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BMIの発展における中国の実力はどれほどなのか?

2024年03月19日

 イーロン・マスク氏が設立したニューラリンク社と中国の研究チームが、ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)のテストで新たなブレークスルーを実現したことを相次いで発表し、BMI技術がSFの世界から現実に向かっていることが明らかになった。

 2023年10月24日、清華大学医学院の研究チームと首都医科大学宣武医院が世界で初めてワイヤレス低侵襲埋め込み型BMIのニューラル・エレクトロニック・オポチュニティ(NEO)テストに成功した。交通事故で頸椎の脊髄が損傷し、四肢麻痺の状態が14年間続いている患者は、自宅でBMIを利用したリハビリを3カ月間続けたことで、脳波によって空気圧手袋を動かして、自分で水を飲むなど脳の制御機能を実現した。

 今年1月30日には、ニューラリンク社のBMIデバイスを埋め込んだ最初の患者が大脳によってパソコンのマウスを直接コントロールできるようになったと、マスク氏が明らかにした。

 これら2つのケースの技術レベルについて、中国信息通信研究院クラウドコンピューティング・ビッグデータ研究所の閔棟副所長は「医療機器の進展という点では、2つのデバイスはどちらも同じく小規模な臨床試験の段階に入っている」と説明した。

 ただ、これらのテクノロジー・ロードマップは異なっている。閔氏によると、マスク氏の会社が採用したのは侵襲型で、電極を大脳皮質内に刺入し、個々の細胞の放電をキャッチするもので、より多くの回路を必要とし、脳活動のデコードによってさらに精度の高いコントロールを実現できる。しかし、長期にわたり電極が刺入された脳細胞は、グリア細胞の免疫反応を引き起こし、グリア細胞が電極を包み込む形になり、電気信号が悪くなったり、システムのスムーズな稼働が難しくなったりする。これがニューラリンク社の直面する臨床的課題といえる。

 中国の研究チームの低侵襲型BMI電極は硬膜外に埋め込まれ、血液脳関門を破壊せず、局所場電位信号をキャッチしており、長期的なシステムの安定性と安全性は高いが、デコードの精度が侵襲型システムには及ばない。

 BMIは世界の科学技術界で最先端のホットな話題の一つになっている。欧州連合(EU)や米国、日本、韓国、オーストラリアなどの国・地域が、この技術を対象にした数多くの重要研究開発計画と典型的な投資プロジェクトを打ち出している。

 閔氏によると、BMIはここ数年、電極やアルゴリズム、半導体などの面で重要な進展を遂げており、これには実施された科学テストの結果も含まれる。応用面では、BMIは医療、エンターテインメント、スマートライフ、教育、軍事などの分野への応用が可能だ。現在は医療分野が応用の中心であり、市場シェアの約6割を占めるという。

 BMIと医療との結びつきから、幅広い応用の可能性も生まれている。研究機関であるデータブリッジマーケットリサーチのデータによると、2022年のBMI市場規模は17億4000万ドル(1ドル=約149円)に上っており、30年に56億9200万ドルに達し、この間の複合年間成長率が15.61%になるとの予測もある。

 24年1月に中国の工業・情報化部(省)など7部門が「未来産業のイノベーション発展の推進に関する実施意見」を発表し、BMIを10大シンボル製品の1つに挙げた。

 では、中国の実力はどれほどのレベルか。閔氏は「中国国内のBMI製品は非侵襲型が中心だ。BMIのエコシステムの発展状況を見ると、中国は今、基礎的、技術的、応用的な面をカバーしたBMI全産業チェーンを形成しつつある。BMIソフトウェア開発では、複数の研究機関がアルゴリズムやパラダイムなどの面で世界トップレベルの研究水準に達している」と説明した。

 特許データベースの「incoPat」を検索すると、2013~22年における医学分野のBMI関連の特許出願件数は1239件に上った。そのうち公開件数が最も多いのは中国で602件あり、米国が195件、韓国が119件などとなっており、他の国々を上回っている。

 
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