二、農民の所得増加促進をめぐる農業優遇政策の強化
中国が豊かになるためには、農民が豊かにならなくてはならない。農村内部での収入増の潜在力を十分に掘り起こし、農村における第二次、第三次産業の収入増の余地を見出し、農村外部からの収入増のルートを拡大し、政策により農業収入増の確度を高める。経済発展という新たな展開に伴い、都市と農村の収入格差は縮小傾向にある。
8.農業・農村へ優先的な投資を行う。農民の収入増を実現するため、政府の農業・農村の発展基盤改善の責任を明確化する。各級政府は農業・農村が財政支出の優先的な保障分野であるという立場を維持し、安定増長の仕組みの構築を急ぎ、農業・農村への支出増額、基礎建設の投資を継続して行う。財政支出の構造を適正化し、農民の収入増、農村の重要な改革、農業インフラ建設、農業構造調整、農業の持続的発展、農村民の生活改善を重点的に補助する。投資など、農業関連資金の運用の仕組みを刷新し、財政資金を引き出し軌道修正する役割を果たす。農業関連への移転支出制度を改正し、審議権限の付与により財政の農業・農村への支出を有効的に統合する。農業関連資金の監督管理を十分に強化し、規律・透明性のある管理制度を打ち立てる。資金の乱用や流用、差し止め、虚偽、横領を阻止し、実用的に使用されるようにする。
9.農業補助金政策の実施機能を強化する。農民の収入増を実現するため、国家による農業支援システムを整備する。農業補助金政策を安定的に継続するため、WTOで提言された「グリーンボックス」政策の実施規模と範囲の拡大、ならびに「イエローボックス」政策の改善を実施する。食糧生産者への直接補助金、良種補助金、農機具購入補助金、農業資源総合補助金等の政策を継続して実施する。改革試験地を選定し、補助金制度の方向性と効果を高める。農機具購入補助金政策を整備し、主産地区や新たな農業経営主体に補助金を投じ、節水灌漑設備建設補助金の範囲を拡大する。重要な農業生産技術の普及、補助政策を実施する。穀物油生産大県、食糧作物種子生産大県、豚肉産出大県、牛・羊牧畜大県の財政奨励補助金政策を実施する。近代農業モデル地区の奨励補助金の範囲を拡大する。食糧主産地区利益補償、耕地保護補償、生態補償制度を完備する。
10.農作物価格形成の仕組みを整備する。農民の収入増を実現するには、農産物の合理的な価格形成と価格の安定化が必要不可欠である。水稲、小麦の最低買取価格政策を継続し、重要農作物の臨時貯蔵政策を整備する。新疆の綿花、東北や内モンゴルの大豆の価格改革の試験地での成果をまとめ、補助金制度の改善と価格操作の抑制に取り組み、補助金を速やかに農民に還元する。農作物の目標価格保険制度構築試験地を積極的に設置する。食糧、綿花、砂糖、肉類等重要農作物の備蓄規模を合理的に確定する。国家食糧備蓄量調整メカニズムを整備し、備蓄食料管理体制を強化する。新増人口の食糧備蓄計画を立て、製糖企業など重要商品取引企業の備蓄代行システムを整える。情報テクノロジーを駆使した作付面積と生産量の統計調査を実施し、農作物価格の監視測定方法を改善する。
11.農業の社会化サービスを強化する。農民の収入増を実現するためには、農業全般のサービス体系を整え、農民が負担する経費を抑えリスクを低減する必要がある。農業全般の社会化サービスにおけるメカニズムを把握し試験地を一新し、耕作・収穫の代行、汚染防止と管理機能の一元化、乾燥貯蔵等のサービス提供に力を入れる。基礎的な農業技術の普及等公益サービス機構を安定・強化させ、経費保障と奨励制度を整備し、基礎的な農業技術の普及、及び農業者の就業条件、生活条件を改善する。農村専門技術協会は農業技術普及の役割を果たす。サービスには対価を支払うことで、公益サービスを享受できるよう推奨する。中央、省レベル財政の主要農作物保険補助金制度を強化する。主要農作物種子生産保険を中央財政補助製品目録に入れる。中央財政補助金の保険金額は実態経費をカバーできるものでなければならない。地方特有の有力な特産農作物保険は中央財政が補助する政策をとる。森林保険の適用範囲を拡大する。郵便システムの効率化を向上させ、農業気象サービスのメカニズムを一新し、農業社会化サービス体系に統合する。
12.農村の一次、二次、三次産業の融合、発展を図る。農民の収入増を実現するためには、農業産業チェーンを伸長し、農業の付加価値を高めなければならない。農民が主体となり、市場ニーズに応えるべく、地域の有力な資源を活用し、地域特有の農畜産、農作物加工業、農村サービス業を大きく発展させ、一村一品、一郷(県)一業の発展を促進する。農業の多面的機能を積極的に活用し、農村資源のレジャー利用、旅行、観光、文化教育の価値を発掘する。歴史、地域、民族的特徴がある景観の観光地化を支援し、多様で特色のある農村の観光レジャーを開発する。農村の観光レジャーにおける環境、インフラ建設への投資を増額し、営業能力を強化し管理レベルとサービスの質を向上させる。農村の観光用地、財政投資等の支援政策を策定し、税制優遇を実施する。農村の持つ資源を活性化し、農民の財産収入を増やす。
13.農村の外部収入を増加するルートを拡大する。農民の収入増を実現するためには、農民の移転・就業・起業を促進しなければならない。移住労働者の職業能力開発計画を実施する。同一労働同一賃金政策を実施し、移住労働者の労働報酬の権益を法によって保障し、移住労働者の賃金が正常に支払われる長期的に有効な仕組みを構築する。都市部へ移住した移住労働者及びその家族は、都市の基本的公共サービスを平等に受けることができる。都市の社会保険の適用範囲を移住労働者にまで拡大し、移住労働者の職業病予防と支援を展開する。同行子女が現地の義務教育や大学受験のための関連政策を完備する。都市部への移住労働者が適切な住宅保障を受けられるよう具体的方法を模索する。戸籍制度の改革を急ぎ、居住証制度を設け、農村からの移転人口が都市に定住し、都市部の住民と同等の待遇を受けられるようにする。現段階で、農民の都市への移住が難しい背景には、土地請負経営権、宅地使用権、集団収益分配権が関係している。技術、資金、管理経験のある移住労働者が帰郷し起業することを促進するため、減税や普遍的コスト削減政策を行うことで、起業コストや企業の負担を軽減する。中西部中小市町の産業発展環境を適正化し、農民が好条件で近隣に移転し就業する機会を産出する。
14.農村の貧困対策に注力する。農民の収入増を実現するためには、早急に農村の貧困人口が貧困から脱し豊かにならなければならない。極貧地区に集中的に投資を行い、プロジェクトによる貧困撲滅対策を展開する。貧困対策に焦点をあて、居住証を取得した貧困世帯への支援を実施する。極貧地区地域へのインフラ建設、環境保護、基本的公共サービスを集中させ、用地政策を強化し、貧困村の都市部への集落移転の推進、移転補助金等の事業を実施する。貧困対策プロジェクトは原則として省・市・県が審査権を有し、その実施と監督管理の責任を負う。公告公示制度を設け、扶助対象、資金運用、プロジェクト建設等の状況を全面的に公開する。貧困扶助のために社会の力を動員して組織化する仕組みを整え、社会全体として貧困扶助開発を推進する基盤を構築する。幹部駐村支援制度を整備する。貧困農村の現況把握に努め、貧困県の審査、規制、退出等のメカニズムを構築、整備する。経済発展地区は貧困扶助開発水準を高いレベルで推進する。