【08-002】中日・中韓論文共著状況の比較研究
王娜 潘雲濤 馬崢 武夷山(中国科学技術情報研究所) 2008年2月20日
要旨:本文は中国科学技術論文・引用文献データース(CSTPCD)、SCIデータベース、SSCIデータベースに基づき、科学計量学の方法を通じ、 中日、中韓及び中日韓の過去10年間の共著論文について数量、機関、学問分野別分布の面から定量分析を行い、科学技術分野における中日、中韓の協力の現状 を明らかにし、且つ将来の協力の動向を予測したものである。
キーワード:計量文献学、共著、比較、科学引用文献索引
A Comparative Study between Si no-Japan Co-authorship and Sino-Korea Co-authorship1 前書き
現在の時代は開放された世界である。開放と交流は国の発展と強大化にとって不可欠の役割を果たす。激しい国際競争を背景に、各国は科学技術協力を通じ、長 短相補い、自国の科学技術力を増強する目的を遂げようとしている。中国政府は一貫して国際科学技術協力・交流活動を非常に重視してきた。改革開放以降、中 国の国際科学技術協力は顕著な成果を収めた。特に第11期3中総会の後、国際科学技術協力は中国の対外開放の重要な構成部分となり、全面的な発展を得た。 中国の対外科学技術協力はある程度においてイデオロギーと社会制度の違いを乗り越えた。これまでに、中国は世界の150余カ国・地域と科学技術協力関係を 確立し、そのうち90余カ国と政府間の科学技術協力取り決めを結んだ。また、中国は1,000余りの国際科学技術協力機構に加入し、二国間から多国間、政 府から民間、中央から地方、企業から科学研究機関、大学に至る多ルート・多段階・全方位の対外科学技術協力の枠組みが徐々に形成されつつある[1]。
東アジア地域において、中日韓3カ国の重要性は言うまでもないことだ。現在、3カ国はいずれも世界の経済大国である。日本はアジア第一、世界第二の経済大 国であり、そのGDPは世界のGDPの12.3%、アジアのGDPの70%に相当し、外貨準備総額と海外純資産はそれぞれ世界の第1位と第2位を占め、貿 易総額は世界第3位を占める。韓国は新興の工業国だが、その経済力は既にアジア第3位、世界第11位を占め、1人当たりの生産額が1万米ドルに達し、 1996年にはOECDの新規加盟国となった。中国は台頭しつつある発展途上国であり、改革開放政策を実施した後、9%以上の年間経済成長率を維持してい る。その経済力はアジア第2位、世界第7位(香港を加えるなら、世界第5位)を占め、しかも今後20年間にわたり力強い成長が続くと見られる[1]。3カ 国の経済力の急速な伸びが科学技術協力・交流に巨大なポテンシャルを与え、また、良好な科学技術協力が経済協力と貿易を促進し、さらにはリードすることに なると言えよう。3カ国の貿易と科学技術交流は東アジア地域全体の繁栄を促す上で積極的な役割を持っている。本文は計量文献学の方法を用い、過去10年間 に中日、中韓及び中日韓が共同執筆した科学技術論文について統計分析を行い、中国と日韓両国との間の科学技術協力の具体的状況を別の視点から観察すること を試みたものである。
本文に用いられているデータは中国科学技術情報研究所の「中国科学技術論文・引用文献データベース」(CSTPCD)、トムソンサイエンティフィックの 「自然科学引用文献索引」(SCI)データベースと「社会科学引用文献索引」(SSCI)データベースから採ったものである。そのうちSCIとSSCIの データベースに関係する論文データは全てArticleタイプとなる。私達はこの3つのデータベースを拠り所に、中日、中韓及び中日韓の共著論文の数量、 関係機関及び学問分野について統計分析と比較を行った。著者の中にそれぞれ中日両国と中韓両国からの参加者がいる場合は、1編の両国共著論文としてカウン トした。これからわかるように、中日韓3カ国の共著論文は中日と中韓の共著論文の中に含まれる。
2 中日・中韓の科学技術協力の歴史的状況
早くも20世紀の60年代初めに、中日両国は民間の科学技術交流を開始した。それは当時、中国の技術者が世界の科学技術の発展状況を知る重要なチャネルの 1つであり、こうした状況は70年代まで続いた。1972年9月29日、中日両国は国交正常化を実現した。1978年、日本政府の中で発展途上国との科学 技術協力を担当する実施機関−−日本の国際協力事業団が中国と関係を結んだ。1979年、国務院の認可を得て、当時の国家科学技術委員会が日本外務省及び その管轄下にある国際協力事業団と技術協力関係を確立した。こうした協力は日本から中国側への技術移転を特徴とする「垂直式」の技術協力である。1980 年5月、中日両国政府は「中日科学技術協力協定」を締結し、両国政府間の共同研究を特徴とする「水平式」の科学技術協力が始まった。中日両国の科学技術交 流・協力は急速な発展を遂げ、規模が絶えず拡大され、多形式・多ルート・官民同時進行の局面が形作られ、中日友好関係の重要な一環となった[2]。
中韓両国の科学技術交流は1992年に始まった。当時、中国の宋健国務委員兼国家科学技術委員会主任と韓国の金鎮炫科学技術相がそれぞれ自国政府を代表 し、北京で「中韓政府間科学技術協力協定」に調印した。これは中韓の科学技術協力活動の全面的な展開を象徴するものである。2007年は中韓国交樹立16 周年に当たる。この16年の間に、両国の友好協力関係は各分野で急速な発展を遂げた。両国は科学技術、文化、教育、司法の各分野で、また、多くの地方政府 の間でも友好交流・協力関係が確立された。統計によれば、1992年の国交樹立当時、両国の人的交流は年間延べ13万人にすぎなかったが、2006年には 延べ500万人余りまで拡大され、39倍となった。現在、毎週780機余りの定期航空便が両国の間を往復し、1日当たり約1万2,000人の韓国人が中国 を訪れている。年間に中国を訪れる韓国人は延べ390万人に達し、中国は韓国にとって最大の海外観光目的地となった。双方は更に91組の友好省・市関係を 締結した。現在、中国では14万人の外国人留学生が学んでいるが、韓国からの留学生は全体の38%を占め、5万4,000人を数える。非正規のルートで語 学研修を受ける大学生、中高生及び小学生を加えるなら、その総数は6万〜7万人になると思われる。韓国で学ぶ中国人留学生は約2万4,000人おり、中韓 両国共に外国人留学生の数で第1位となる[3]。
3 中日・中韓共著論文の統計結果分析
科学技術協力強化の端的な表れは共著論文が増えたことである。本文は共著論文数の変化を主に分析した。
1) 共著論文の総数とその割合
年度 | 中日共著論文数(編) | 中韓共著論文数(編) |
1993 | 278 | 0 |
1994 | 346 | 0 |
1995 | 369 | 0 |
1996 | 396 | 7 |
1997 | 449 | 11 |
1998 | 548 | 32 |
1999 | 646 | 59 |
2000 | 566 | 64 |
2001 | 652 | 63 |
2002 | 840 | 82 |
2003 | 824 | 123 |
2004 | 825 | 109 |
2005 | 939 | 124 |
1993年から2005年までの13年間にCSTPCDに収録された中日共著論文は計5,292編、中韓共著論文は計624編となる。図1から分 るように、全体として、中国と日韓両国の共著論文は持続的に増える傾向を示している。中日共著論文数は中韓共著論文数より多く、論文の年間増加数が大き く、2005年には939編の共著論文が発表された。このことは、目下のところ、日本が中国の対外科学技術協力の主要な対象国であることを示している。し かし、中韓関係の緊密化に伴い、両国の科学技術交流が日増しに活発になり、今後、中韓両国の共著論文が増え続けることは間違いない。
年度 | 中日共著論文 | 中韓共著論文 | 中日韓共著論文 | |||
論文数(編) | 対1995年比 伸び率(%) |
論文数(編) | 対1995年比伸び率(%) | 論文数(編) | 対1995年比伸び率(%) この欄のデータは誤りであり、対1995年比伸び率は前年との比較ではない |
|
2006 | 2380 | 497.99 | 713 | 863.51 | 92 | -23.14 |
2005 | 2352 | 491.21 | 688 | 829.73 | 121 | 12.04 |
2004 | 2165 | 443.97 | 585 | 690.54 | 108 | 54.29 |
2003 | 1836 | 361.31 | 434 | 486.49 | 70 | 0.00 |
2002 | 1615 | 305.78 | 366 | 394.59 | 70 | 66.67 |
2001 | 1416 | 255.78 | 292 | 294.59 | 42 | 200.00 |
2000 | 1132 | 184.42 | 227 | 206.76 | 14 | -22.22 |
1999 | 981 | 146.48 | 181 | 144.59 | 18 | 38.46 |
1998 | 772 | 93.97 | 171 | 131.08 | 13 | -13.33 |
1997 | 708 | 77.89 | 144 | 94.59 | 15 | 87.50 |
1996 | 503 | 26.38 | 110 | 48.65 | 8 | 0.00 |
1995 | 398 | 74 | 8 |
1995年から2006年までの12年間に、SCIに収録された中日・中韓・中日韓共著の科学技術論文は持続的に増えている。2006年、SCI 収録の中日共著論文は2,380編に達し、1995年の約6倍となった。これは科学技術分野における中日両国の協力が著しい進展を遂げたことを物語ってい る。2005年の中日共著論文数は中米共著論文数に次ぐ世界第2位となり、日本が中国の科学技術協力の重要なパートナーであることがわかる。一方、中韓両 国の共著論文も着実に増加し、1992年の中韓科学技術協力協定締結以降、両国の科学技術交流は日増しに活発になっている。韓国と各国の共著論文数のラン キングを見ると、韓中の共著論文は1994〜1996年の第10位から1998〜2000年の第4位へと躍進し、米国、日本、ドイツに次ぐものとなった[4]。
図2がはっきりと示すように、中日共著論文の年間増加数は中韓共著論文を上回る。早くも1980年5月、中日両国政府は「中日科学技術協力協定」を締結 し、20年余りの共同努力の末、双方の多くの大学及び科学研究機関の間で長期の協力パートナーシップが結ばれ、協力の分野と規模が拡大を続けている。協力 メカニズムが日増しに成熟し、協力範囲も次第に広がっており、その結果、中日共著論文の数は安定した大幅な伸びを見せた。しかし注意すべきことは、中韓共 著論文数が中日共著論文に及ばないとはいえ、分析を深める必要があることだ。このため、私達は1995年を基準年として、中日・中韓共著論文数の対 1995年比伸び率を計算した。図3が示す通り、中韓共著論文数の伸び率曲線は終始、中日の伸び率曲線の上方にある。これは中韓の共著論文数の伸びが中日 のそれを上回ることを物語っている。2006年は、中韓の正式な科学技術協力がスタートしてから15年目に当たり、両国の共著論文は1995年の74編か ら2006年の714編へと約10倍の伸びを示した。これからわかるように、中韓協力の伸びは実際には高いのである。協力の歴史と規模の制限により、現 在、中韓科学技術協力の影響力は中日の協力に遠く及ばないが、中韓協力の巨大なポテンシャルを見てとるべきであり、将来、韓国が中国の対外協力の一層重要 なパートナーになることは間違いない。
3国間の協力関係をより全面的に理解するため、筆者が更にSCI収録の中日韓共著科学技術論文について統計をとった。3国間共著論文は全体として 伸び続ける傾向が示され、2005年にピークが現れている。2004年、第2回中日韓科学技術協力局長会議が東京で開催され、3カ国の会議代表は政府間の 効果的な対話を続け、科学技術情報を交換し、科学技術協力を強化することで合意した。今回の会議の精神が実行に移されていけば、中日韓3国間の科学技術協 力は新たな段階に踏み出すことになろう。
年度 | 中日共著論文 | 中韓共著論文 | 中日韓共著論文 | |||
論文数(編) | 占める割合(%) | 論文数(編) | 占める割合(%) | 論文数(編) | 占める割合(%) | |
2006 | 28 | 18.54 | 19 | 25.00 | 1 | 9.09 |
2005 | 26 | 17.22 | 13 | 17.11 | 2 | 18.18 |
2004 | 26 | 17.22 | 18 | 23.68 | 7 | 63.64 |
2003 | 16 | 10.60 | 4 | 5.26 | 0.00 | |
2002 | 17 | 11.26 | 6 | 7.89 | 0.00 | |
2001 | 16 | 10.60 | 10 | 13.16 | 1 | 9.09 |
2000 | 20 | 13.25 | 4 | 5.26 |
図4から分るように、社会科学研究分野における中国と日韓両国の協力はまだ発展途上の段階にあり、論文の数も多くないが、全体として上昇傾向にあ る。総じて言えば、社会科学分野の国際協力は、目下のところ中国の国際科学協力の重点ではなく、これが共著論文の数に影響を与えるのは当然のことだ。中日 韓三者共著論文の数が非常に少ないということは、社会科学分野での3国間協力を強化する余地があることを物語っている。また、SSCIデータベースにある 幾つかの年度のデータにシステム・エラーが生じていることもあったようで、こうしたデータに基づき、むやみに判断すべきでない。
2) 共著論文の学問分野別分布の状況
No. | 中日 | 中韓 | ||||
学問分野名 | 論文数(編) | 占める 割合(%) |
学問分野名 | 論文数(編) | 占める 割合(%) |
|
1 | 物理学 | 4457 | 27.41 | 物理学 | 1587 | 39.82 |
2 | 化学 | 2891 | 17.78 | 化学 | 624 | 15.66 |
3 | 生物学 | 2472 | 15.20 | 材料科学 | 580 | 14.55 |
4 | 材料科学 | 2217 | 13.64 | 生物学 | 463 | 11.62 |
5 | 臨床医学 | 1376 | 8.46 | 数学 | 435 | 10.92 |
6 | 基礎医学 | 1141 | 7.02 | 臨床医学 | 252 | 6.32 |
7 | 薬学 | 1094 | 6.73 | 機械・計器 | 233 | 5.85 |
8 | 地学 | 990 | 6.09 | 化学工学 | 224 | 5.62 |
9 | 化学工学 | 955 | 5.87 | 電子・通信・ 自動制御 |
197 | 4.94 |
10 | 核科学技術 | 872 | 5.36 | 地学 | 182 | 4.57 |
上記の図表から分るように、全体として中国と日韓両国は多くの分野で科学技術協力を繰り広げている。協力分野は基礎科学、材料科学、バイオ、医 学、工学、環境科学、情報科学等に及ぶ。そのうち中日協力のベスト5にランクされる学問分野は物理学、化学、生物学、材料科学、臨床医学である。ベスト 10の学問分野では、生命科学領域の臨床医学、基礎医学、薬学、生物学の4分野が含まれており、占める割合は37.41%に達し、物理学の27.41%を 上回り、科学技術協力の最も際立った分野となっている。中韓協力のベスト5にランクされる学問分野は物理学、化学、材料科学、生物学、数学である。そのう ちベスト4に入る学問分野は中日協力のそれと全く同じであり、中国と日韓両国の協力がこれらの分野で非常に活発であることを物語っている。
中国と日韓両国の科学技術協力は範囲が広く、基礎科学、医学、材料学等の伝統的な主要協力分野を除く他の分野でも緊密な協力関係がある。例えば、過去 20年余りにわたり、中日双方は核科学の分野で多くの協力を繰り広げ、幾つかの協力活動はシリーズ化されている。3年毎に開催される中日核科学シンポジウ ムは既に5回を数え、また、2年毎に開かれる大学院生夏期学校は既に4回を数える。中国と韓国の協力は電子、機械の分野でも非常に活発である。近年、韓国 では電子産業が急速な発展を遂げ、電子素子・装置、通信機器、電子消費財、事務機器の生産と販売は既に世界の上位にランクされる。中国は韓国のこうした優 位性を見極め、科学技術分野の研究開発協力を積極的に進めており、かなりの効果を収めた。2005年7月、韓国のノ・ムヒョン大統領が訪中した時、双方は これまでの協力を踏まえ、未来に目を向け、中韓の全面的な協力パートナーシップを確立することで合意した。双方はまた新しい世代の情報通信技術、バイオテ クノロジー、新素材等のハイテク分野における共同研究と産業化協力を強化することに同意した。
3) 共著機関の状況
No. | 中国側機関の名称 | 論文数(編) | 日本側機関の名称 | 論文数(編) |
1 | 中国科学院 | 3556 | 東京大学 | 1437 |
2 | 北京大学 | 753 | 東北大学 | 1272 |
3 | 清華大学 | 669 | 京都大学 | 987 |
4 | 浙江大学 | 524 | 大阪大学 | 965 |
5 | 中国科学技術大学 | 452 | 名古屋大学 | 686 |
6 | 上海交通大学 | 432 | 東京工業大学 | 611 |
7 | 南京大学 | 428 | 九州大学 | 476 |
8 | 吉林大学 | 388 | 北海道大学 | 461 |
9 | 復旦大学 | 377 | 千葉大学 | 358 |
10 | ハルビン工業大学 | 261 | 理化学研究所 | 351 |
No. | 中国側機関の名称 | 論文数(編) | 韓国側機関の名称 | 論文数(編) |
1 | 中国科学院 | 1174 | 国立ソウル大学 | 610 |
2 | 中国科学技術大学 | 422 | 延世大学 | 449 |
3 | 北京大学 | 283 | 韓国大学 | 407 |
4 | 清華大学 | 169 | 慶北大学 | 339 |
5 | 浙江大学 | 102 | 成均館大学 | 291 |
表5と表6から分るように、SCIに収録された中日・中韓共著論文の参加機関はいずれもその国の有名な大学及び科学研究機関である。中国と日本の 科学技術協力でベスト3にランクされる機関は中国科学院、北京大学、清華大学である。しかも中国科学院は3,556編という圧倒的優位を占め、両国の全て の機関の中でトップに立つ。このことから、中国科学院は中日科学技術協力の中で非常に重要な役割を果たしていることが分る。ベスト10に入る機関の内訳は 科学研究機関が1つ、工科系大学が4つ、総合大学が5つとなる。日本側のベスト3に入る機関は東京大学、東北大学、京都大学である。一方、中韓協力でベス ト3にランクされる中国側機関は中国科学院、中国科学技術大学、北京大学となる。韓国側の主要参加機関のベスト3は国立ソウル大学、延世大学、韓国大学で ある。
No. | 中国側機関の名称 | 論文数(編) | 日本側機関の名称 | 論文数(編) |
1 | 香港大学 | 22 | 東京大学 | 24 |
2 | 中国科学院 | 21 | 神戸大学 | 9 |
3 | 香港城市大学 | 13 | 筑波大学 | 8 |
4 | 北京大学 | 12 | 京都大学 | 5 |
5 | 香港理工大学 | 7 | 広島大学 | 3 |
No. | 中国側機関の名称 | 論文数(編) | 韓国側機関の名称 | 論文数(編) |
1 | 香港科技大学 | 11 | 国立ソウル大学 | 15 |
2 | 香港城市大学 | 8 | 韓国大学 | 9 |
3 | 香港大学 | 8 | 漢陽大学 | 6 |
4 | 香港理工大学 | 6 | 延世大学 | 6 |
5 | 北京大学 | 6 | 成均館大学 | 4 |
社会科学分野の中日共著論文数でベスト3に入る中国側機関は香港大学、中国科学院、香港城市大学となる。日本の対中科学技術協力の参加機関でベス ト3に入るのは東京大学、神戸大学、筑波大学となる。また、韓国の対中科学技術協力でベスト3に入る機関は国立ソウル大学、韓国大学、漢陽大学となっている。
全体的に言えば、中国と日韓両国の社会科学分野における共同研究は自然科学・工学分野のような広がりと深まりが見られず、論文数は同時期のSCI収録論 文数より明らかに少ない。このため、私達は今後、社会科学分野の対外協力を強化すべきである。次に、中国側機関の中では、中国科学院が圧倒的な優位を占め るのを除けば、香港の大学数校が日本及び韓国との社会科学研究協力で異彩を放つことに私達は注目した。香港は狭い土地だが、科学研究分野における水準が非 常に高く、交流にも力を入れている。香港の国際都市としての背景及び発達した経済はその対外交流に極めて有利な条件を与えた。香港はかつて大陸の対外経 済・貿易の窓口となっていたが、現在では大陸の社会科学分野における対外交流の重要な窓口となったようだ。
4 結論
上記の研究から私達は以下の結論を得ることができる。
- 1980年の中日科学技術協力協定締結以降、両国の科学技術協力は非常に大きな発展を遂げた。最初の民間交流から政府がリードする形の交流に発展し、双方 の交流機関による協力関係が正式に結ばれてからは、交流と協力の規模は絶えず拡大してきた。これは2006年度のSCI収録の中日共著論文数が2,380 編に達していることにも端的に現れている。日本は米国に次いで2番目に大きな中国の対外科学技術共著パートナー国となっている。
- 韓国と中国の国交樹立は比較的遅かったが、近年の急速な発展と双方の不断の努力により、科学技術分野における中韓の協力も緊密化しつつある。規模 の面でも範囲の面でも中韓協力はまだ中日協力に及ばないが、協力の伸び率が高く、将来韓国が中国の科学技術協力の主要対象国の1つになることは間違いな い。
- SCIデータによれば、物理学、化学、生物学、材料科学、医学は中日・中韓協力の重点分野である。この他、中国と日本は核科学技術分野での協力が比較的多く、一方、韓国とは電子・機械分野での協力が活発である。
- 協力の頻度が高い双方の参加機関はいずれもトップクラスの大学及び科学研究院・研究所である。ハイレベルの交流と協力は双方の科学技術水準の効果 的な向上を促すのに有利である。中国科学院、清華大学、北京大学及び中国科学技術大学は対外協力の花形となっている。指摘すべきことは、香港の大学数校が 社会科学分野の研究協力で際立った能力を見せつけていることである。
- 東アジア地域の経済一体化という大きな動きを前に、私達は、中国と日韓両国は既に相互補完的な発展関係を形成した最良のパートナーとなっているこ とを知るべきである。時がたつに連れて、3国間の交流・協力の重要性と必要性が日増しにはっきりと現れるだろう。日本は多くの科学分野で大きくリードして おり、韓国は大いに頑張って新興の技術強国となったが、中国は基礎科学の研究分野で一定の優位を占めている。中日韓3カ国がそれぞれの強力なパワーを結集 し、共に直面する科学技術問題を解決していけば、東アジアひいては世界全体の科学技術の発展を促す大きな原動力となるに違いない。
[1] 趙剛、礼俊。中日韓科学技術協力についての戦略的思考[J]。中国科学技術フォーラム、2006(2).29-31
[2] http://www.fmprc.gov.cn/ce/cejp/chn/jykj/www20/t173774.htm
[3] 王生。中韓国交樹立15年:外交史上の奇跡及び平和共存の手本[J]。北東アジアフォーラム、2007(4).
[4] Mee-Jean Kim。韓国の科学及びその国際協力(1995-2000年)[J]。管理科学学報−科学計量学特集号、2007(1).70-72
本論文は、国家自然科学基金(70673019)及び国家支援計画の資金助成を受けている。
第一著者:王娜
1983年山西省生まれる。中国科学技術情報研究所大学院院生。
研究分野:科学計量学。