【25-056】仮想発電所、「見える化」から「有効活用」段階へ(その1)
韓 栄(科技日報記者) 2025年06月23日
第13回エネルギー貯蔵国際サミット・展示会で、仮想発電所の管理システムを見学する来場者。(杜建坡/視覚中国)
中国国家発展・改革委員会と国家エネルギー局はこのほど、「仮想発電所の発展を加速させるための指導意見」(以下「意見」)を発表した。これは中国で初めて、仮想発電所(VPP)を対象とした国家レベルの政策文書となった。
中国各地の地方政府と関連企業は近年、VPPの建設を積極的に模索しており、広東省や山東省、山西省などでは比較的早期からVPPの発展がみられる。しかし、中国全体で見ると、VPPの建設はまだ初期段階にあり、VPPの定義や機能の位置付けに関する共通認識が形成されておらず、発展に対応する管理体制や市場メカニズム、標準体系なども依然として未整備の部分が多い。
複数の専門家は科技日報の取材に対し、「意見」はVPPの規範化、大規模化、市場化、常態化を体系的に推進する上で重要な指針となるもので、中国における統一電力市場の構築、新型電力システムの建設、エネルギー・電力のクリーン・低炭素化を後押しするとの見方を示している。
発電所や発電機を持たずに電力供給が可能なVPP
発電所を建設する必要はなく、煙を排出することもない。それでも多様な分散型リソースを集約し、電力システムの最適化や電力市場での取引に協調して参加できる。それがVPPである。VPPは、スマート配電ネットワークを実現するための重要技術の一つで、新型電力システムや電力市場の構築において重要な役割を果たしている。
山西大学電力・建築学院電力工程系の閆来清主任は、「VPPは従来の発電所と同様にピーク調整や周波数調整といった機能を備えているが、物理的な発電機を持たない。本質的には、統合と調整を担うプラットフォームである。高度な情報通信技術とスマート制御技術を用いて、分散している可制御負荷、分散型エネルギー源、エネルギー貯蔵設備などの資源を一つにまとめ、全体を統一的に調整・最適化して運営する仕組みだ」と説明した。
国網山西省電力公司マーケティングサービスセンターの王薇蓉氏は「VPPは、新型電力システムの構築過程で生まれた新たな業態だ。近年、新型電力システムの整備が加速し、大量の新エネルギーが系統接続される中、送電網の調節ニーズは短期的な変動が大きく、変化の幅も大きくなっており、システムのバランスや安全性に関する問題が際立つようになっている。VPPは需要側に存在する柔軟に調節できるリソースを効果的に掘り起こすことで、システムの調節能力を高め、電力供給の安定性を強化し、新エネルギーの消費促進やシステムのリアルタイムバランスの維持に寄与できる」と述べた。
そして、「VPPはシステムの柔軟性を高め、ユーザー側の応答能力を強化するだけでなく、さまざまな主体が電力市場に参入するための道も開く」と強調した。
閆氏は「VPPが大規模に導入されるようになると、一般家庭の電気料金が低下する可能性があり、電力の信頼性も大幅に向上するだろう。加えて、一般家庭も気軽にグリーンエネルギーの生産に参加できるようになり、例えば、自宅のソーラーパネルを送電網に接続して電力を販売することが可能になる。これにより、エネルギーシステム全体が、より効率的でスマートな低炭素型構造へと転換していくと期待される」と述べた。
建設はまだ初期段階
新型電力システムと電力市場の構築が加速する中で、VPPの発展条件がますます整備され、その役割も顕著となり、需要も高まりつつある。
関連する支援策も次々と打ち出されている。「新型電力システムの構築加速に向けた行動計画(2024--27年)」は、電力供給の安定確保や再生可能エネルギーの発展といったニーズに対応し、地域の電源・負荷・貯蔵リソースを活用して複数のVPPを構築するよう提起している。また、「2025年エネルギー事業指導意見」も、新型エネルギー貯蔵やVPPの幅広い参加に対応した市場メカニズムの構築を求めている。
中国の各地では、VPPが次々と実用化されている。2021年には広東省深圳市のVPP調整制御管理クラウドプラットフォームが稼働。2022年には、同市にVPP管理センターが設立された。2024年6月には、山東電力取引センターが公告を発表し、仮想発電所の第1陣として8社が登録を完了したと明らかにした。これらの企業は、山東省の電力市場取引に参加することが可能となっている。
(その2 へつづく)
※本稿は、科技日報「虚拟电厂:从"看得见"走向"用得好"」(2025年4月29日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。
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