100名に迫る日中の学長が円卓会議に参加 日中大学フェア&フォーラム
2019年 5月28日 周少丹(中国総合研究・さくらサイエンスセンターフェロー)
中国科学技術部(国家外国専家局)と科学技術振興機構(JST)共同開催の日中間最大規模の大学・人材・技術交流会「日中大学フェア&フォーラム in CHINA 2019」が、5月25日午後、中国・四川省成都市の四川錦江賓館(Jinjiang Hotel)にて開会した。
本イベントの初日には、「日中学長円卓会議」が開催され、100名近い日中の大学学長・副学長等が参加した。各大学の学長たちは、「大学における教員の評価及び育成」、「日中共同研究をいかに推進するか」、「グローバル人材の育成」、「産学連携のベストプラクティス」「技術者の育成における国際協力」などをテーマとして活発な議論を行った。
写真1 円卓会議A会場(左)/写真2 円卓会議B会場(右)
写真3 円卓会議C-1会場(左)/写真4 円卓会議C-2会場(右)
写真5 円卓会議D会場(左)/写真6 円卓会議E会場(右)
日中の大学の学長が直接対面して交流するこの会議には、早稲田大学、大阪大学、名古屋大学など37の日本の大学学長及び、中国科学院大学、同済大学、大連理工大学、華南理工大学など34の中国の大学学長が参加した。議論がはじまると、まず双方の求める情報がどのようなものかについてそれぞれの学長がポイントを提起し、その上で複数の科学研究協力の取り決め、教員派遣、交換留学生など複数の項目について、また大学間交流の意向について、活発に意見が交わされた。
日中共同研究の推進
本会議ではA、B、C1、C2、D、Eの6つの会場が設定された。その中でも特に、新時代における日中の大学間協力の模索、推進に関する議論を目的として設けられた、B会場「日中共同研究をいかに推進するか」に注目が集まった。早稲田大学国際担当理事の弦間正彦教授をモデレーターとし、高知工科大学、工学院大学、お茶の水女子大学、総合研究大学院大学、首都大学東京、同済大学、北京化工大学、長春理工大学、貴州大学、青海大学、西南交通大学、西南科技大学の学長が各大学の国際交流について紹介し、どのように日中共同研究を促進するかについて意見を交わした。
写真7 早稲田大学弦間正彦理事がモデレーターを務めたB会場
高知工科大学の磯部雅彦学長は、日中大学間共同研究の実現は、簡単なことではないとした。「中国からの留学生は日中科学技術協力の要となり、架け橋となるが、留学するにあたり、研究室や指導教授を探し、日本語を学んで、修士、博士の試験を受け、生活費や学費などの問題を解決する等多くの難題があり、その問題解決は容易ではない」と意見を述べた。
首都大学東京の綾部真雄副学長は、来日する留学生の重要性を指摘し、中国の教授たちに日本留学の難易度を下げるよう要望してほしいと発言した。綾部氏は状況を東京都に報告し、財政と制度上の支援を取り付けているという。
写真8 首都大学東京綾部真雄副学長
中国の大学の学長たちからも、多くの意見が聞かれた。北京化工大学の王峰副学長は、政府の政策が国際協力促進の重要性を支援することについて回答し、また中国科学技術部の国際交流経費の効果についても積極的に肯定し、日中両国政府が双方の科学技術協力の分野を拡大すべきと考え、プログラム協力経費の限度額を増やしたことをアピールした。
また西南科技大学の董発勤学長は「我が校は2019年2月にさくらサイエンスプランに参加(受入れ機関:法政大学)し、新しい協力関係を切り開くことができ、自然科学分野の留学に新たな機会を得られた。政府支援の効果をより一層感じた。その一方で、受け入れ大学の海外留学生は語学留学生が中心で、専門知識を学ぶには不十分であるのが課題である」とも発言した。
これに対して早稲田大学の弦間理事は、英語での授業の実施は、多くの国の留学生、特に理工系の学生にとって日本語学習の難易度を下げ、専門知識を学ぶことを目的とした留学を増やすことになると指摘した。
一方、中国の大学の中でも国際化が最も特徴的な大学の一つである同済大学の顧祥林副学長は、同済大学の歴史を紹介するととともに、学生のレベルでの、また学院および大学レベルでのそれぞれ異なる日中協力の形について紹介し、これも同済大学の日本で学位を取得した100名あまりの教員の利益につながるとした。顧副学長はまた、同済大学は今ある協力モデルの基礎の上に、新しい日中協力の在り方を模索していると発言した。
写真9 同済大学顧祥林副学長
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