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【20-018】新型コロナウイルスに関する診療マニュアル試行第7版について

JST北京事務所 2020年3月6日

 中国の国家衛生健康委員会は3月3日付で新型コロナウイルスに関する診療マニュアル試行第7版を発行し、3月4日にウェブサイトに掲載しました[1]

 発行直前の3月2日24時の段階で、香港、マカオ、台湾を除く31省・区・市の累計確定診断者数は80,151人、累計治癒・退院者数は、47,204人、累計死亡者は2,943人です。その時点で治療中の確定診断者数は、30,004人、感染が疑わしい疑似病例が587人です。確定診断者の密接接触者として観察してきた人数は累計664,899人で、なお観察中の人数は40,651人です。ちなみに3月2日の新規確定診断者は、31省・区・市で125人、うち湖北省が114人、さらにそのうち武漢市が111人です。武漢市を除けば、新規確定診断者数はゼロまたは一桁という状況になっています[2]

 施行第7版は、これまでの経験、治療実績を反映させたものとなっています。2月18日発行の試行第6版と比べ、次のような特徴があります。詳細については、原典を参照・確認してください。

○抗体の増加について検査する血清検査に関する記述を追加

・新型コロナウイルスに感染した場合、このウイルスに特異的なIgM抗体が、発症3~5日後に陽性になり、回復期はIgG抗体価が急性期より4倍以上高くなるとのことです。このことを活用した血清検査の結果で感染者の確定診断ができることとされました。また、疑似症例の患者を疑似症例の分類から除くための基準としても使われます。

・なお、検査には、このほか塩基配列のシーケンシングがありますが、NGS(次世代シーケンサー)の語が記載されました。

○児童や妊娠中の患者、重症および危険な状態の患者の治療に関してより具体的な記述を追加

・例えば、児童について、児童に多い症状や分類に関する指標、重症やより危険な状態に至る場合の早期警戒指標を成人と児童に分けて記述したことなどです。

○便や尿を介した感染経路への注意

・患者の便や尿から新型コロナウイルスが分離できることから、エアロゾル感染等について注意すべきことが記述されました。

○臓器の病理学的変化の章を追加

・肺と免疫システムへの影響が主な症状。肺のほか、患者の有する基礎疾患によっても異なる他の臓器への影響についても記述されました。

○退院後の注意事項

・少数の退院患者が、その後のウイルスの再検査で陽性となる問題に関連して、退院患者の健康管理と隔離を強化するため、「14日間の自身による健康状況モニタリング」を「14日間の隔離管理と健康状況モニタリングを継続」に変更しました。マスク装着、換気の良い一人部屋に居住し,家族との近距離での密接接触を減らし,食事は別にし,手の衛生に留意し,外出を避けること、退院後第2週・第4週に受診が勧められていることは、施行第6版と同様です。

 このほか、診療マニュアルには、漢方医薬も含め、薬品や治療法の用量・用法等が記載され、全体で22ページとなっています。

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[1] 国家卫生健康委办公厅 国家中医药管理局办公室《关于印发新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第七版)的通知
国家卫生健康委办公厅《新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第七版)
医政医管局《新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第七版)》解读

[2] 国家卫生健康委办公厅《截至3月2日24时新型冠状病毒肺炎疫情最新情况