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【14-013】中国の大気汚染防止の法制度および関連政策(11)

2014年 3月31日

金 振

金 振(JIN Zhen):公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)
気候変動・エネルギーエリア研究員

 1976年、中国吉林省生まれ。 1999年、中国東北師範大学卒業。2000年、日本留学。2004年、大 阪教育大学大学院教育法学修士。2006年、京都大学大学院法学修士。2009年、京 都大学大学院法学博士。2009年、電力中央研究所協力研究員。2012年、地球環境戦略研究機関特任研究員。2013年4月より現職。

4.大気汚染防止関連政策

(4) 自動車関連規制政策

(4.1) 自動車と大気汚染との関係

 2014年3月25日、中国環境保護部は、「京津冀(北京市・天津市・河北省)、長江デルタ、珠江デルタなど重点区域および直轄市、省都の2013年度大気質に関する報告書」(以下、報告書)を発表した。本報告書は、74都市を対象に実施した2013年度の大気質調査結果についてまとめたものでる。

 報告書によれば、2013年、新基準の適用を受けた74都市の内、年間平均基準値、(国家2級)をクリアした地域は海口、舟山、ラサの3都市のみであり、全体合格率は5%未満となった。地域別に見た場合、京津冀地域(13都市)の大気汚染が一番深刻であり、新基準に達した平均日数は140日以下にとどまった。74都市における原因物質の首位はPM2.5、2番目がPM10であり、石炭と自動車が主要発生源として挙げられた。また、国全体において、従来型大気汚染(粉塵、煤塵)と自動車排ガスや発揮性有機化合物(VOCs)が大気中での光化学反応を経て発生する二次汚染が混在する複合型大気汚染が進行していると、報告書は警告している。

大気汚染と自動車の因果関係

 大気汚染と自動車との因果関係に関して、現在、明らかになっている部分もあれば、いまだに解明できていない部分もある。たとえば、自動車が大気中に排出した汚染物質の種類、総量などに関してはその因果関係が比較的明確であり、信憑性の高いデータが中国政府によって公表されている。例えば、2012年、中国の自動車部門(バイク、原動機付自転車も含め2.238億両)が排出したNOx(窒素酸化物)、PM(粒子状物質)総量はそれぞれ640万トンと62.1万トン、国全体排出量に占める割合はそれぞれ、27.4%と5%である(典拠:環境部「2012年環境統計年報」)。地域別に見た場合、NOx、PM排出量の多い上位4地域は、河北省、河南省、広東省、山東省である(典拠:環境部「中国自動車汚染防止年報-2013年」)。大気汚染が最も深刻な都市についてランキング化した上記の報告書によれば、上位10都市の内7都市が、自動車起因のNOxとPMの最多排出量を記録した河北省に立地している。これらのデータは、いずれも自動車部門と大気汚染との関連性を立証している。

 一方、大気汚染に対する自動車の影響度(または貢献度)に関しては、いまだに分かっていない点が多い。ここでいう影響度とは、大気汚染の元凶であるPM2.5の原因物質に占める自動車由来物質の割合のことである。この点に関し、様々な研究機関や地方政府が独自の調査に基づく見解を発表しているが、これらの結果には大きな開きがある。例えば、中国科学院物理研究所が2013年12月30日付で公表した研究成果によれば、北京市PM2.5に対する自動車部門の影響度は4%に止まるものであった。これは、北京市政府が公表した22.2%の結果より遥かに低い値である。この計算結果対し、様々な反論が見られ、とりわけ北京市政府の場合、22.2%を支持する旨の声明を発表するまでに至った。現状において、PM2.5に対する自動車の影響度を20%以上と見積もる見解が広く受け入れられている(図1)。もし他地域から飛来した汚染物質を考慮せず、地域内発生源のみに着目した場合、北京市のPM2.5に対する自動車の影響度は40%以上になるとの指摘もある。

図1 PM2.5発生源

図1

 (そのXIIにつづく)



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