第4章 国家バイオ産業基地の現状
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第4節 産学官連携、イノベーション、外資導入等の状況

 2006年6月21日、22日に湖南省長沙市で第2回中国バイオ産業大会(China Bioindustry Convention 2008)が開催された。中国全国人民代表大会(日本の国会に相当)常務委員会、国家発展改革委員会、科学技術部、衛生部、中国科学院中国科学技術協会、国家開発銀行、国家自然科学基金委員会、国家輸出入銀行、国家林業局、国家漢方薬管理局、中国石油化学グループなど、中国官庁や各地から、バイオ医薬、バイオ農業、バイオエネルギー、バイオ環境保護、バイオ製造といった関連分野の産学官関係者やメディア関係者が集まり、更に、カナダ、ドイツ、韓国など海外からの専門家も来場した。

 中国バイオ産業大会にこれ程多くの政府要人や、全国から100名余りの中国科学院などのアカデミーメンバーや知名専門家が来場したことは、本大会の重要性やバイオ産業への期待の高さを意味している。

 大会のテーマは「引領生物産業発展、助推両型社会建設」(バイオ産業を牽引し、「両型」社会の建設を推進する)である。ここで言う「両型」とは省エネルギー型、環境保護型と言う意味である。このコンセプトの下で、国家要人も臨席した「ハイレベルフォーラム」をはじめ、「バイオ医薬技術及びバイオ医薬産業の先端フォーラム」、「製薬工業の省エネルギーと環境保護フォーラム」、「バイオアグリ産業フォーラム」、「バイオエネルギーと工業バイオ技術フォーラム」、「バイオ産業、投資融資及び知的財産保護フォーラム」などが開かれるとともに、「中国とドイツの経済とバイオ技術の協力に関する第1次会議」、「中国と韓国のバイオ産業交流会議」と言う国際会議も行われた。

 ところで、第2回中国バイオ産業大会で調印された投資契約の金額合計は100億元超であるが、その半分近くに当たる47億元を長沙国家バイオ産業基地の契約が占める。カナダのバイオ技術会社が14億元を投じ、長沙にインフルエンザワクチン基地を建設するプロジェクトに正式に調印した。前駐中国大使、カナダ・中国貿易理事会主席の貝祥は、「これはカナダの中国に対するここ10年で最大の投資であり、最も重要な医療協力プロジェクトである」と語った。

 カナダのMicrobix社は世界最先端を走るバイオ技術関連会社で、インフルエンザワクチンの生産技術は世界のトップレベルにある。Microbix社の創始者でCEOであるWilliam J. Gastlは長沙市の官吏と会見の際、「建設期間は4年で、2012年に生産に入る見込みである。年間1億元のインフルエンザワクチンの生産が可能で、中国国内及びアジア諸国の需要を充たすことができる」と語った。

 中国におけるバイオ医薬、バイオ農業、バイオエネルギー、バイオ環境保護の発展は、日本を含む海外関係者に対してさまざまなビジネスチャンスを提供している[1]

 2008年10月27日、大阪府の橋下徹知事は中国・上海を訪れ、バイオ産業関連企業など400社以上が集積する上海張江生物医薬産業基地を視察した。同知事は、「バイオ産業で世界に打って出たい」と報道陣に述べ、産業活性化のために同基地と大阪の企業との人材交流などを進める協定を結ぶ意向を明らかにした。また、橋本知事は同基地開発会社の社長らとの懇談において、医薬・バイオ産業を育てて大阪の産業の核にしたいとの考えを示し、協力して世界を牽引していくことを呼びかけた[2]

 尚、現時点では国家バイオ産業基地としては認定されていないものの、外資誘致や国際交流に積極的に取り組む事例もある[3]


[1] 張輝「長沙、中国バイオ産業の鼓動を加速する」DND連載コラム(2008年6月25日)。

[2] 朝日新聞「『バイオで世界へ』橋下知事、上海の集積地を視察」2008年10月27日。

[3] 遼寧省は今後10年間に約1.5兆円の予算で本渓市に面積23平方kmの「遼寧本渓生物医薬産業基地」(バイオ・医薬品産業パーク)を整備。まず、漢方薬を中心とする研究開発センター等を建設し、医薬品関連産業全般を対象に国内外の企業約60社を誘致した後、研究開発機関や大学、医薬関連教育訓練センター等も設立する計画。日揮は技術コンサルタントとして計画の推進主体となる遼寧省本渓経済開発区管理委員会との間で技術協力に関する覚書を交わした。同社はこれまで、同省・瀋陽薬科大学との間でGMP(医薬品の製造管理及び品質管理基準)教育等の共同事業や、省食品薬品監督管理局等への支援実績があることから、この計画への参画が決まった。サーチナ「日揮が遼寧・バイオ医薬産業基地の基本計画策定支援」2008年7月2日。