第155号
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中国の自動運転、交通管理政策の地ならしが不可欠に

2019年8月19日 張曄(科技日報記者)

政策決定の視野

 このほど開かれた第19回COTA国際交通科学技術年次総会にて、江蘇省交通運輸庁の金凌副庁長は「人件費と管理コストの増加、ドライバーの不足、安全問題が目立つなどは旅客・貨物輸送が直面している大問題であり、これらにおいて、信頼性への要求が非常に高くなっている。高信頼性自動運転貨物輸送システムと旅客輸送システムは技術を極め、安全・燃費性能を最適にしている。自動運転の発展の切り口になる。中国の自動運転は模索の段階であり、技術的にもコスト的にも改善の余地がある。未来の発展は政策環境、法的基準、技術発展、インフラ整備など各方面のサポートを必要とする」と述べた。

自動運転、業界内の人気者に

 低下する通行効率、多発する交通事故は今世紀、人々の最も大きな悩みの種になっている。運転と混雑からの解放は、人々の新たな需要になっている。統計データによると、中国の交通事故の9割以上が運転中の不注意によるものだが、自動運転は交通事故の発生率を効果的に引き下げることができる。

 自動車が電子化の時代に徐々に進むにつれ、AI(人工知能)、特にディープラーニング技術が徐々に成熟している。アルゴリズムは物体の属性を認識し始め、人に準じる合理的な判断を下すようになっている。自動運転が徐々に実現に向かい、技術発展がかなりの勢いで進んでいる。それによって生まれる無限のビジネスが、業界から注目を集めている。

 金氏は「自動運転はテクノロジー大手の人気者になっている。2009年からの10年にわたり、グーグル、百度、テスラ、Uber、アップル、アリババなどのテクノロジー企業が自動運転に進出し、しかも巨額の投資を行っている。これは産業の高い将来性を目にしているからだ。中国内で自動運転関連分野に進出する企業も徐々に増えている。地域別に見ると、北京市、広東省、上海市は自動運転企業が最も集中している地域で、72%近くを占めている。江蘇省の関連企業も急増中で、研究開発能力も強化されている。企業の割合は現在すでに6%に達しており、成長を続けている」と述べた。

 しかし業界関係者は「現在の中国の道路状況は複雑で、自動車製造、インターネット通信のスタートも遅れた。いかに政策と法規により自動運転の発展を推進し、早期の実用化を行い、自動運転を私たちの生活に溶け込ませるかは、現在考えるべき問題だ」と指摘した。

政策と法規のサポートが不足、産業発展に遅れも

「自動運転のスムーズな普及を妨げる要素には、技術の成熟度、コスト、政策・法規がある。現在は政策・法規が最大の障害になっている」。金氏は中国内外の自動運転の政策環境について言及した際に、このように自身の見方を示した。

 筆者の調べによると、中国国外の自動運転政策の多くが公共安全分野と関連している。これには情報安全問題と交通安全法の2種類が含まれている。国連が発表した文書を見ると、自動車基準調和世界フォーラムは2016年11月に自動車自動運転安全基準を議決した。同基準は主に、ハッカーから攻撃を受けた場合のドライバーへの警告、及び制御不能の対策措置などが含まれる。米国、英国、日本なども関連法規を発表した。米国の「連邦自動運転車政策」は、初の自動運転関連の法規だ。

 中国でも近年、いくつかの政策が打ち出されている。これらの政策は交通管理面ではなく、産業政策に焦点を絞っている。また政策レベルの権威ある組織がまだできていない。

 金氏は「自動運転は現在、工業製品の中間試験段階にある。政策は路上テストをサポートするものであり、自動運転のビジネス条件や交通管理のために制定されるわけではない」とした。

 喜ばしいことに、中国では現在、北京市、上海市、江蘇省、広州市、深セン市、重慶市などの各地が自動運転(スマートコネクテッド)の条例制定を検討中だ。江蘇省経済・情報化委員会(現在の工業・情報化庁)、省公安庁、省交通庁は2018年9月に共同で「江蘇省スマートコネクテッドカー路上テスト管理細則(試行)」を通達した。路上テスト環境を最適化し、道路交通安全を保障し、産業の発展を推進した。2018年11月には全国初の営業トラック自動運転路上テストナンバープレートが蘇州で公開された。

旅客輸送・物流、大規模応用を先に実現

 金氏は「中国の最大の優位性は、国外の分散した市場と異なり、各省の統一市場を構築できることで、EUよりもさらに大規模になる」と述べた。

 金氏は「中国の自動運転実用化政策の制定は、次の6つの原則を守らなければならない。1つ目は安全第一の原則。2つ目は柔軟で技術的に中立の原則。3つ目は性能を評価基準とすること。4つ目は法規統一の原則。5つ目は交通運輸システムとの融合。6つ目は従来の自動車との道路環境の共有だ」と指摘した。

 金氏は自動運転が最も早く大規模応用される分野は、旅客輸送・物流産業としている。信頼性の高い自動運転貨物輸送システムと旅客輸送システムは技術を極め、安全・燃費性能を最適にすることが、自動運転の発展の切り口になる。

 金氏は「自動運転発展ルートに基づき、商用化政策の制定を誘導し、政策の制定を通じ自動運転のより良い発展を推進すべきだ」として次のように提案した。

(一)応用からの需要で政策・法規の制定を促す。まず限定的なシーンのクローズド、もしくは半クローズドのエリアで応用する(自動駐車、閉鎖的なエリア内での物流輸送)。次に幹線物流、末端配送、固定ルートの清掃、バス通勤、レンタカー、オンライン配車、シェアリングなどの分野での応用。

(二)役割に基づく政策・法規の制定を促す。管理機関、自動車メーカー、テクノロジー企業、生産企業、業務用アプリ企業など異なる役割に基づく関連政策・基準を制定し、業界内の人員の行為を規範化・統一させる。

(三)発展ルートで政策・法規の制定を促す。技術発展ルート、業界発展ルートに基づき関連政策・法規を制定する。自動運転がより良く、安全・スムーズで快適な交通環境を提供できるよう誘導する。


※本稿は、科技日報「我国自動駕駛還需更多交通管理政策開路」(2019年7月31日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。