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1.2 ライフサイエンス分野の現状および動向

(1) ゲノム・機能分子

1)ゲノミクス

 中国は1998年に北京と上海にそれぞれ国家ヒトゲノム研究センターを設置し、翌年には国際プロジェクトである「ヒトゲノム計画」に正式に参加した。この計画の中で中国は1%のゲノム、すなわち第3番染色体短腕上の3000万塩基対の解読を担当した。中国の研究者は2000年4月末、マップ作成を完了させている。

 中国は遺伝子多型の研究に関して、「中華民族ゲノム若干遺伝子座研究」プロジェクトを重点プロジェクトと定めて実施し、4年間の研究を通じて初期の目標をほぼ達成した。既に少数民族と漢族の不死化細胞株を約30樹立している。

 「ヒトゲノム計画」において北京区域のSNP座を8000個ほど鑑定しており、さらに「炎黄一号プロジェクト」では、全ゲノム比較法によりSNP座を約1万3000個スクリーニングし、1177億の塩基対を測定してdbSNPバンクへ提出した。「炎黄一号プロジェクト」の有効カバー率は99.7%,変異検査測定精度は99.9%以上である。科学雑誌「Nature」の2007年11月号のトップ記事として「炎黄一号プロジェクト」が特集された。

 また、中国人ゲノム一塩基多型(SNP)のハプマップ作成および開発応用を通じて、ヒト21番染色体上の127個の既知遺伝子に対して大規模なSNPスクリーニング研究を行い、系統的な中国人SNPタイプと頻度を取得している。

 これらの結果と中国3番染色体SNP関連研究の成果から、中国人のSNP/ハプロタイプの特徴が大まかにまとめられ、中国人の代表的なSNPデータベースが構築されている。現在、さらに中国人のゲノムハプマップが作成されている。

 中国は、微生物ゲノムの研究においても顕著な成果をあげており、多種の微生物の全ゲノム配列測定作業を完了している。例えば、予防医学科学院ウイルス研究所によるワクシニア中国ビタミンC核心菌株のKV菌を生産するゲノム全配列測定、国家海洋局第三海洋研究所等による中国エビ白斑桿状ウイルス・ゲノム全配列測定、衛生部ゲノムセンターによる2A赤痢菌全配列測定、国家人類ゲノム南方研究センター等によるレプトスピラと表皮ブドウ球菌全配列測定、国家人類ゲノム南方センターによるキサントモナス・ゲノム全配列測定などがあり、これらは世界で報道された全ゲノム解読完了プロジェクトの約10%を占めている。

2)機能ゲノム

 中国の機能ゲノム研究は、スタートは遅かったが研究の進展は速く、一連の重要な研究で成果をあげている。主な研究は、①ヒトゲノムのクローン鑑定(新遺伝子と重大疾病関連遺伝子)②コメなどの植物およびその他生物の新遺伝子の発見③微生物新遺伝子――である。

① ヒトゲノムのクローン鑑定

 1997年以降、新EST(Expressed Sequence Tag)、新全長cDNA(相補的DNA)、新遺伝子を発見する能力が大幅に向上した。完全な統計ではないが、中国は現在、既に数十万本のESTの初期分離を完成し、ヒトゲノムの全長cDNAクローン数千本を完成し、数百件の新遺伝子に関する特許を申請している。

 重大疾病関連の遺伝子資源の収集では、科学技術部と衛生部の支持の下、長沙、上海、北京を中心とする20数ヵ所の医学センターによる遺伝子資源収集ネットワークと資源情報データベース管理システムが構築されている。

 また、一般的な重要疾病に対し、大規模な現場調査とサンプリングが実施された。この中には、悪性腫瘍(肝臓癌、食道癌、鼻咽頭癌、胃癌)、特発性高血圧、糖尿病、精神疾病、神経系遺伝病とその他遺伝病の重要家系同胞対および各種組織のDNAサンプルが含まれている。

 現在、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、肝臓癌および白血病等の悪性腫瘍の家系同胞対は500個ほど、組織サンプルは約5000個が収集・保存されている。精神病、心血管病、糖尿病等の複雑疾病の同胞対は約1500個が収集されている。

 これ以外にも、全身性エリテマトーデス、乾癬、網膜色素変性症などの一般疾病と希少遺伝性疾病のサンプルを含め、家系同胞対3000個以上、DNA(不死化細胞株を含む)サンプル1万8000個以上が収集されている。

② 水稲などの重要経済植物に対する機能遺伝子クローンと機能ゲノム科学研究

 これまでに水稲分蘖に関わる遺伝子MOC1と脆弱性遺伝子BC1の分離に成功し、1万5000個の水稲EST配列を含んだcDNAチップが構築された。多種成長発育時期と環境応答分野の遺伝子発現プロファイルを作製し、イネ白葉枯病菌遺伝子、いもち病抵抗遺伝子、広親和性遺伝子など、一連の水稲重要機能候補遺伝子のクローンが作成された。また、T-DNA挿入技術によって、独立転換水稲より組成された突然変異体ベースと大量のESTなど1万個以上が構築され、水稲染色体動原体の配列が完全に測定されている。

③ 微生物機能遺伝子研究

 

 レプトスピラを維持する遺伝子が4700個程度はじめて識別され、このうち新遺伝子は95%であった。また、病原性遺伝子が30個程度、ワクチン開発用潜在新標的物質10個程度の鑑定が行われている。

 植物グラム陰性細菌全遺伝子配列の測定にあたり、当該菌種のゲノムが511.9497万塩基対より組成したことを明らかにした。予測される含有遺伝子約4600個、獲得された遺伝子突然変異体約2500個、スクリーニングされた非病原性突然変異体170個、キサンタンガム突然変異体147個、鑑定した病原関連遺伝子は50個である。

3)プロテオミクス

 中国科学院生物化学研究所、軍事医学科学院、復旦大学北京師範大学等は、国の支持の下、プロテオミクス(総合的タンパク質科学)の研究を開始し、2次元電気泳動プロテオミクス分離技術、画像解析技術、蛋白質鑑定質量分光法を開発した。蛋白質のクロマトグラム/電気泳動2次元分離、2次元チップ電気泳動分離質量分光オンライン鑑定などの分野でも、重要な進展が得られている。

 中国のプロテオミクス研究はスタートしたばかりであるが、肝臓癌などの重大疾病、レチノイン酸による白血病細胞アポトーシス誘導モデルとレチノイン酸による胚神経幹細胞分化誘導モデルなどの比較プロテオミクス研究、重要な生理・病理システム・プロテオミクス成分研究の方面で、重要な成果を上げている。

 現在、軍事医学科学院が中心となった「国家重点基礎研究発展計画」(「973計画」)プロジェクトと上海生命科学院が中心となった「国家ハイテク研究開発発展計画」(「863計画」)プロジェクトでは、人々の健康に深刻な影響を及ぼす重大疾病と重要生命科学問題に対して、「重大疾病の比較プロテオミクス研究」と「重要生理・病理システムの機能プロテオミクス研究」が実施されている。

 中国では、復旦大学蛋白質研究センター、軍事医学科学院プロテオミクスセンター、高等学校プロテオミクス研究院、中国科学院プロテオミクス重点実験室、中国医学科学院プロテオミクス研究センターなどのプロテオミクス研究センターあるいは重点実験室が相次いで設立されている。

 このうち、高等学校プロテオミクス研究院は、国内の多数の大学や臨床部門、国内外の関連企業によって共同で設立された研究機構であり、大学という枠組みを越えて、国内外の関係機関と協力してプロテオミクス研究へ参入するための新たな基盤となっている。なお、2003年10月には中国人類プロテオミクス組織(ChineseHUPO)とプロテオミクス専門委員会が正式に設立されている。

 2004年3月号の「Nature」に、中国科学院生物物理研究所と植物研究所が行った「ホウレンソウ主要捕光複合物の晶体構造」の研究成果が発表された。それによると、中国は純粋な光合成のための膜蛋白質を作り出すことに成功するとともに、この複合体の3次元構造の測定を世界で初めて成功した。この成果は、「2004年 国家10大科学技術進展ニュース」の一つに選ばれている。

4)構造ゲノム科学

 構造ゲノム科学の根幹をなす中国の構造生物学研究の基盤は比較的良好で、1960年代には世界初の人工合成インスリンを開発している。70年代には、1.8オングストローム分解能のブタインスリン3次元構造を測定し、当時の世界先進レベルに達していた。

 中国は国際的に構造ゲノム研究が注目されるなかで、2000年から構造ゲノム科学の研究を展開しており、「863計画」、「973計画」、中国科学院知識イノベーション・プロジェクト、国家重大難関突破プロジェクト、国家自然科学基金などを通じて、構造ゲノム学の研究と関連技術のプラットフォームの建設を重点的に支援している。また、国際プロジェクトに参加してゲノム研究技術のプラットフォームを構築している。

 構造生物学研究チームの規模はここ数年着実に拡大しており、中国科学院生物物理研究所、中国科技大学、北京大学清華大学中国科学院物理研究所、高エネルギー研究所、上海生命科学研究院、福州物質構造研究所、復旦大学などが、構造ゲノム研究を展開する重要な基地となっている。

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