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NPO法人東京都日中友好協会共催 東京都・北京市友好都市提携35周年記念講演会(2014年9月4日開催)

第74回CRCC研究会 特別企画
NPO法人東京都日中友好協会共催 東京都・北京市友好都市提携35周年記念講演会

程永華駐日特命全権中国大使 東京都・北京市友好都市提携35周年と今後の中日関係

日中は引っ越すことができない隣国
-程中国大使が関係改善の熱意表明

小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

 程 永華 駐日中国大使が9月4日、NPO法人東京都日中友好協会 と科学技術振興機構共催の講演会で、日中関係の改善に取り組む決意を語った。

 程大使は、日中両国の関係を「引っ越すことができない隣国」と表現し、日中両国がそれぞれ相手の国を客観的に認識することの大切さを訴えた。

 現在の日中関係を捉えるためとして程氏は、3つの言葉を挙げている。「深さ」「重要さ」「複雑さ」だ。まず、「日中は2000年の交流の歴史を持つ」「文化、宗教特に文化の共通点が多い」など、関係の深さについて多くの例を挙げた。例えば2012年1月に東京国立博物館で開催された「北京故宮博物院200選」に出展された北宋時代の名画「清明上河図」は、氏によると北京故宮博物院でも公開されるのは3年に1回、それも12、3日間だけという。日本で公開されるまで、北京故宮博物院から持ち出された先は瀋陽、上海、香港だけ。海外で鑑賞できるのは「空前絶後」で、それも「日本人ならこの絵の良さがこの分かる」との考えに基づいていた、と程大使は語った。

 さらに「書や水墨画が分かるのは日本人と中国人」など、文化に関し中国にとって一番近い国は日本であること、こうした関係は他の文化圏ではみられないことを、氏は繰り返し強調した。

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 同時に、日中両国が相手国との関係を重要視していることは世論調査などからも明らかなのに、歴史・領土、軍事・安全保障面での相互不信が深刻になっているという「複雑さ」が日中間に存在することも指摘している。国交正常化が実現した時期を振り返り、尖閣諸島を日本政府が購入したことを「過去の了解、共通認識を否定したものになる」と中国政府の見解をあらためて示し、安倍首相の靖国神社参拝についても「戦争責任と認識をあいまいにした」と批判した。

 程大使が講演した日は、北京の抗日戦争勝利記念座談会(9月3日)で行われた習近平主席の演説が、日中関係の改善に意欲を示したと日本政府に受け止められたわずか翌日。「中国と日本は一衣帯水の隣国同士で2000 年余りの交流の歴史を持つ」「両国とも相手国との関係を重要視している」「4つの政治文書の精神を守り、中日関係の長期的、安定的、健全な発展を図ることを願っている」「日本政府が日本軍国主義の侵略の歴史を正視、反省し、戦争の責任を明確にすることが、中日関係改善の障害を取り除くことになる」―など、習主席の演説と重ね合う主張も盛り込まれた。

 一方、外交官としてだけで21年、その前の留学時代を含めると26年という長期の日本滞在経歴を持つ大使だけに、講演全体としては日本に対する親近感と敬意を十分感じさせる内容となっている。それは会場からの質問に対する答え方にも見られた。「中国の目覚しい経済発展に日本はどのように貢献したか」という短い質問に対する答えに7分もかけていたように...。

 1978年10月に来日した鄧小平副主席に、若手大使館員だった程氏が連絡係りとされ連日付き添った思い出をまず明らかにした後、中国の急速な経済発展はその2カ月後の1978年12月に打ち出された鄧小平氏主導の改革開放政策決定に始まり、その大きなきっかけが鄧氏の日本訪問だったことを強調した。日本の3つの工場見学と新幹線乗車を経験した鄧氏が「現代化(日本でいう近代化)とは何物か、が分かった」という感想を述べたエピソードも紹介した。

 さらに、大平内閣時に始まったODA(政府開発援助)と日本企業による投資の役割についても触れ「対中投資の累積額は971億米ドル(約10兆円)に上る」「日本の投資のおかげで製造業、市場の双方が拡大され、日本企業も大きな利益を得た」など、中国の急速な経済発展に対する日本の大きな貢献と、日中両国の産業・経済発展をもたらした意義を率直に評価していた。

 また青少年交流についての質問に対しても、今年から始まった日本政府の日本・アジア青少年サイエンス交流事業「さくらサイエンスプラン」にまず触れて「有意義な計画だ。高校生、大学生は新しいものに対する探求心が強い。こうした交流を双方向にするため中国も日本との青少年交流を進めていきたい」と熱意を示した。

関連サイト: 日本・アジア青少年サイエンス交流事業「さくらサイエンスプラン」

講演概要

程永華駐日特命全権中国大使

日  時: 2014年9月4日(木)18:30~20:00
(18:00より開場・受付開始)

講  師: 程 永華 駐日特命全権中国大使

1954年9月生まれ。中国吉林省出身。大学卒業後1977年より足かけ17年、中国駐日本大使館で勤務し、書記官、参事官、公使参事官、公使を歴任。2010年より駐日全権大使。(通算21年)

演  題:
「東京都・北京市友好都市提携35周年と今後の中日関係」

言  語: 日本語

会  場: 独立行政法人科学技術振興機構(JST)東京本部別館1Fホール

詳  報: 「第74回CRCC研究会詳報」(PDFファイル 1.03MB )

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