北京便り
トップ  > コラム&リポート 北京便り >  File No.18-013

【18-013】植物の遺伝子を自在に改変する技術開発―在中国日本人らの研究チーム

JST北京事務所 2018年6月15日

 中国科学院 上海植物ストレス生物学研究センターの三木大介准教授、朱健康研究所所長(教授)らの研究グループは、ゲノム編集技術によりシロイヌナズナの遺伝子を高効率で自在に改変する技術を確立したと、英科学誌Nature Communications(ネイチャー コミュニケーションズ)に発表した。

 三木准教授によると、配列特異的にDNA を切断する分子ハサミである CRISPR/Cas9 と、その切断した DNA を修復するときに用いられる DNA の鋳型を同時に用いることで、狙った遺伝子領域に目的とする DNA 配列を導入したことや、一部のアミノ酸配列を目的の配列に置換することに成功したという。

図1

図 本研究における遺伝子を自由自在に改変する仕組み

 同様の試みは、他の研究グループによっても行われていたが、研究チームでは、連続形質転換法という手法を用いることで、狙った遺伝子を改変する遺伝子ターゲッティングの効率を、5〜8%まで引き上げることに成功した。

 さらに今回の研究では遺伝子ターゲッティングを行う際、他の研究グループが使用していた選抜マーカーを用いないため、DNA の鋳型作成がより簡便となり、実験効率の上昇が期待される。

 この研究成果により、これまでよりも簡便に植物の遺伝子を自在に改変できるようになり、今後の植物の研究や農作物育種を大きく変える可能性がある。遺伝子機能の詳細な解析の成果を待つ必要があるが、理論上では、味が良く、害虫や冷害、干害に強い上に収穫量も多い農作物を創ることも可能となるという。

 ここ数年、中国からゲノム編集に関する画期的な成果が相次いで発表されているが、三木准教授のように中国で活躍する日本の研究者や、先日発表された東京大学と曁南大学の国際研究チームによる「植物共生微生物における新規ステロイド生合成経路の解明」のような日中共同研究プロジェクトなどについても、今後の動向が注目される。

掲載論文:

関連リンク:

関連記事: