発表し、今年も中国と海外の合同学校運営(中外合同学校運営)機関とプロジェクトの一部を引き続き支援し、海外に留学できなかった学生を対象にした学生募集を行って、新型コロナウイルス感染症の影響によって生まれた苦境を効果的に緩和する方針であることを明らかにした。

 一般的な大学教育と比べて、中外合同学校運営にはどのような優位性と問題点があるだろうか。新時代において中外合同学校運営事業の継続的な前進を推進するにはどうすればよいか。関連分野の専門家を取材した。

30数年が経過し、しっかりした基礎ができた合同学校運営

 中国国際文化発信センター北欧連絡部の賈慧蘭部長は取材に対して、「中外合同学校運営とは、海外の法人組織、個人、関連の国際機関が、中国の法人格を持った教育機関およびその他の社会機関とともに、中国国内で協力して中国国民を主な対象とした教育機関を開設し、教育活動を実施することを指す」と定義した。

 賈氏によれば、中外合同学校運営は管理体制によって3つのタイプに分けることができる。1つ目は、独立法人機関。昆山杜克大学(Duke Kunshan University)、西交利物浦大学(Xi'an Jiaotong-Liverpool University)、寧波諾丁漢大学(University of Nottingham Ningbo China)などがある。2つ目は独立法人機関ではない、大学に付属する教育機関(二級学院)。北京航空航天大学の中法工程師学院(Ecole Centrale de Pékin)、同済大学の中徳工程学院(Chinesisch-Deutsche Hochschule für Angewandte Wissenschaften)、南京大学の南赫学院(Nanjing-Helsinki Institute in Atmospheric and Earth System Sciences, Nanjing University)などがある。3つ目は単独の中外合同学校運営プロジェクトだという。

 中外合同学校運営事業はこれまでに30数年にわたる道のりを歩んできた。1986年には、改革開放を大きな背景として、中国が中外合同学校運営に関する初めての政策文書「共同運営プロジェクトによる学校建設の強化に関する意見」を発布した。この文書の発布は、当時の対外開放強化という全体の流れに順応したものであり、中外合同学校運営事業が正式なスタートを切ったことを示していた。

 21世紀に入ると、中外合同学校運営事業の前進の歩みはますますしっかりと安定したものになった。2003年、国務院は「中外合同学校運営条例」を発布。2016年に発布された「新時期の教育の対外開放業務の着実な実施に関する若干の意見」は、中外合同学校運営がすでに質と効率を高め、全体に寄与し、能力を増強する段階に入ったことを明確に指摘した。

 今年は「法人格を有する中外合同学校運営機関、中国大陸部と香港・澳門(マカオ)地区の合同学校運営機関の育成モデル改革テストを展開すること」が高水準の教育の対外開放を推進する重点として、教育部の2022年の業務の要点に組み込まれている。

基礎と実践を共に重視し、合同学校運営の特色を備える

 中外合同学校運営には、基礎を重視し、実践を強化するという特色がある。

 かつて西南地域にある大学の中外合同学校運営の専攻で学んだ朱さんは、「教室では、中国と西洋、2種類の異なる一方で互いに関連する専門的知識体系を学んだだけでなく、多くの実践活動に参加し、語学力も効果的に鍛えられた」と話した。

 朱さんの通っていた大学の中外合同学校運営プロジェクトの責任者は、「朱さんが学んだ専攻で中外合同学校運営方式を選択した理由は、主に優れた国際教育資源を導入する上、これらの資源を基礎にして、学生のために国際化プラットフォームを構築するためだった」と述べた。

 賈氏は、「中外合同学校運営を通じて、学生は留学する費用よりもかなり少ない学費を納めるだけで、疑似留学の国際的な教育を体験することができ、金銭面と時間面の負担を減らすことができる」と述べた。また「中外合同学校運営は学生の外国語を聞き・話す力を効果的に鍛えることができる。こうした鍛えによって、学生は社会に出て働くにしても、より上の学校に進学しても、一定の優位性を持てるようになる」と指摘した。

 それだけではなく、中国国内の大学にとって、中外合同学校運営に参加することには一定のメリットもある。賈氏は、「大学にとってみれば、中外合同学校運営を通じて大学がカリキュラム、教員、教材などを世界のスタンダードによりマッチするようになる。海外の大学と交流し、これに合わせた教員の研修活動を行うことを通じて、学校の教員の教育能力を高められるようになり、視野もさらに広げることができる。このほか、中外の大学が科学研究や学生の交換など具体的な面で多方面の協力を行うことも可能になる」と述べた。

各方面が手を取り合い、合同学校運営を次のステージへ

 メリットがあるのと同じように、中外合同学校運営は多くの問題と挑戦にも直面している。中には、中外合同学校運営機関・プロジェクトは合格点数が低いため、学生のレベルが低いと考える人や、国際化と開放ばかり強調して、学術的な能力の考課を重視しないため、教員の力が低下すると考える人もいる......こうした疑問の声を受け、教育当局と在外公館は大学と多方面で協力し、それぞれの長所を十分に生かして、中外合同学校運営が「さらに次のステージへ進むこと」を推進する必要がある。

 賈氏は、「教育主管当局は審査という関門をしっかり押さえて、海外の大学を選択する時には、その教育のレベルと学校運営のレベルを科学的かつ効果的に評価すべきだ。具体的な中外合同学校運営プロジェクトに対しては、中期の評価審査とプロジェクト終了時の評価など審査・評価を着実に行い、学校運営の質が低下しないようにする必要がある」と述べた。

 合同学校運営の形式について、刷新すべき点もある。賈氏は、「学部とそれ以上の学歴でのプロジェクトだけでなく、職業教育を行う学校が合同学校運営を展開するよう奨励し、中外合同学校運営のカバー範囲をさらに広げ、中国の職業教育の発展のために貢献すべきだ」との見方を示した。

 在外公館は中国の在外の重要機関として、中外合同学校運営をめぐるコミュニケーションで、「橋渡し役」を担うべきだ。賈氏は、「在外公館をよりどころとして、質の高い中外合同学校運営プラットフォームを構築し、海外大学の教育レベルの認定、公証・認証書類の審査などの面で中外合同学校運営プロジェクトをサポートする必要がある」と述べた。

 中外合同学校運営の当事者双方の間のコミュニケーションを強化し、双方の資源を十分に動員し、より科学的で効果的な育成プランを制定すべきだ。また実習のルートとプラットフォームの開拓を進め、中国内外の資源の優位性を十分に発揮させ、学生に視野をより広げることのできる実習体験を提供する必要がある。


※本稿は、科技日報「中外合作辦学:提質増効才能行穏致遠」(2022年8月18日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

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