第64号:レーザー技術
トップ  > 科学技術トピック>  第64号:レーザー技術 >  多波長レーザ照射によるフォトニック集積回路技術

多波長レーザ照射によるフォトニック集積回路技術

2012年1月12日

祝 寧華

祝 寧華 (Zhu Ninghua):中国科学院半導体研究所研究員

「百人計画」入選、国家傑出青年基金獲得。1959年12月生まれ。1989年、電子科技大学で博士号取得。1994年、中山大学教授。1994年~1995年、香港城市大学電子工程系研究員。1996年~1998年、ドイツ・シーメンス社研究開発部で客員科学者(フンボルト財団助成研究者);1998年、中国科学院半導体研究所でマイクロ波光電子部品を研究。2004年、新世紀百千万人材工程で国家級人材に選出。主に、マイクロ波光子学、フォトニック集積回路部品・システム研究に従事。光電子部品シミュレーション・試験分析・最適化設計・調製技術の新理論・新方法を発展。国際的先進レベルのマイクロ波光電子部品パッケージ及び試験分析プラットフォームを確立。APCC/OECC'1999プログラム委員会委員、分科会座長。Photonics Asia 2007・2010の分科会座長。蘭州大学電子科技大学で教授を兼任。合肥工業大学客員教授。Journal of Optical Communications, International Journal of Microwave Science and Technology,「科学通報」編集委員。現在、ブロードバンド光ファイバ伝送・通信ネットワーク技術に関する教育部重点実験室(電子科技大学)及びマイクロ波国家重点実験室(香港城市大学)学術委員会委員を担当。国家自然基金委員会専門家評価グループメンバー。発明特許67件。中国語専門書を2冊出版。英語専門書の2章を執筆。SCI論文97本(うち、筆頭執筆者46本)。国家基金委員会イノベーション・グループ事業、国家基金委員会重大事業、国家863専門テーマ事業等の、約30件の国家級研究事業を担当。

共著者:陳向飛、劉文、安俊明、劉宇、王欣、劉建国、徐坤、紀越峰

 フォトニック集積回路(photonic integrated circuits, PIC)は将来的に大容量、低消耗の光ネットワークを実現する上で必須となる技術であり、大規模フォトニック集積回路チップは今後、集積回路が担った責務と似た重責を担うことが予想される上に、平行光の多波長レーザ照射によるフォトニック集積回路チップは高速データ伝達の中核となりうるため、国内外で研究の関心事となっている。2004年から現在までに、米国、ヨーロッパ、日本でフォトニック集積回路技術に関する大型の研究プロジェクトが立ち上がっており、これには米国のIRIS、LASOR、ヨーロッパのEuroPIC、PLATON、HELIOS、アイルランドのPiFAS等がある。光伝達の領域においては、世界的なPIC技術の先駆者である米国のインフィネラ(Infinera)社がPICに基づくWDM伝達設備をいち早く発表しており、そのうえ1万台以上の商業実用を果たしている。その核心であるPICチップは50を超える分割機能部品によるモノリシック集積回路を実現している。

 多波長レーザ照射によるフォトニック集積回路チップの機能構造は図1に示すとおりである。集積チップは、多波長レーザアレイ、モジュレータアレイ、光の出力をモニタリングする光センサアレイ、出力バランス維持のための光増幅器(SOA)アレイ、WDM合波器(アレイ導波路回折格子(AWG)によく用いられる)の5つの部分に分けられる。各ユニットの部品技術はすでに成熟し商業化が実現しているとは言え、さまざまな機能構造を持つ光電子部品を単一チップ上に集積するのは依然として非常に難しい作業であり、多くの科学的・技術的問題に直面している。例えば、さまざまな機能のマイクロ・ナノ構造の調製プロセスの親和性の問題や、多波長レーザ照射とITU-T標準波長との照準及び安定化技術、チップ内部のマイクロ波と光波との相互作用により生じるレーザモデルによるクロストークの問題等がある。

図1

図1 多波長レーザ照射によるフォトニック集積回路チップの機能構造図

 多波長レーザ照射によるフォトニック集積回路チップ中の光センサアレイ、光増幅器(SOA)、合波器(AWG)は相対的に成熟しているため本稿では詳述しない。しかし、多波長レーザアレイとシングルチャネルレーザには大きな違いがあり、解決すべき重要な問題が多数存在する。例えば、100ギガヘルツの波長間隔を実現する場合、回折格子周期の改変量はわずか0.12ナノメートルとなり、このような過酷な製造技術要求には、既存のホログラフィー露出技術を採用してもレーザ照射波長の精密な制御は実現しようがない。高精度の電子ビーム・リソグラフィー技術(E-Beam lithography)を利用すれば、0.1ナノメートル・オーダーの精度で回折格子の調製を実現しうるとしても、この技術には描画周期が長く、コストが非常に高く、歩留まりが低く、再現性に劣る等の欠点があるため、実験室でよく用いられる加工方法ではあるが、大規模・低コストでの商業生産には向かない。最初に商業用PICチップを発表したInfinera社は選択領域成長法(SAG)を利用し、厚さや材料成分等、各レーザの活性層の構造パラメータを制御することで多波長レーザアレイの実現に成功し、さらに微小電気抵抗を利用してレーザの温度を加熱・調節し、多波長レーザアレイ波長の精密な照準を実現した。しかし、この方法はコストが高く、低コスト・大量ロットのフォトニック集積回路チップの生産という将来的な需要を満たすことはできない。

 このため、多波長レーザ照射によるフォトニック集積回路チップの核心技術の問題を根本的に解決するには、製造技術条件の改善に頼るだけでなく、革新的な設計プランを立てて初めて、一般の加工技術で低コストのフォトニック集積回路チップの大量生産技術を実現できる。フォトニック集積回路チップの設計及び製造で直面する重要な技術的問題について、本稿では多波長レーザアレイ技術、モノリシック集積回路技術、チップのモジュール化結合パッケージ技術の3つの領域から詳しく述べる。

1 多波長レーザアレイ技術

 半導体レーザチップの基本構造は、ゲイン領域とこれに対応する光学的な共振空洞により構成されるため、分布帰還型(DFB)半導体レーザチップは主に2つの要素により決まる。一つ目はレーザチップの材料特性であり、二つ目はレーザの回折格子構造である。多波長レーザアレイについては、多波長の発生メカニズムと単一モードの高い良品率という2つの重要な問題を解決する必要がある。いずれも回折格子構造と構造上、密切な関係がある。しかし、レーザアレイの高性能かつ低コスト・大規模生産の要求を同時に満たすには、国際的に公認されたもう一つの良い解決方法がある。このような重要な難題を解決するには、新たな考え方、つまり新しい集積製造技術または新型の機能性マイクロ構造を採用する必要がある。

 再構成等価チャープ法(REC)に基づくフォトリソグラフィ技術:再構成等価チャープ法(Reconstruction-equivalent-chirp, REC)技術は、現行の成熟した集積製造技術条件下で新たな機能性マイクロ構造を実現し、多波長の発生メカニズムと単一モードの高い良品率という2つの重要な問題を解決すると同時に、低コストかつ大規模生産を実現でき、多波長レーザアレイに全く新しい解決プランを提供した。REC技術は、ファイバブラッググレーティングの新型構造を研究する中で提案されたものであり、REC技術の中核的思想は、もともとナノオーダーという小さなサイズ構造の回折格子により実現した優れた性能をマイクロオーダーという大きなサイズ構造上に「拡大」してサンプル採取を実現するものである。一般的に、マイクロ構造の機能スケールは1.5マイクロメートル以上で、既存の方法を採用した際に必要となる130ナノメートル(すなわち、レーザDFB回折格子周期の半分)以下というマイクロ・ナノ構造よりはるかに大きい。この技術を利用すれば、一般のシングルDFBレーザを製造する技術プラットフォーム上で高性能かつ低コストなDFBレーザアレイを製造することができ、その製造プロセスは一般の均一回折格子によるDFB半導体レーザと基本的に相似する。唯一の違いは、ホログラフィー露出により生じる均一回折格子を基礎に、一般の2次露出技術を利用してサンプルパターンを形成する点にある。レーザ照射波長はサンプルの構造により決まるため、設計の異なるサンプル構造により、2次露出プロセスで異なる照射波長のレーザを実現することができる。ホログラフィー露出であるか、あるいは一般の2次フォトリソグラフィであるかを問わず、いずれも非常に成熟した生産技術であるため、一般の技術プラットフォームで多波長DFB半導体レーザアレイの大量生産が実現できる。REC技術に基づき、2009年にモノリシック集積回路による連続30波長の半導体レーザアレイに成功した。これを基礎に、REC技術に基づく複雑な構造のレーザの実験も大きな進展を見せ、衝突パルスモード同期(CPM)レーザ及びマルチフェーズシフトレーザに成功した。これらの構造はレーザのホールバーニング効果を効果的に抑制でき、高電流下でも良好なシングルモード状態を維持することができるため、レーザの制御特性向上に顕著な改善効果がある。PICチップにとって、レーザアレイの波長間隔は重要な問題であり、PICチップは高密度波長分割多重(高密度波長分割多重(DWDM))システムにおける応用が非常に重要である。一般的に、加工技術及び材料成長の均一性の問題により、波長間隔の制御には顕著な誤差があるが、高精度の電子ビーム露出技術により創出されたレーザを用いれば、チャネル間隔のランダム誤差は+/-1ナノメートル前後に抑えられ、最大で2ナノメートル以上に達する。しかし、現行の実験によれば、RECに基づくレーザアレイにより制御される波長のレベルは電子ビームのレベルに達しうるため、技術レベルを引き上げ、さらに優れたデザインをテンプレートとして採用すれば、より良好な実験結果が得られるものと予想する。先行研究によれば、高精度の電子ビーム露出技術を採用したとしても、良好な製造技術と結び付ければ、波長制御の最小偏差も+/-1ナノメートル前後となり、粗密度波長分割多重(CDWM)の要求を満たすことができるが、高密度波長分割多重(DWDM)の波長間隔要求を満たすことはできない。現在、Infinera社は局部的温度制御によりレーザ波長を調節し、高密度波長分割多重(DWDM)の波長間隔要求を満たす方法を解決法に採用している。このため、REC技術に基づき作りだしたレーザアレイの性能は既存の電子ビーム技術を採用した場合に相当することから、REC技術はPICチップの開発及び大規模・低コストのレーザアレイの開発に確固たる基礎を築いたことが証明された。

 ナノインプリントリソグラフィ技術:ナノインプリントリソグラフィ(Nanoimprint Lithography, NIL)技術は全く新しいナノパターン複製技術で、解像度が高く、低コストという特徴がある。NILの原理は、目標パターンを刻んだマスク板を対応する基板(一般的に非常に薄いポリマー膜)上にインプリントしてパターン転写を実現し、その後に熱または紫外線光照射による方法で転写パターンを固化することで、マイクロ・ナノ加工によるフォトリソグラフィの手順を完了させる。ナノインプリントリソグラフィは、インプリントによりフォトリソグラフィ樹脂を変形するものであり、露出によりフォトリソグラフィ樹脂の化学構造を改変するものではないことから、解像度は光の回折や散乱、フォトリソグラフィ樹脂内部への光の干渉、基板に対する反射等の要素に制限されず、既存のフォトリソグラフィ技術の解像度限界を突破できる。また、ナノインプリントリソグラフィは複雑なレンズや露出光源を必要としないため、大量生産や再現性に優れ、ナノパターン構造を広い面積上で非常に均一に調製できる。このため、この技術には低いコストと高い生産効率という長所があり、大規模生産に非常に向いている。ナノインプリント技術を利用し、多波長レーザ照射によるフォトニック集積回路チップを調整する際の核心は、高品質なインプリント・テンプレートの調製にある。WDM技術要求に適合するDFBレーザの波長間隔はわずか0.8ナノメートル(100ギガヘルツ)で、Cバンドに対応する回折格子の周期は約246ナノメートルであり、2つの隣り合った波長間の回折格子の周期差はわずか0.12ナノメートルであるが、一般の電子ビームフォトリソグラフィ(EBL)では8ナノメートルの最小精度しか保証できない。われわれは、テンプレート製作段階に「ゲイン関数」を採用する方法で困難を克服し、品質を向上させた。すなわち、1つの波長の回折格子のサイズを割り当てた後に比例係数を設定し、その後の回折格子は順次、1つ前の回折格子にこの比例係数を加えて行った。このほか、われわれは二次プレート技術をも進化させた。この技術ではまずEBLを採用して10ミリメートル×10ミリメートルの小さな石英製のプレートに直写したのち、これをテンプレートにstep-flashの方法で多数回のインプリントを行い、多数のパターンを3インチのシリコン片上に転写したところ、実験結果は2インチのリン化インジウム(InP)片全体の外延上に回折格子が非常に均一に分布し、インプリントによる欠陥はほとんどないことを示した。開発されたレーザアレイの波長範囲は1540ナノメートルから1560ナノメートルに変化し、1.6ナノメートル(200ギガヘルツ)ごとに1つのレーザエミッタを選択してその出力スペクトルを測定する。インプリントされたレーザ波長がCバンドに分布している場合、TEC温度制御後にITU-T基準G.692の高密度波長分割多重(DWDM)レーザに対する要求を満たすことができる。測定されたSMSRは40dBを上回り、20dBバンド幅は0.2ナノメートルを下回った。この結果、ナノインプリント技術により制作されたDFBのレーザ性能はEBLで制作された高性能レーザに遜色せず、高密度波長分割多重(DWDM)システムの要求を満たし、かつ、低コスト・高生産効率という長所があることが分かった。200ギガヘルツ間隔及びTEC技術を選択して波長を精密に制御することに関してはITUT標準に基づき、100ギガヘルツ間隔の高密度波長分割多重(DWDM)システムについては波長の制御制度は12.5ギガヘルツ以内であり、対応する回折格子の制御精度は+/-0.1ナノメートルであることが一般に要求される。電子ビーム露出技術またはナノインプリント技術のいずれを採用しても、現時点では上記のような初期波長精度を実現する方法はなく、実現できたとしてもその意義は小さい。なぜなら、さらに広い作業温度範囲の要求が存在するからである。しかし、初期波長を+/-100ギガヘルツ範囲に制御することも必要とされている。これは、TECの採用により波長を精密に制御できるとは言え、その調節可能範囲には限りがあるため、TECによるチップの温度加熱が高過ぎると、DFBレーザは高温下で作業することになり、作業寿命は大幅に短くなるからである。われわれは、現在世界で販売されている同種製品の指標と設計を参考に、ナノインプリント製版の要求を200ギガヘルツ間隔にひとまず設定したところ、比較的良好な結果が得られた。今後、われわれの製造技術がさらに成熟すれば、初期波長を+/-50ギガヘルツ範囲内に制御できる可能性は間違いなく存在するだろう。

2 モノリシック集積回路の製造技術

 フォトニック集積回路(PIC)において、再現可能で高品質なアクティブ光-パッシブ光衝合変換は欠くことのできない技術であり、アクティブ導波管材料のバンドギャップエネルギーは光子伝達エネルギーを下回るか、あるいは近づくかする必要があり、パッシブ導波管材料のバンドギャップエネルギーは光子伝達エネルギーをはるかに上回り、パッシブ導波管の小ない吸收消耗を保証する必要がある。複雑なInPフォトニック集積回路(PIC)においては多くの波長や信号の発信・受信を処理しなければならない。発信モジュールは多数の波長信号を1本の光ファイバ上で多重結合させて伝達させる必要がある一方で、受信モジュールは多数の波長信号の多重化を解消した後に電気処理をする必要があるため、InP-AWG波長合分波器はInPフォトニック集積回路(PIC)で欠くことのできないパッシブ部品であるとともに、以下の技術を解決する必要がある。

 アクティブ-パッシブ多機能性マイクロ構造衝合結合技術:バンドギャップ及び垂直・水平構造の異なる2つの材料を同一のInP基板上に集積して効率の高い結合を実現する上でよく用いられる方法はアクティブ-パッシブ衝合接手(Butt-joint)である。Butt-joint法の長所は、アクティブ及びパッシブ導波管の成分とサイズを独立的に選択することができ、結合效率が理論上、100%に近づく点にある。実験結果として報告されているButt-jointの最大結合效率は90%を超える。また、いくつかの垂直回折格子結合技術が存在するが、製造技術がシンプルで許容誤差が比較的良好な点から、Butt-jointのほうがより使用に適し、魅力がある。

 多波長・低消耗合波技術(InP-AWG): InP-AWG導波管と関係せず、小さな湾曲半径であることを保証するために、一般に深エッチ型のInGaAsP/InP導波管構造が採用される。調製工程ではInPバッファ層、InGaAsPコア層、InPクラッディング層が順に調製されたのちに、誘導結合プラズマ(ICP)でエッチングして深エッチ型導波管が形成される。導波管の幅はInGaAsPバンドギャップ及び偏光特性により決定され、小さなバンドギャップは偏光と無関係の時の導波管幅がやや広いことを許容する。フォトリソグラフィ技術の許容誤差はやや大きく、非ドープ又は半絶縁InPクラッディング層を成長させ材料の吸収損傷を減らし、深エッチ型導波管を採用して調製したInP-AWG湾曲半径はわずか250マイクロメートルで、InP-AWGのサイズの低減に有利である。世界的には、40チャネルInP-AWGとEML40個等、241コンポーネントの集積に成功している。われわれは、10チャネル、200ギガヘルツ InP-AWGにすでに成功しており、サイズはわずか4´4平方ミリメートル、中心チャネルの挿入損傷は約16dBで、クロストークは-17dBを下回った。

3 試験分析与モジュラーパッケージ技術

 光電子部品は内部に光信号と電気信号が同時に存在し、マイクロ波と光波が交互にエネルギーを交換する有機的統一体である。このため、レーザ集積チップの試験分析及び結合パッケージでは、チップ材料、電極構造、電気回路パッケージ及び結合構造を一つの統一体と見なして総合的に考慮する必要がある。

 マルチチャネル・レーザ試験分析: 大規模な集積条件の下では、レーザアレイ内部にはさまざまなモデルの結合とクロストークが生じ、多波長平行信号も四光波混合等、これにより生じる非線形性の影響を受ける。このため、チップの内部特性はシステム全体の動態範囲、レスポンス、ビット誤り率等の性能パラメータにより影響を受ける。レーザのこのような動態特性パラメータを抽出し、部品内部の光波伝達、エネルギー変換の分析モデルを構築するために、マルチチャネル・レーザ試験分析の実施を基礎に、われわれは2つの抽出方法を提案する。一つ目は、調整後のレーザビームを被試験レーザに注入し、分析により固有応答を得る方法である。二つ目は、レーザと同等の電気回路モデルで寄生パラメータを差し引き、固有応答を直接得る方法である。レーザアレイと分割レーザの最大の違いはレーザ間の非常に複雑なマイクロ波、光波と相互結合にある。マルチポート試験分析方法と一体化分析モデルを利用し、時間領域反射率測定法(TDR)と結び付けて信号の完全性を分析することは、アレイ集積チップ内部のモデル結合クロストークや交差調整等の特性とその影響を明らかにする上で有効な試験手段を提供するものである。

 低反射光結合:光結合システムで生じる光の反射はレーザ出力波長の安定性に影響し、かつ、マイクロ波の付加調整を発生する。このため、光結合効率を向上させるとともに、外部光の反射を極力抑える必要がある。現時点では、レンズと光ファイバマイクロレンズの組み合わせが最も広く応用されている。前者には大きなオフセットの許容誤差があるため光学的照準がより容易であり、2つのレンズの間に光アイソレータを同時に加えれば光の反射を抑えられる。後者は光ファイバ端面に平面またはレンズを加工するもので、構造がコンパクトで製造技術が比較的シンプルで、コストが低い等の長所がある。われわれは傾斜度7度の光導波管の出力構造を選択し、被膜レンズ、アイソレータ及びテーパー型の光ファイバを組みあわせて、高効率かつ低反射な光結合技術を進化させた。

 モジュラーパッケージ:集積光送信モジュールの高い周波数特性はレーザ又はモジュレータチップの固有応答だけでなく、チップ電極とモジュラーパッケージの寄生パラメータの影響も受ける。電気吸收モジュレータは一般的にP、N共面電極を採用し、良好な熱伝導性能を持つ窒化アルミニウム(AlN)材料キャリア上でこれと対応する電極ランドを調製し、倒置溶接または金属の熱ボンディング技術により多数の金ワイヤの使用を避け、調製した信号の低損傷伝送を実現する。パッケージ寄生パラメータは主に電気連結用金ワイヤから引き込まれたインダクタンスと電極ランドにもたらされた電気容量による。われわれはこれに最適化設計を行い、チップ寄生パラメータによる補償を実現した。

4 まとめ

 本稿では多波長レーザ照射によるフォトニック集積回路チップ技術について概観し、多波長レーザ照射及びアクティブ-パッシブ多機能構造モノリシック集積回路等の、中国が独自に知的所有権を持つ核心技術を簡潔に紹介した。例えば、再生等価チャープ技術及びナノインプリント二次テンプレート技術を採用し、革新的な設計によりフォトニック集積回路チップの調製プロセスにおける厳しい要求を大幅に緩和するには、ホログラフィー露出等半導体レーザの汎用調製技術を利用すれば、多波長レーザアレイチップを調製することができ、チップ製造のコストを低減し、将来の大規模産業化に力強い技術的バックアップを提供することができる。ポート衝合結合技術によりアクティブ-パッシブ導波管のモノリシック集積回路の問題は解決され、マルチポート分析モデルが確立された。多波長レーザ照射によるフォトニック集積回路チップの動態特性試験分析と実験の検証により、チップ材料の成長、部品の調製、結合パッケージの最適化設計及びシステム機能の検証が実現した。これら核心技術はなお、発展及び改善プロセスにあるとは言え、これら技術にはそれら独自の技術的優位性と応用価値があることはすでに証明されている。これら技術の相互バックアップと結合により、必ずや短期間内にフルセットの高速フォトニック集積回路チップの大量生産技術が構築され、多波長レーザ照射チップを代表とする中国のフォトニック集積回路チップ技術の研究と応用に確固たる基盤が築かれるだろう。