特集巻頭言:食糧の持続的生産に関する研究
中国科学技術月報2009年5月号(第32号) 2009.6.1発行
はじめに
人間の生命と幸福な生活を維持してために、食料は一日も欠かせないものです。しかし急増する世界人口や環境破壊によって優良な耕作地は減少を続けています。ま た近年世界各地で頻発する天候不順や大規模な自然災害などによっても食料の供給は脅かされています。特に、改革開放による経済成長とそれに伴う都市化の進展が著しい中国においては、食料需要、と くに肉類の消費が増大したため、それに伴って飼料用穀物の消費量も大幅に上昇し、改革開放以前の穀物輸出国から輸入国へ転じつつあります。こ れによって中国が世界全体の穀物需要を左右する可能性についてもすでに広く知られている通りです。
日本の場合、平成19年度の食料自給率は、カロリーベースは前年度から1ポイント増加し40%、生産額ベースは前年度から2ポイント低下し66%(農林水産省HP/「日本の食料自給率」より)と、依 然として低い食料自給率のままで推移しており、ここにいわゆる「食の安全問題」も重ねられてさまざまな議論の対象となっています。
今回は、こうした状況を鑑みて、東アジアの食料問題の要である中国と日本の「食料の持続的生産」について特集を組みました。中国、そして日本の第一線の論者によって、食 料をめぐる諸問題が最新の情報に基づいて多角的に検討されております。このたびの特集が読者の皆様にとって幅の広い興味と関心を呼びましたら誠に幸いです。
中国総合研究センター