第10回中国研究サロン「北京大学と清華大学~歴史、現況、学生生活、優れた点と課題~」/講師:林 幸秀(2014年10月30日開催)

演題:「北京大学清華大学~歴史、現況、学生生活、優れた点と課題~」

開催日時・場所

2014年10月30日(木)16:00-17:30

独立行政法人科学技術振興機構(JST)
東京本部別館1Fホール

講演資料

北京大学と清華大学」( PDFファイル 11.2MB )

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発展目覚ましい北京、清華両大学
日中の人材交流・科学技術協力重要に

小岩井忠道(中国総合研究交流センター

 中国の学術・科学技術の現状に詳しい林幸秀科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェローが10月30日、中国総合研究交流センター主催の研究会で講演し、中国を代表する北京、清 華両大学の目覚ましい発展ぶりを紹介し、日中間の人材交流、科学技術協力がますます重要になっていることを強調した。

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 林氏は、現地調査で得られた情報を数多く盛り込んだ著書「北京大学清華大学―歴史、現況、学生生活、優れた点と課題」を10月10日に出版したばかり。講演では、まず、中 国が大学進学率では日本や米国にまだ及ばないものの、日本の約9倍、米国の倍近い2,386万人(2010年時点)もの学生数(大学院生を含む)を有する高等教育大国になっている現状を紹介した。大 学の数も12年時点で2,358校と米国の4,495校には及ばないものの、日本の1,212校の倍近い。

 1898年創立の京師大学堂を前身とする北京大学、1911年の清華学堂(米国から返還された義和団事件賠償金で設立)が前身の清華大学とも、日中戦争、新中国建国、文 化大革命といった激動期にそれぞれ苦難の道を歩んだが、鄧小平の「南巡講話」以降、経済発展とともに総合大学として急速に発展した歴史も、林氏は詳しく紹介した。

学生生活が日本や米国などと比べ、非常に恵まれていることにも触れている。授業料は年5千元(約8万円)。理科系の博士課程に進む大学院生は所属する研究室からの援助などがあるため、授 業料を払わなくてすむのがほとんど。実質的に全寮制で、年間千元(約1万7,000円)払うだけでよい。食事、買い物もほとんどキャンパス内でできるため、部活やアルバイトもせず高校時代同様、ひ たすら猛勉強に明け暮れる学生が大半、という。

 現在、北京市内にある本部キャンパスだけで両大学とも200万平方メートル(東京大学本郷キャンパスの4倍弱)という広さを誇り、学生・院生の総数は北京大学が約37,000人、清 華大学が約43,000人と、東京大学の約27,000人、米ハーバード大学の約21,000人をしのぐ。科学論文被引用数など研究レベルの指標となる数字に加え、QSやタイムズ・ハイヤー・エ デュケーションの世界大学ランキングで両大学とも上位50の大学にランク付されているなど研究実績、国際的評価の高さを裏付けるデータも示された。

 特に会場の関心を集めたのが、林氏が実際に両大学の教員たちにインタビューして得た情報に基づく、両大学の長所や素顔だった。

 自信とエネルギーに満ち、目標としているのは欧米の有名大学。学部、学科、研究室ごとに人事、資金配分、学生獲得が柔軟にできるシステム。企業からの豊富な研究資金に加え、急 激に増えている政府からの研究資金。教員や学生が国際的に活躍することを積極的に勧め、教員の採用でも出身大学より外国での研究、教職経験を重視―など優れた点を林氏は列挙した。

 日本の大学は教員が偉すぎて、学生は言いたいことも言えないのが普通。しかし、中国では学生もきちんと教員に反論できる雰囲気があることも、林氏は学問をする場にふさわしい長所として挙げた。

 「基礎研究、オリジナリティで欧米に及ばない」「研究評価などが数値指標中心で近視眼的」「学生は後追いでない発想や研究を行う資質に欠ける」―。幾つかの課題が両大学にあることにも触れた上で、氏は、日 本と中国の有力大学との関係について、次のように提言した。

 「北京、清華大学を初めとする中国の主要大学は世界のトップレベルになりつつある。日本の大学は競争と協力のため、相手をよく知ることが重要。日中科学技術協力は、日本の人材と資金のジリ貧を救う。中 国を恐れてもいけないし侮ってもいけない。人材交流から協力を初めて、共同研究や共同開発に発展させるべきだ」

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林幸秀氏

林 幸秀(はやし ゆきひで)氏:
JST研究開発戦略センター海外動向ユニット上席フェロー

略歴

1948年富山県生まれ。1973年東京大学大学院工学系研究科修士課程原子力工学専攻卒、科学技術庁(現文部科学省)入庁。文部科学省科学技術・学術政策局長、内閣府政策統括官(科学技術政策担当)、文 部科学審議官などを経て、2008年(独)宇宙航空研究開発機構副理事長、2010年より(独)科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェロー。著書に『理科系冷遇社会~沈没する日本の科学技術』、『 科学技術大国中国~有人宇宙飛行から、原子力、iPS細胞まで』、『ロシア科学技術情勢~模索続くソ連からの脱皮』(共著)など。


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