教育・人材
トップ  > コラム&リポート 教育・人材 >  File No.24-24

【24-24】【最新2024年版】中国大学ランキングから見た中国の大学の現状

松田侑奈(JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー) 2024年12月19日

 世界大学ランキングにおける中国の大学の躍進により、中国国内の大学ランキングへの注目も高まっている。本稿では、中国大学のランキングの紹介、評価指標の解説とともに、近年の躍進の秘密等についても若干の分析を加えたい。

一、中国の大学ランキング2024

 まず、中国国内での大学ランキングの状況を紹介しよう。本稿では、中国の教育研究関係コンサルティング会社「上海軟科教育信息諮詢有限公司(以下軟科)」のデータを取り上げる。軟科は、2015年より毎年大学ランキングを公開しており、中国では、最も知名度の高いランキングの一つである。

表1 中国大学ランキング2024(上位30校)
出典:上海軟科
順位 大学名









学校

資源
教員

規模







社会への貢献度 ハイレベル人材 重大プロジェクトと成果



1 清華大学 992.6 36.1 76.1 50 54.2 324.2 104.9 46.3 88.4 120.4 92.1
2 北京大学 898.6 34.9 75.3 30.5 52.8 308.3 101.8 21.2 92.4 110.1 71.4
3 浙江大学 793.8 34.9 68.5 28.4 52.7 284.7 92.6 29.7 64.3 84.3 53.7
4 上海交通大学 776.3 35.6 62,3 26.4 52.8 267.2 106.5 32.7 64.6 88.7 39.6
5 復旦大学 697 36.6 63 21.3 51 252.6 79.3 26.9 62.6 59.7 44.1
6 南京大学 656.1 37.1 56 9.2 50 266.6 70.4 12.8 58.3 66.5 29.2
7 中国科学技術大学 578.4 40 42.3 13.3 50.7 224.9 65 11.2 51 35.7 44.2
8 華中科技大学 578 32.2 43.6 12.1 49.7 241.4 68 15.1 36.8 50.1 29
9 武漢大学 577.3 31.7 48.1 12.2 50.4 254.5 56.5 12.4 38.6 44.3 28.6
10 西安交通大学 566.4 34.6 39.8 11.7 50.4 257 57.6 21.9 28.7 38.9 25.8
11 中山大学 539.6 32 49.7 15.6 51.3 203 80.5 9.9 40.6 26.9 30.1
12 北京航空航天大学 537.2 33.1 36.1 14.9 48.2 227.5 53.5 14.1 30.4 58.6 20.8
13 東南大学 530.7 34.6 44.5 14.8 50.2 233.3 55.6 15.1 22.1 40.2 20.3
14 北京理工大学 530.2 33.6 32.8 14.3 48.2 220.6 53.4 23.6 27.5 47.1 29.2
15 四川大学 527.9 30 41.7 9.6 49.1 236.5 62.3 17.7 28.3 32.6 20.2
16 ハルビン工業大学 514.1 32.6 37.9 15.6 51.4 224 56.4 18.8 23.4 33.5 20.4
17 同済大学 509.6 35.2 39,3 10.4 46.5 221.5 57.4 12.8 31.7 37.2 17.5
18 中国人民大学 508,3 34.3 48.9 10.8 50.2 234.3 39.5 1.7 33.1 42.7 12.9
19 北京師範大学 501.4 32,1 46.4 15.1 50.5 217.9 46.1 3.5 29.8 29.9 30
20 天津大学 491.5 33.1 31.9 11.2 50.4 230.2 43.5 16.5 26.1 23.4 25.2
21 南開大学 481.8 31.8 33.3 7.9 49.1 229.6 44.8 4.8 29.3 28.6 22.6
22 山東大学 476.3 29.7 35.5 11.9 51.6 216.4 54.3 14.1 21.7 21.9 19.2
23 西北工業大学 459.9 33.4 24.5 12.6 50.2 209.3 51.8 10.8 16 25.5 25.9
24 アモイ大学 458.2 32.1 35.8 15.7 48.3 196.8 53.5 5.9 28 22.7 19.4
25 中南大学 456.1 30.6 33.7 10 46.4 196.1 54.6 13.6 19.9 27.1 24.2
26 吉林大学 443.7 30.5 38.4 9.2 50.7 209.1 44.3 5 17.7 20.7 18.2
27 中国農業大学 440.6 31.5 36.3 8.7 47.4 185.7 41.6 10.4 24.2 36.2 18.6
28 大連理工大学 435.7 31.3 28.1 9.1 48 196.6 40.2 12.5 17.1 36.2 16.5
29 華東師範大学 431.2 32.6 30.2 10.6 48 200.5 40.3 4.2 24.5 22.6 17.7
30 華南理工大学 430.6 30.4 29.7 9.8 44.5 195.8 42.2 19.9 19.1 16.6 22.5

 同ランキングでは「各指標を全面的に考慮し、分類して評価する」を原則に、下記図の10つの評価指標で、ランキングを出している。

 

図2 中国大学ランキングの評価指標

image
 

1.人材育成では、新入生の質、在学生による研究成果、優れたOB・OGの数、人材育成にふさわしい環境か否か、教育改革への取り組み、思想政治教育への念入り度、徳育教育への注力度等が評価事項となる。

2.科学研究では、科研費の金額、科学研究プラットフォームの構築と充実度、ファンディングプロジェクトの数と成果、科学研究に投入される人材の数等が評価項目となる。

3.社会への貢献度には、特許の数、成果転化による収入、企業から取ってきた科研費、社会サービス拠点(学校が学生の勉強や技術の取得のため校外に設置している、実際の職場をリアルに体験できる拠点)の数と充実度等が含まれる。

4.ハイレベル人材では、国際的に知名度の高い学者の数、有望な若手人材の数、実力の高い中堅人材の数、大学の学術権威等をもって評価する。

5.大学構成では、4年制学科(学部に相当)と2年生学科(短大に相当)の比、大学院と学部の構成比等で評価する。

6.学科レベルでは、双一流大学や学科の数と精度、優秀な学科の数や精度で評価する。

7.学校の資源では、大学の収入と大学への寄付金を基準とする。

8.教員の規模と質では、教員の数、教員と学生数の割合、教員の学歴構成、教員の肩書構成等をもって評価する。

9.重大プロジェクトと成果では、重大プロジェクトの数、教員一人当たりの重大プロジェクト担当数、受賞数(国家級)等で評価する。

10.国際競争力では、留学生の割合、国際共著論文数、Natureをはじめとする国際トップジャーナルへの論文投稿数と被引用数、高被引用論文著者の数、ノーベル賞等に準ずる国際的な賞の受賞者等をもって評価する。

二、中国大学の世界ランキングでの位置づけ

 続いて、世界ランキングにおける中国の大学の順位にも触れておく。下記表の通り、世界大学ランキングで、上位圏にランクインする中国の大学が増えてきている。評価の指標や重点を置く部分はランキングを出す機関や年度によって異なってくるが、例えば、THE世界大学ランキングの場合は、研究の質、特許、産業界への貢献度等に重みをおくようになってから、より多くの中国の大学が順位を上げてきた。

表3 世界大学ランキングでの中国の大学
出典:QS世界大学ランキング 2025THE世界大学ランキング2025U.S. News 世界大学ランキング2024-2025
QS世界大学
ランキング 2025
  THE世界大学ランキング2025   U.S. News 世界大学
ランキング2024-2025
順位 大学名 順位 大学名 順位 大学名
14 北京大学 12 清華大学 16 清華大学
20 清華大学 13 北京大学 31 北京大学
39 復旦大学 36 復旦大学 51 浙江大学
45 上海交通大学 47 浙江大学 54 上海交通大学
47 浙江大学 52 上海交通大学 69 中国科学院大学
133 中国科学技術大学 53 中国科学技術大学 82 中国科学技術大学
145 南京大学 65 南京大学 85 復旦大学
192 同済大学 134 武漢大学 98 南京大学
194 武漢大学 146 北京師範大学 100 華中科技大学
252 ハルビン工業大学 152 ハルビン工業大学 106 中山大学
269 天津大学 154 同済大学 108 武漢大学
271 北京師範大学 166 華中科技大学 119 湖南大学
284 南方科技大学 183 南方科技大学 153 同済大学
295 西安交通大学 201-251 北京理工大学、南開大学、四川大学、
中山大学、天津大学、西安交通大学
153 電子科技大学
300 華中科技大学 157 南方科技大学

三、中国の大学がランキングで躍進している理由

 中国の大学の躍進には、どのような理由があるのか。

 まずは、双一流大学づくりの政策の影響が大きいと考えられる。2017年に打ち出された「世界一流大学と一流学科建設を推進することに対する実施方法」を機に、中国は、世界でも知名度の高い大学や学科を作りあげることに注力し始めた。世界大学ランキングは知名度を図る最もわかりやすい指標であり、毎年どのような大学がランクインされたのかは、中国国内で大きく報道されるようになり、各大学ではランクインあるいは順位アップを目指すようになった。

 それから、研究資金の豊かさが挙げられる。周知の通り、中国の研究開発費は年々増加しており、遂に3兆元(約60兆円)を超えてきた。知名度の高い大学の場合、中央政府から研究資金のほか、地方政府や地元の企業等からも資金の獲得が可能であるため、研究開発に惜しみない投入ができ、研究力も大きく向上した。もちろん、「インプット=アウトプット」とは言えないが、アウトプットの増加に貢献したのは間違いない。研究資金や学術成果等は大学を評価する重要な指標の一つである。

 そして、大学の規模や人材プールでも強さがある。例えば北京大学の場合、55の学部(東大の約10倍以上)、9つの国家重点研究室、専任教員3804人(2023年基準)、在校生数4万6千人超えとなっている。北京大学に限らず、中国の大学には、膨大な学部の数だけに、多くの研究人材が在籍しており、毎年算出される論文の数も、圧倒的に多いのが現状である。人材の数や論文の数もランキングアップに貢献した要因と見られる。

 また、国際的知名度が上がってきたことも評価されている点にある。近年では北京大学や清華大学をはじめ、国際的に活躍しているOB・OGが増えてきており、中国大学の知名度アップに貢献している。また、国際協力を重視するようになった各大学では国際共同研究や共著論文等にも積極的に取り組み、研究レベルの向上を図っている。大学の知名度が高いほど就職率も高い傾向にあり、ランキングでも評価されている。

 最後は、あまりポジティブに捉えることができないが、学歴主義、就職競争、「内巻」現象の存在をあげたい。ポストの数が決まっている分、中国では想像を絶する就職競争が繰り広げられており、論文の数や被引用数を上げるための必死の工夫がなされている。このような競争構造は、成果算出を促す要因の一つとなっている。

 大学ランキングは各社がそれぞれ決まった指標で評価するものであり、これをもって大学の実力を図るには不十分である。中国ではいまだに人材育成に不利な「詰め込み教育(填鸭式教育)」が根強く実施されている。また、大学院への進学理由は「研究が好き、研究がしたいから」ではなく、就職で有利な「スペックを作るため」選ぶ学生が多い。現時点ではまだ、ノーベル賞等、国際的な賞の受賞者も他国に比べ少ないのも事実である。従って、大学ランキングでの躍進は十分評価できるものの、大学ランキングと総合的な実力は直結すると言い難く、多角度からの分析が必要である。

関連記事

中国の大学ランキング(2024年版)

 

上へ戻る