中国南西部、雲南省昆明市の北郊にある元宝山山頂の密林に、国家重要科学技術インフラである「中国西南野生生物遺伝資源バンク」がある。同施設は「種子の家」や「種子バンク」とも称され、多くの希少な絶滅危惧野生植物や重要な経済作物、新たに発見された種を保護し、保存と研究を通じて野生生物の遺伝資源を発展させてきた。新華社が伝えた。
中国科学院昆明植物研究所「扶茘宮」生物多様性体験パーク内にある種子博物館に入ると、生命の萌芽の美しさが目に飛び込んでくる。
522種の植物の種子が、発光するアクリルの柱の中に「横たわって」おり、その華やかな姿にまず目を奪われる。少し離れたところには、高低さまざまに吊るされた瓶があり、中には56種の絶滅危惧種や研究および経済的価値を持つ植物の種苗が生き生きと育っている。この展示装置は「希望」と名付けられているが、栄養を吸収し、発芽して成長することは、すべての種子にとっての「希望」であろう。
同博物館は、中国科学院昆明植物研究所内にある中国西南野生生物遺伝資源バンクによって支えられている。ここに保管されている各種野生植物の種子は通常、健全で充実した種子を少なくとも2500粒収集する必要がある。
同遺伝資源バンクの伊廷双主任は「十年以上の発展を経て、当遺伝資源バンクは各種野生植物の種子や植物DNA、大型真菌、微生物遺伝資源、動物遺伝資源を長期的かつ効果的な方法で保存しており、保存能力は世界のトップレベルに達している」と説明した。
伊氏は雲南省に遺伝資源バンクを建設した理由について「現地の生物多様性が非常に豊富だからだ。高等植物は中国全土の約50.3%を、脊椎動物は中国全土の約49.5%をそれぞれ占めている。雲南省はまさに『動物王国』『植物王国』『世界の花園』『種の遺伝子バンク』だ」と述べた。
同遺伝資源バンクはこれまで各種野生生物の遺伝資源を2万種以上、計30万点以上収集・保存している。うち野生植物の種子は1万種以上、約10万点で、保存量でアジアトップとなっている。英国のミレニアム・シード・バンク、ノルウェーのスヴァールバル世界種子貯蔵庫とともに、世界の生物多様性保護を牽引している。
遺伝資源バンクに「入居」できるのは、どんな種子でも良いわけではなく、厳しい審査基準と数々の関門がある。
伊氏は「遺伝資源バンクは希少・絶滅危惧種、固有種、重要な経済的価値を持つ植物の種子を優先的に収集する。種子はアクセスステータスを持つ必要がある。つまり、絶滅の危機に瀕している(Endangered)、ある地域に固有である(Endemic)、経済的に重要である(Economic important)という『3E』基準を満たす必要がある」と紹介した。
「固有」とは中国特有のものだけでなく、さらに狭い範囲の固有も指す。この基準に基づき、例えばヒマラヤイチイや巧家五針松、中国固有の雲南金銭槭、クレイギアユナネシスなど、中国の国家1、2級重点保護野生植物が優先的に保存されている。
伊氏は「当遺伝資源バンクは今後、遺伝資源保存技術の研究をさらに強化し、より多くの種子が遺伝資源バンクに『入居』できるようにする。例えばある種子はマイナス20℃の低温で活性を失って枯れてしまうが、液体窒素のマイナス198℃の超低温での保存を試みるか、葉や根によって組織培養ができるかを試す必要がある」と語った。
