Ⅴ. 自然生態管理分野
米国は全体として先行しており、余り差が無く欧州が続いている。日本はこれら2極とはかなり差がある。中国と韓国がそれに続いている。
生物多様性の観測・評価・予測技術では、中国系アメリカ人と中国科学院や大学において複数の研究プロジェクトが行われている。レベルは少し低いものの発表論文数は多く、たくさんの若い学者が育っている。中 核機関には遺伝子解析装置が配備されて遺伝的多様性の研究も行われている。
生態系の観測・評価・予測技術では、東シナ海など中国近海の観測が充実しており研究論文も増加しているが、データ統合や配信などは進んでいない。また、リモートセンシング研究の展開が著しく、研 究主要誌で比較すると日本を抜いて、米国欧州に続いている。
陸域管理・再生技術では、近年大規模な造林が奨励されているほか、砂漠化防止のための緑化も盛んに行われている。
陸水管理・再生技術では、国内の水環境が水量と水質の観点から経済成長の足かせになりつつあり、水質や自然環境への関心は極めて高くなってきている。現状では、水質の問題が中心で、自 然再生への関心は萌芽的である。
外来種管理・駆除技術では、2003年頃から政府主導で研究開発が推進されている。外来生物の全国調査に基づき、防除対象の侵略的外来種が選定され、防除活動も実施された。ただし、侵 入昆虫に対する意識はまだ低く、農林害虫の防除技術研究が先行している。生態リスク評価研究はほとんど進んでいない。
野生動物管理・復帰技術では、国家的な政策により絶滅種の研究、保護及び野生復帰が事業として計画されている。重要大学や研究機関には野生生物保護研究センター等が設置され、行動学、繁 殖学など関連研究や遺伝子資源保存の推進にも力が注がれている。ジャイアントパンダやトキ、アムールトラなどでは進展がみられるが、その他の絶滅危惧種では野生復帰の研究はかなり遅れている。野 生動物管理研究は初期的な段階である。
野生動物感染症評価・管理技術では、SARSの病原体コロナウィルスの野生動物集団における検出や、鳥インフルエンザウィルスH5N1のガン・カ モ類の渡りによる長距離分散の実証において大きな貢献をした。