書籍紹介:『「チャイナクライシスへの警鐘」-2012年中国経済は減速する』
書籍名:『「チャイナクライシスへの警鐘」-2012年中国経済は減速する』
- 著者: 柯隆
- 出版社: 日本実業出版社
- ISBN: 978-4-53-404753-3
- 定価: 1,500円+税
- 種類・頁数: 単行本、232ページ
- 商品の寸法: 19 x 13.4 x 2.4 cm
- 発行日: 2010/9/18 Printed in Japan
目次
- 第1章 「不安定化」が始まった中国
- 第2章 矛盾を加速させたリーマンショック後の回復プロセス
- 第3章 「祭り」の後にくる虚脱感
- 第4章 食糧・資源の確保で余力がなくなる中国
- 第5章 臨界点に達する不良債権問題
- 第6章 中間層の雇用、消費、教育の危機
- 第7章 日本以上に急速に進む高齢化社会
- 第8章 人民元自由化がもたらす明と暗
- 第9章 国有企業が越えられない民営化という大きな壁
- 第10章 世界の「環境包囲網」から逃げられない中国
- 第11章 「社会資本主義経済」という大きな矛盾
- 第12章 2012年チャイナリスクの真相
柯 隆 (Ke Long): 富士通総研経済研究所主席研究員
1963年中国南京市生まれ、1986年南京金陵科技大学日本語学科卒業、1988年来日。1992年 愛知大学法経学部卒業。1994年 名古屋大学大学院経済学修士。1994年 長銀総合研究所国際調査部研究員。1998年 富士通総研経済研究所主任研究員。2005年同上席主任研究員。2007年同主席研究員。2000-2009年 財務省外国為替審議会委員、財務政策総合研究所中国研究会委員。2001-2002年 JETROアジア経済研究所業績評価委員。
【専門領域】
- 開発金融
- 中国経済論
【主な著書】
- 『華人経済師のみた中国の実力(共著)』日経プレミアシリーズ 2009年
- 『中国の不良債権問題』日本経済新聞出版社 2007年
- 『中国の統治能力』慶応義塾大学出版会 2006
- 『中国に出るか座して淘汰を待つか!』中経出版 2002年3月
- 『最新中国経済入門(共著)』東洋経済新報社
書評:
馬場 錬成 東京理科大学専門職大学院 教授/科学技術振興機構中国総合研究センター 特任フェロー
世界はいま第3次産業革命に入っている。その産業革命の覇権を握っているのは中国という見方もあるだろう。その中国の現状と近未来はどうなっているのか。経済的な統計数字や経営指数、そして中国経済の動きから中国人の国民気質まで勘案しながら、2012年から13年にかけて大きな転機があることを論理的な構成と記述で警鐘を鳴らした本である。
中国を取り巻く不安定要因は、断片的には様々な情報によって触れることが出来るが、本書はその総集編ともいうべき構成で洗いざらい見せてくれる。共産党一党独裁政権が抱える課題は、政治、経済、社会、外交などあらゆる局面で膨らんでおり、いつ臨界点を超えて暴発してもおかしくないと著者は言う。その裏づけになっている論理構成は、エコノミストらしい理詰めの記述であり説得力がある。
2012年から13年にかけて中国は政権交代が行われる。その時点が大きな山場になるというのが著者の見解であり、その背景説明を読むと納得せざるを得ない状況が横たわっていることが分かる。中国の経済問題を語ったものであるが、それは同時に中国共産党独裁政権のあり方を大局的に問いかけた本でもある。
隣国にあり相互互恵関係にある日本は、中国の動向には目を離せない時期を迎えており、多くの示唆に富んだ本書を読まれることをお薦めしたい。