第71回CRCC研究会「中国共産党第十八回三中全会"決定": 新しい管理戦略と改革綱領」/講師:張 小勁(2014年5月22日開催)
演題:「中国共産党第十八回三中全会"決定": 新しい管理戦略と改革綱領」
開催日時・場所
2014年 5月22日(木)15:00-17:00
独立行政法人科学技術振興機構(JST)東京本部別館1Fホール
講演資料
「中国共産党第十八回三中全会"決定": 新しい管理戦略と改革綱領」( 530KB )
講演詳報
「第71回研究会詳報」( 4.98MB )
張 小勁(ちょう しょうけい) 氏: 清華大学 政治学部長
略歴
1990年、 中国人民大学国際政治学博士号取得。米国UCLA訪問学者、英国Durham訪問学者、仏 国SciPo訪問学者など経験。 中国人民大学国際政治学部教授、 清華大学政治学部教授を歴任し、現在、清 華大学政治学部長。中 国欧州学会北欧研究委員会秘書長、中国政治学会理事、教育部人文社会基金評価委員などを兼任。専門分野は中国政治学、国際政治比較学など、著書多数。
習近平は毛沢東以来の"超人"指導者に
小岩井忠道(中国総合研究交流センター)
5月22日科学技術振興機構中国総合研究交流センター主催の研究会で講演した張小勁清華大学政治学部長は、昨年11月の中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)で採択された「改革の全面的深化における若干の重大な問題に関する中共中央の決定」が、習近平国家主席の陣頭指揮により起草されたもので、2020年までに改革の決定的な進展がある、との見通しを示した。
張氏によると3中全会決定は、60人のスタッフが7つのグループに分かれ、十分な検討を重ねた上で原案が起草された。2万1,000字、336もの改革項目が盛り込まれた決定の中に最も多く出てくるキーワードは「制度」(183回)で、次いで改革(137回)、メカニズム(115回)、市場(81回)、経済(74回)となっている。ガバナンスシステムの推進、ガバナンス能力の近代化を目指すという目標の達成に向けて、「表層的なものより、制度とメカニズム」「個別の政策よりも一層の進化」「トップダウン設計」「イデオロギーを超えた継承とブレークスルー」が強調されている。
決定が習近平政権下で貫徹、実施されるという見通しの最大の根拠として氏が挙げたのが、習近平国家主席の指導力。毛沢東が権力を握ってからの90年間の興味深い指導者比較を示し、習氏が、歴代指導者の中で唯一、毛沢東と同様の「独断」的な権勢をふるえる指導者だ、と評価した。氏が示したグラフ「権勢地位と体制」によると、毛沢東と習近平氏以外の指導者たちはもう1人の実力者のサポートを受けた「双頭」型あるいはバックに実力者がいた「庇(ひ)護」ないし「後見」型とされている。
これらの指導者たちを「強人」、「凡人」、「庸人」と表す一方、習近平氏を「超人」である毛沢東に匹敵する「新超人」であるとの呼び方も示した。政治手法についても、習近平氏だけに対しては、毛沢東と全く同じ「こちらの言うことに従え」という表現を献じている。
詰まるところ習氏は、大衆に権利を与え、権益を保護し、中間層に実行と貫徹を促す方策により「業績を重んじるクリーンな政府」「反腐敗を制度化し、役人の清廉」「社会の活力を引き出し、透明性の高い政治」「政府を制限し、市場秩序の健全化」「国営企業を制限し、行政の独占打破」「民間企業を支援し、創造型経済の発展」を実現するだろう、との見通しを張氏は示した。
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