バイオ医薬品の"優等生"が続出 新郷ハイテクパークの取り組み
2021年10月20日 喬 地(科技日報記者)
世界で最初に発売されたH1N1型インフルエンザ(A型)ワクチンは華蘭生物疫苗股份有限公司で誕生した。画像は同社のワクチン全自動充填ライン。撮影・蘇東明、喬地
110億元―
河南省の新郷ハイテクパーク・バイオ医薬品イノベーション型産業クラスター内にある万華生命科学産業パークは、計画敷地面積約192ヘクタール、投資総額110億元で、生産、生活、生態の融合に立脚した「河南省の特色あるモデルパーク」に位置付けられて構築される。
華蘭生物工程股份有限公司(以下「華蘭生物」)、河南師範大学などの組織が請け負っている「新型コロナウイルスワクチンの研究・開発」、「新型コロナウイルスの治療薬のスクリーニング」などのプロジェクトがこのほど、河南省科学技術庁の新型コロナウイルス感染症対策科学研究開発特定プロジェクト第3陣に指定された。
新郷ハイテクパーク管理委員会の史玉華副会長は、「当パークのバイオ医薬品イノベーション型産業クラスターイノベーションの先行企業、新郷市の大学が研究開発面での優位性を十分に発揮し、新型コロナウイルス感染症対策の科学研究に積極的に参加したことによる目に見える成果であり、企業のイノベーションの実力が認められたことの証だ。当パークは今後、政策による牽引とサービスのリソースをさらに踏み込んで強化し、プロジェクトを請け負う機関が技術成果の応用・実用化を加速させるよう推進し、新型コロナウイルス対策の最前線で1日も早く応用されるよう取り組む」と語った。
企業数は少ないが全企業が各業界の優等生
8月下旬のある日、新郷ハイテクパーク・バイオ医薬品イノベーション型産業クラスターに足を運ぶと、華蘭生物がバイオセーフティーレベル3の実験室(P3実験室)や省級バイオ高分子薬品技術イノベーションセンターを全力で建設していた。同社の責任者は、「それにより、当社の産業構造の継続的な最適化が推進され、地域のバイオ医薬品産業の特色化、クラスター化発展が牽引される」と期待を込める。
同クラスター内のイノベーション先行企業である華蘭生物疫苗股份有限公司(以下「華蘭疫苗」)と、広州恩宝生物医薬科技有限公司が共同開発した新型コロナウイルスワクチン(アデノウイルスベクター5型)が今年7月23日、国家薬品監督管理局が発行した臨床試験認可通知書を取得し、要求に基づいて、臨床試験が実施されており、同ワクチンの大量生産に向け準備を進めている。
新郷ハイテクパーク・バイオ医薬品イノベーション型産業クラスターに足を運ぶと、一定規模以上の工業企業(年売上高2,000万元以上の企業)のバイオ医薬品の新企業は14社しかないものの、どの企業も業界の優れた企業やリーディングカンパニーで、バイオ医薬品、化学薬品、中医薬の製造、医薬品の物流、総合保健サービスといった産業基礎が形成されつつあることが分かった。
華蘭生物は、中国国内初の血液製剤の適正製造基準(GMP)認証を取得した企業であり、アジアにおいて血液の利用率が最も高い企業でもある。同社が生産するアルブミンなどの主な血液製剤の認可・生産量は業界の上位に立っている。血液凝固因子・第VIII因子、プロトロンビン複合体濃縮製剤、人免疫グロブリン、抗破傷風人免疫グロブリン、B型肝炎人免疫グロブリンの認可・生産量は中国国内の同業界でトップに立っている。狂犬病人免疫グロブリンの認可・生産量は中国国内の同業界で2位に立っている。「華蘭」の商標は、国家工商行政管理総局商標局によって、「中国馳名商標」に認定されている。世界初のH1N1型インフルエンザ(A型)ワクチンは、「華蘭疫苗」で誕生した。
新郷拓新薬業股份有限公司は、アジア最大のヌクレオシドシリーズ製品の生産拠点で、独自開発し、生産しているヌクレオシドシリーズの医薬中間体は主に、抗がん剤、抗エイズ薬の製造に使われている。そして、製品は欧州や米国、アジアなどの20カ国以上に輸出されている。中国国内市場のシェアは55%、国際市場のシェアは25%に達している。同企業は今年4月2日に、深圳証券取引所の新興企業向け市場「創業板」への上場が認可された。
佐今明製薬股份有限公司には、中国のGMP認証を取得している生産拠点が2カ所あり、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、シロップ剤、口服液剤、散剤などの8大剤形、110種類の薬品、健康食品を生産する能力を有している。そして、「佐今明」や「佐児」などの商標は河南省の「著名商標」に認可されている。
河南省華隆生物技術有限公司が中国国内外の有名大学、科学研究機関と共同で幹細胞・バイオ治療国・地域連合プロジェクト実験室や河南省人類遺伝幹細胞リソースバンクなどの国家級科学研究・産業実用化プラットフォームを建設した。また、数年連続で、河南省国際協力重点プロジェクト、重要テクノロジープロジェクト、医学テクノロジー研究計画などの課題プロジェクトの研究開発の先頭に立ってきた。
パーク内のバイオ医薬品企業には現在、国家級技術産業化モデルパークプロジェクト2プロジェクト、ポストドクターワークステーション2カ所、国・地域連合プロジェクト実験室3カ所がある。
政産学研用が連携して企業イノベーションにサポートを提供
河南省の新郷ハイテクパーク・バイオ医薬品イノベーション型産業クラスター内にある万華生命科学産業パークは、計画敷地面積約192ヘクタール、投資総額110億元(約1,870億円)で、生産、生活、生態の融合に立脚した「河南省の特色あるモデルパーク」に位置付けられて構築される。建設中のバイオ医薬品産業ジェネリックキーテクノロジーイノベーション・実用化プラットフォームは、河南省が計画し、河南省、新郷市、新郷ハイテクパークが共同で建設している。市場化された運営スタイルが採用され、医薬品の研究開発、パイロット生産、オーダーメイド生産などのサービスを担い、中小企業にテクノロジーサービス、ジェネリックキーテクノロジーのブレイクスルー、研究開発成果の実用化、重要研究開発設備・イノベーションリソースの共有などを提供する計画だ。プラットフォームの固定資産投資は5億元(約85億円)で、今年末には運営が始まる計画だ。現在、建築面積3万平方メートルのCMOモデル産業パークの運営が既に始まっている。
産業チェーンの拡大、補充、強化、投資誘致などを通して、華大基因や健康中原研究院、知微生物といったバイオ医薬品の分野で優位性を誇る企業、科学研究成果、プラットフォームが近年、新郷ハイテクパークに進出するようになっている。
深圳華大生命科学研究院が設立を担当した新郷市華大中原精準医学・健康研究院は、ゲノムシーケンシングやオーミクスといった新技術を活用して、低コスト、ハイスループット、早期検査、早期治療という原則に基づき、河南省の省民の健康に影響する罹患率の高い10大がん、心臓・脳血管疾患、先天異常、重大伝染病などの、全省民対象の対策について、全体的な計画を策定し、技術的サポートを提供している。
健康中原研究院は、新郷医学院の呉衛東博士、李盼博士、王天雲博士が率いるチームを中心に、主に環境汚染とその健康への影響測定や介入式ガバナンス関連の製品研究などを展開している。また、個人ユーザーには、オーダーメイド型の健康データモニタリング、心臓・脳血管疾患リスク予測、治療法の最適化、術後のリハビリの整ったソフト・ハードウェアソリューションを提供している。このほか、バイオ製薬企業にサービスを提供する効果的な組換えDNA発現システムの研究開発を行っている。
新郷医学院の林俊堂教授率いるチームが主導する中源幹細胞研究院は現在、MenSCs幹細胞バンクの設立を行っている。河南栄養強化・合成生物学イノベーション研究院は、中国農業科学院生物所の研究開発チームの技術的優位性を活用し、ゲノム編集、遺伝子工学などの新製品を開発した。新郷市微生態産業技術研究院は、プロバイオティクスの開発を主な方向性とし、現在、新郷市センター病院と連携して、腸内細菌の炎症性腸疾患治療における臨床研究、応用を展開している。また、上海交通大学薬学院と提携して人材育成や技術開発、成果実用化などの面で、大学と企業の新たな協力スタイルを模索している。それら研究開発機関はテクノロジー開発・応用、技術ストック、インキュベーションを行うほか、企業にイノベーション発展のための技術的サポートを提供している。
金融のサポート―不断のテクノロジーの模索
史副会長は、「金融は常にイノベーション・起業、成果実用化のウィークポイントだった」とし、解決するための取り組みについて、「2年前、鄭洛新国家自主イノベーションモデルエリア(新郷)テクノロジー金融センターが発足した。新郷高新投資発展有限公司と杭州万華控股集団が共同出資して建設され、運営されている。現在建設中の総建築面積3万平方メートルの同センターは、新郷万華高科金融パークの中核プロジェクトで、今年末には全体の引き渡しが終わり、運営が始まる予定」と説明する。
さらに、クラスターは中鼎科技成果転化基金などの基金を通して、バイオ医薬品プラットフォームの先端技術の開発や研究成果の実用化、イノベーション成果の派生、イノベーションプロジェクトなどを重点的に支援している。
北航新郷ハイテクパークは、イノベーションサービスセンターと協同し、バイオ医薬品や医工連携、ビッグデータ、新材料をめぐる「人材+テクノロジー+資本+産業」という良好なエコシステムの構築に取り組んでいる。
新郷市人民政府弁公室は今年2月、バイオ医薬品産業共通のキーテクノロジーイノベーション・実用化プラットフォーム建設案を通達した。プラットフォームでは、「メインプラットフォーム+バイオ医薬品産業連盟」という枠組みが実行され、「研究院+基金」サービスのスタイルが採用される。新郷ハイテクパークのバイオ技術薬品、化学イノベーション薬品、現代中医薬という優位性を誇る3大分野に立脚し、2023年をめどに、バイオ医薬品産業のメイン事業の売上100億元以上を目指す。また、バイオ・新医薬のメイン事業の売上げが5--10億元以上の企業2社、10--50億元の企業2社以上、新規メインボード上場企業2社を育成するのが目標だ。
新郷ハイテクパークは現在、「政府+市場」、「専業+副業」のスタイルを採用して、新郷市バイオ医薬品産業技術研究院を設立しているところだ。政府職員が、名誉院長(最高サステナビリティ責任者)を担当し、定数枠、ポスト、報酬の給付方法などをうまく調整してこれまでの部門に所属する形を取る。市場化招聘専業職員が院長および研究院の機能部門のサービス職員を担当する。市場化招聘専業職員は主に、専門家諮問委員会の専門家、技術部流動サービススタッフが担当し、専門家費用、プロジェクト性能管理、長期給与などの形式で報酬が支給される。そして、重点企業と連携する投資誘致の専門家をサポートし、専業職員や副業職員を臨機応変に配備する。
※本稿は、科技日報「生物医薬"優等生"扎堆 新郷高新区做対了甚麼」(2021年9月7日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。