電子科技大学(中国四川省成都市)の研究チームがこのほど、中国の研究者として初めて、電気触媒と生物触媒を組み合わせた「人工海洋炭素循環システム」を提案し、その実証を行った。このシステムは、海水中の二酸化炭素(CO2)を捕集し、バイオマニュファクチャリングに直接利用できる中間体に変換、さらにそれを高付加価値の化学品や材料へとアップグレードできるという。中国新聞網が伝えた。
この研究は、電子科技大学の夏川教授のチームと、中国科学院深圳先進技術研究院定量合成生物学国家重点実験室の高翔氏のチームの共同成果であり、関連論文は6日付の国際学術誌「ネイチャー・カタリシス(Nature Catalysis)」に掲載された。
プロジェクト責任者の夏氏は、「今回の成果は、中国の『ダブルカーボン(カーボンピーク・カーボンニュートラル)』目標と『ブルーエコノミー発展』の需要に密接に関連したもので、海洋炭素吸収源の資源化利用における新たな道を切り開いた。気候変動への対応に新しい解決策を提供するだけでなく、グリーンで低炭素な新素材産業の発展に向けた重要な基盤技術を築き、海洋炭素資源の高付加価値化を推進する」と述べた。
今回提案された「人工海洋炭素循環システム」は、「海水からの炭素吸収」から「材料・分子の生産」に至る一貫したチェーンを構築するもので、電気触媒と合成生物学を組み合わせることにより、海水中の炭素捕集と下流の生物学的変換という二つの重要プロセスを初めて連結させた。生分解性プラスチックのモノマーをモデルとして、拡張可能なプラットフォーム経路を確立し、学際的融合の新たなモデルを提示した。
研究の最初の重要段階は電子科技大学の夏川チームが担当し、電気触媒技術を用いて海水から効率的に炭素を捕集することに成功した。電極の不動態化や塩類の析出といった課題に対し、チームは新型電解装置を設計。実験では、この装置が天然海水中で500時間以上連続して安定稼働し、CO2の捕集効率が70%を超え、副産物として水素も同時に生成できることが確認された。

(画像提供:人民網)