2025年10月27日-10月31日
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「AI+自動車」で広がる新たな産業構造

2025年10月27日

 自動車産業は、人工知能(AI)技術による深い変革の最中にある。中国北京市で16~18日に開催された「2025世界ICV(インテリジェント・コネクテッド・ビークル)大会」では、「AI+自動車」の潮流が急速に進み、業界構造が再編されつつあることが示された。中国新聞網が伝えた。

 ハードウェア主導からソフトウェアによる定義へと、自動車のバリューチェーンは変化しつつある。中国第一汽車集団の劉亦功董事兼総経理によると、大規模AIモデルの登場により「ソフトウェアが自動車の価値を定義する」傾向が顕著になっており、サブスクリプションサービスやデータ活用、パーソナライズドサービスなどが自動車製品の新たな価値の源となりつつある。2030年には自動車製品の価値構成が「ハード40%、ソフト40%、コンテンツサービス20%」という比率になるという。

 賽力斯集団の張興海董事長によると、自動車産業はAIの高度実装を模索する時代へと急速に突入しつつあり、「AI+自動車」から「移動するAI」への進化が加速している。AIによる能動的な安全システムは「見えない守護者」のように働き、従来型車両が抱える安全上の課題を効果的に解決しているという。

 中国移動(チャイナモバイル)の楊傑董事長によると、AI技術がICVの技術構造を「各車両の自律的AI」から「車両群の協調的AI」へと進化させつつある。エンボディドAIや世界モデルなど先端分野でブレイクスルーが進む中、AIは人・車・道路といった要素のリアルタイムかつ正確な反映を実現し、現実世界を1対1で再現した鏡像世界を構築できるようになる。このデジタル空間では、インテリジェント運転システムが膨大なシミュレーション環境で訓練・学習を行えるだけでなく、天候・道路状況・エネルギー消費など各種情報を総合して全体を最適化することもできる。

「車・道路・クラウド」の一体化は、インテリジェント・ビークル発展の新たな段階となる。中国の業界が実施しているICVの「車・道路・クラウド一体化」応用実証プロジェクトでは、従来の各車両の自律的AIシステムに「デジタル軌道」を加え、自動運転大規模AIモデルの開発・訓練・評価のために、高効率かつ信頼性の高いデータセットを構築している。

 中国長安汽車の朱華栄董事長は、2030年までに自動運転はレベル2(運転支援)が標準装備となり、レベル3以上の搭載率は10%を超え、レベル4も段階的に普及していくと予測している。

 中国企業の国際的プレゼンスも高まっている。Momentaの曹旭東最高経営責任者(CEO)によると、近年、中国車の電動化・スマート化の進歩は目覚ましく、製品・ソリューション・サービスの各段階で海外展開が加速しており、AI自動車の海外進出は必然的な流れになっているという。

 現在、中国では、政策面の支援体制も整備が進んでいる。工業・情報化部(省)装備工業一司(局)の郭守剛副司長によると、政府は政策・標準の両面で一連の支援策を打ち出し、産業発展に一定の成果を上げてきた。今後はトップレベル設計の強化、実証実験の推進、標準化と協調メカニズムの整備を継続する方針だという。

 工業・情報化部の苗圩元部長は「スマート化の波が世界の自動車産業の競争構造を再編しており、AIはすでに『錦上に花を添える』技術上の選択肢から、企業の生存と発展に関わる中核的要素へと変化した。中国の自動車産業は優位性を生かしつつ、安全を確保したうえでAIの実装を着実に進め、運転支援から自動運転への応用領域を広げ、安定的に商業価値を発揮していくべきだ」と述べた。

(画像提供:人民網)

 
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