5.製造技術分野
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5.1 製造技術分野の概要

(1) 関連政策

1)各政策の分野別取り組みについて

 中国政府は、各種製造技術を含めた「産業設備製造業」の振興が、国力と国際競争力を強化するにあたって不可欠であるとの基本的姿勢を堅持しており、2006年以降に公布された国家規画の中で具体的な目標を掲げている。

① 中長期科学技術発展規画

 国務院が2006年2月9日に公表した「国家中長期科学技術発展規画綱要(2006~2020年)」(「国家中長期科学和技術発展規劃綱要(2006-2020年)」は、中国における科学技術政策の最上位に位置付けられる規画であり、イノベーションに主眼を置いたうえで、今後の科学技術の発展における指導方針と目標を定めている。具体的には、経済・社会・国防の発展にとって重要な11の重点領域と68の優先テーマ(国防関係の6テーマは非公開)を定めた。

 このうち重点分野の1つに選ばれた製造業については、中国が世界の製造大国であるとの認識を示す一方で、製造技術の基礎部分が弱いことに加え、革新能力が不足しているとの課題を明らかにした。また、製品が低価格帯に偏っているだけでなく、製造過程において資源・エネルギーの浪費や汚染の発生が深刻化している現状に懸念を示した。

 同規画では、製造業分野の基本方針を以下のようにあげている。

  • 産業設備の設計、製造、統合能力を引き上げ、企業の技術革新を促進することによって飛躍的な進歩を達成し、技術的な難関を突破する。また、高水準の数値制御(NC)工作機械や重大な技術産業設備、材料、部品の自主的な設計・製造を基本的に実現する。
  • 環境に優しい(グリーン化)製造を積極的に進める。
  • 先端技術を利用し製造業の改革・改良を進める。

 また、製造技術関係の優先テーマとして、デジタル化およびインテリジェント化による設計製造技術の研究開発を重点的に行うことが明記されている。

 このほか同規画では、超大規模集積回路製造技術とNC工作機械が「重大特定プロジェクト」として位置付けられた。また「先端技術」の中には、先進製造技術が含まれており、将来的には情報化、極限化、グリーン化をめざすとしている。

 その一環として、マイクロ機械システムやマイクロ製造、超精密製造、強磁場における製造に関係した設計・製造工程・検査測定技術、知能サービス・ロボット、重要製品や設備の寿命予測技術について重点的に研究が行われることになっている。

② 第11次5ヵ年規画

 「第11次5ヵ年」期(2006~2010年)は、「国家中長期科学技術発展規画綱要(2006~2020年)」実施のスタート期となり、同規画綱要で定めた目標の実現にとって重要な意義を持つ時期であると位置付けられている。

 2006年3月の全国人民代表大会(全人代)で承認された2010年までの中国としての全体目標を定めた「中華人民共和国国民経済・社会発展『第11次5ヵ年』規画綱要」(「中華人民共和国国民経済和社会発展第十一个五年規劃綱要」)では、中核技術を飛躍的に進歩させるとともに、重大技術産業設備の研究開発・設計能力に加えて、中核的な部品の加工・製造ならびに全体システムの水準を引き上げるとの方針が打ち出された。

 同規画綱要では、NC工作機械と基礎製造産業設備の研究・製造に関して、政策面での支持を強化し、重点プロジェクトを拠り所として、技術基準を整備したうえで、研究開発から製造までを手がける競争力を持った企業を設立するという目標が掲げられた。

 科学技術部は、柱となる2つの規画に基づき、相次いで2つの関連政策を公布した。まず、2006年9月19日に公布した「国家科技支援計画『第11次5ヵ年』発展綱要」(「国家科技支撑計劃"十一五"発展綱要」)は、「国家中長期科学技術発展規画綱要」に規定された重点分野と優先テーマを実施に移し、多数の重要な技術を開発することによって難関を乗り越えることが目標として掲げられた。

 同発展綱要では、製造業に関して、設備製造を突破口として環境に優しいグリーン化製造をめざしながら、情報化と自動化技術を支えとして自主開発を強化することにより、工場設備一式やハイテク設備、科学計器設備、主要部品の自主製造目標を達成するとの方針を示した。具体的な発展目標は以下の通りである。

  • 製造業における重要技術の飛躍的な進歩を達成し、一部業界のハイテク工場設備一式、基礎部品と汎用部品の自主的な設計・開発・製造能力を習得する。
  • 一部業界の省エネおよびグリーン化製造技術を先進国の水準まで引き上げる。
  • 鋳造成形、精密成形モデル、迅速製造技術を習得する。
  • 重大な工場設備一式、ハイテク設備、基礎・汎用部品については基本的に国内で足場を固める。
  • 製造業の情報化を着実に進め、重点業界における設計、製造、管理の一体化を順次実現し、情報化サービス基盤を構築する。
  • 科学計器設備の主要技術および部品の製造技術を習得し、計器設備の技術水準と産業化能力を大幅に向上させる。
  • 分析計器設備の研究開発基盤と産業化基地を育成する。

 同発展綱要は、①製造業情報化プロジェクト②グリーン製造に関わる主要技術・設備③科学計器設備研究開発――を重大プロジェクトとして位置付けている。

 また、科学技術部が2006年10月27日に公布した「国家『第11次5ヵ年』科学技術発展規画」(「国家"十一五"科学技術発展規劃」)では、「国家中長期科学技術発展規画綱要」で定められた要求等に基づき、製造業の競争力を大幅に強化することを基本方針に、超大規模集積回路の製造設備と一体工程、ならびに高水準のNC工作機械と基礎製造設備を2010年までに実施する重大特定プロジェクトとして指定した。

 超大規模集積回路の製造設備・一体工程に関しては、90ナノ・メートル製造設備の製品化に加え、いくつかの重要な技術と部品の国産化実現に重点を置くとしている。また、65ナノ・メートルのプロトタイプ製造設備の研究開発を行うとともに、45ナノ・メートル以下の重要技術についても課題をクリアーし、超大規模集積回路製造にあたっての中核技術と汎用技術を開発するという目標を掲げた。

 NC工作機械と基礎製造設備については、2~3種類の高精度かつ大型のNC工作機械を重点的に研究する方針を示した。さらに、航空や宇宙、船舶、自動車、エネルギー等の分野で緊急に必要とする高精度のNC工作機械を開発するとしている。このほか、NC工作機械の基礎技術と重要な汎用技術を飛躍的に進歩させ、NC工作機械の研究開発ならびに人材養成の基盤を構築する考えも明らかにした。

国務院の設備製造業の振興に関する見解

 国務院は、2006年2月13日に公布した「産業設備製造業の振興加速に関する若干の意見」(「国務院関干加快振興装備制造業的若干意見」)の中で、中国の最高行政機関としての産業設備製造業に関する見解を示した。

 それによると、2010年までに競争力を持った産業設備製造企業を多数育成し、エネルギー、交通、原材料などの分野と国防における要求を満たすという方向性が明らかにされている。

 国務院はこの中で、①市場競争と政策誘導②対外開放と自主革新③産業構造の調整と企業改革の推進④重点的発展と全面的発展――を組み合わせるという基本原則を示したうえで、以下の設備を重点的に開発するとした。

  • 100万kW級の原子力発電所を含めた各種大型発電所
  • 高圧直流送変電プラント設備
  • 100万トン級のエチレン製造設備
  • 大型石炭加工プラント設備
  • 大型薄板冷熱圧延プラント設備
  • 大型石炭採掘設備
  • 大型海洋石油工事設備
  • 高速鉄道技術
  • 都市・工業用汚水処理、固体廃棄物処理等の大型環境保護設備と海水淡水化設備
  • 鉄道、水利、都市軌道交通等の建設用プロジェクトで必要となるボーリングマシン
  • 大型自動制御システムと精密計測計器
  • 大型NC工作機械・システム・機能部品
  • 新型紡績機械
  • 高馬力農業機械
  • 集積回路の主要設備
  • 民生用航空機とエンジン

④ 製造技術の輸入奨励

 中国は、各種政策の中で製造設備の国産化を進める方針を示す一方で、外国からの技術導入も奨励している。商務部と国家税務総局は2006年12月18日、「国務院の『国家中長期科学技術発展規画綱要(2006~2020年)』の実施に関する若干の関連政策通知」(「国務院関干実施<国家中長期科学和技術発展規劃綱要(2006-2020年)>若干配套政策的通知」)の要求に基づき、「中国技術導入奨励目録」(「中国鼓励引進技術目録」)を公布した。

 同目録では、314件の技術が奨励項目としてリストアップされた。このうち149件については、現行の税法規に基づき、所得税の減税または免税措置の対象となった。外国企業についても条件付きで免税の対象となった。また、「汎用設備製造業」と「専用設備製造業」に関して、以下の技術の導入を奨励するとした。

表5.1 設備製造業における技術導入奨励項目

汎用設備製造業

優遇措置

専用設備製造業

優遇措置

高速プレス機製造技術

液圧支架電気油圧式制御システム

高速冷間・熱間圧延・鍛造技術

原子力発電用大型機械製造技術

石炭直接液化装置専用バルブ製造技術

大型車輪式あるいはキャタピラ式トラクター製造技術

長距離パイプライン・グローブバルブの設計・製造技術

野菜収穫機械技術

超超臨界火力発電ユニットの主蒸気バルブの製造技術

果物収穫機械技術

大型組立式圧縮機の設計・製造技術

大型シールド掘削機の設計・製造技術

工業駆動用ガスタービンの設計・製造技術

無油化自動縫製機械分析・検査・製造の中核技術

螺旋遠心沈降機の設計・製造技術

綿花収穫および全工程機械化一体技術

電子制御ディーゼルエンジンの設計・製造技術

マシニングセンタの高速主軸技術

数値制御(NC)主軸ヘッドの製造技術

PVD上塗技術

高精度回折格子技術

高速ボールスクリューおよびリニアノンフリクションガイドの製造技術

ターンミラー複合センタB軸技術

注:目録に掲載された各産業の分類は「国民経済産業分類・コード」に従った。
出典:「中国鼓励引進技術目録」(商務部、国家税務総局公告2006年第13号)をもとに作成。

⑤ 外国企業の投資

 国家発展改革委員会と商務部は2007年10月31日、対外開放拡大を堅持しながら産業構造の改善をはかるため、「外国企業投資産業指導目録(2007年改訂)」(「外商投資産業指導目録(2007年修訂)」を公布し、同12月1日から施行した。以前の「2004年改訂」と比べると、製造業ではハイテク産業や設備製造業、新素材製造業に対する外国投資の奨励を強化した。

 同目録では、「汎用設備製造業」19項目、「専用設備製造業」71項目、「電気機械および器材製造業」13項目、「通信設備、計算機およびその他電子設備製造業」35項目、などを奨励項目としてあげている。一方、制限項目としては、「汎用設備製造業」2項目、「専用設備製造業」3項目を、また禁止項目として「専用設備製造業」1項目(武器弾薬製造)をリストアップした。

 そうしたなかで、外国企業による国内調達を促し、国内製造業の育成に軸足を移すことを目的として、「財政部の大型・精密・高速数値制御設備および中核部品・パーツの輸入税収政策調整に関する通知」(「関干調整大型精密高速数控設備及其関鍵零部件進口税収政策的通知」)が2008年3月26日に公布され、同1月1日に遡って実施された。

 財政部の通知によると、2008年5月1日以降に認可される「外国企業投資産業指導目録」の奨励項目に該当する外国企業投資プロジェクトにおいて、「国内投資プロジェクトで免税を付与しない輸入商品目録(2006年改訂)」に記載される工作機械およびプレス機械を輸入する場合、一律に輸入関税を徴収するが、輸入増値税は免除することになった。すべての非NC工作機械のほか、NC工作機械のうちのレーザー加工機、切削機、マシニングセンタ、旋盤、研削盤に加えて、各種プレス機械が対象となる。

 一方、「国務院の輸入設備税収政策の調整に関する通知」(国発〔1997〕37号)に規定される外国企業投資プロジェクトの2008年4月30日以前に認可されたものに関しては、自己使用設備を輸入する場合、10月31日までは関係規定によって執行し、11月1日以降は一律に輸入関税を徴収することになった。5月1日以降に認可されたプロジェクトと同じく、輸入増値税については免除される。

2)重点分野推進政策

① 集積回路とNC工作機械

 「国家中長期科学技術発展規画綱要」には、「超大規模集積回路の製造技術」と「高レベルNC工作機械と基礎的な製造技術」が重大特定プロジェクトとして盛り込まれている。

 このうち、超大規模集積回路の製造技術に関する「第11次5ヵ年」規画としては、情報・産業部(当時)が2008年1月に公布した「集積回路産業『第11次5ヵ年』専門規画」(「集成電路産業"十一五"専項規劃」)と「電子専用設備・計器『第11次5ヵ年』専門規画」(「電子専用設備和儀器"十一五" 専項規劃」)がある。

 このうち「集積回路産業『第11次5ヵ年』専門規画」は、「第11次5ヵ年」期間中(2006~2010年)に、8~12インチのウェハーの生産設備を重点的に開発するとしたうえで、8インチ・ウェハーの生産設備を国産化するとともに、2010年には国産の12インチ・ウェハーの設備を生産ラインに導入することを目標として掲げた。

 また、「電子専用設備・計器『第11次5ヵ年』専門規画」では、6~8インチ・ウェハーの製造技術を取得し、8~12インチ・ウェハーの生産設備を重点的に発展させることを主要任務としたうえで、12インチ・ウェハーの一部中核技術を習得し生産ラインに導入することを技術革新の目標としている。

 一方、「高レベルNC工作機械と基礎的な製造技術」に関しては、国家発展改革委員会が作成し、2004年6月23日にドラフトとして公表した「NC工作機械産業発展特定規画」(「数控机床産業発展専項規劃」)がある。同規画は、まだ正式に公布されていないが、具体的に以下のような目標が掲げられている。

〔発展の目標〕

 2010年までに、国産のNC工作機械の市場シェアを50%以上に、また部品の自給率を60%に引き上げる。知的財産権を有するNC工作機械の生産総量の比率を75%に引き上げる。構造調整を加速し、製品構造を最適化する。国内のNC工作機械の総生産量に占める各技術水準のNC工作機械の割合を、低級機種:約50%、中級機種:約45%、高級機種:約5%にそれぞれ引き上げる。

〔技術開発の目標〕

 中核部品とNCシステムの産業化を実現し、NC工作機械製品のグレードアップをめざす。高精度のデジタル化計器とNC切削機を重点的に開発し、中・高級のNC工作機械の需要を賄う。高級NC工作機械のモデルプロジェクトを実施し、国家重点プロジェクトのニーズにこたえる。

〔技術開発の重点〕
  • NC工作機械の産業化技術:高速化技術、複合化技術、知能化技術、超精密加工技術、環境保全技術
  • 基礎汎用技術研究:NC工作機械の設計理論および設計ソフトに関する研究、NC工作機械の構造の最適化に関する研究、NC工作機械の信頼性に関する研究

② 先進製造技術分野の2008年度公募課題

 科学技術部は2008年5月30日、「国家中長期科学技術発展規画綱要」と「国家ハイテク研究発展計画(863計画)第11次5ヵ年発展綱要」(「国家高技術研究発展計劃(863計劃)"十一五"発展綱要」)に基づいて、先進製造技術分野の2008年度公募課題を明らかにした。

 「863計画」における先進製造技術分野のテーマは、中国のニーズを軸に展開されており、精密化、柔軟化、ネットワーク化、バーチャル化、知能化、グリーン化が柱に据えられている。テーマ等は以下の通りである。

a) 現代製造統合技術
ⅰコンポーネント製造業
〔調査指向型テーマ〕
  • デジタル化設計方法・技術(助成テーマ:5件、助成額:各80万元以下)
  • 製造過程・プロセスのデジタル化(助成テーマ:5件、助成額:各80万元以下)
  • デジタル化管理・集積技術(助成テーマ:5件、助成額:各80万元以下)
〔目標指向型テーマ〕
  • 電気・機械設備製品およびシステムモジュール化設計プラットフォーム(助成テーマ:2件、助成額:各300万元以下、但し別途300万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
  • 精密電気・機械設備製品構造設計方法・工具(助成テーマ:2件、助成額:各300万元以下、但し別途300万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
  • 複雑曲面薄壁類部品の高性能加工・シミュレーション最適化(助成テーマ:2件、助成額:各400万元以下、但し別途400万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
ⅱプロセス製造業
〔調査指向型テーマ〕
  • プロセス工業向けの先進的検査・測定技術(助成テーマ:4件、助成額:各80万元以下)
  • 複雑工業プロセス向けの情報処理・総合応用技術(助成テーマ:4件、助成額:各80万元以下)
  • 重大エネルギー消費設備向けの最適制御技術(助成テーマ:3件、助成額:各100万元以下)
  • 制御システム中核技術・応用システムの開発(助成テーマ:3件、助成額:各80万元以下)
〔目標指向型テーマ〕
  • プロセス生産過程の省エネ・排出削減向けの一体型制御システム(助成テーマ:4件、助成額:各300万元以下、但し別途300万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
  • 新しいタイプの高効率エネルギー転換装置の一体型制御技術(助成テーマ:2件、助成額:各300万元以下、但し別途300万元の自己負担が必要等の付帯条件)
  • エネルギー消費・排出モニタリング向けの検査測定器・装置(助成テーマ:3件、助成額:各300万元、但し別途300万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
  • プロセス工業の全プロセスのシミュレーション・最適化制御設計プラットフォーム(助成テーマ:2件、助成額:各300万元以下、但し別途300万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
b) 知能ロボット技術
〔調査指向型テーマ〕
  • ロボットの新コンセプトおよび応用(助成テーマ:3件、助成額:各80万元以下)
  • ロボットのメカニズム(助成テーマ:2件、助成額:各80万元以下)
  • ロボット駆動・制御(助成テーマ:3件、助成額:各80万元以下)
  • ロボットセンサー(助成テーマ:4件、助成額:各80万元以下)
〔目標指向型テーマ〕
  • 新型重量積載スポット溶接ロボットの自動化一体設備(助成テーマ:1件、助成額:350万元以下、但し別途350万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
  • 平面多関節クリーン運搬ロボットおよび自動化一体設備(助成テーマ:1件、助成額350万元、但し別途350万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
  • 特殊環境下でのマイクロ・ロボットの実用化技術研究(助成テーマ:1件、助成額:400万元以下、但し別途200万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
  • ロボット応用向けの知能空間技術とシステムの実証(助成テーマ:1件、助成額:240万元以下、但し別途100万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
c) 極限製造技術
〔調査指向型テーマ〕
  • 新型高性能マイクロ加工・パッケージ(助成テーマ:6件、助成額:各80万元以下)
  • 新型マイクロ流路制御部品・システム(助成テーマ:3件、助成額:各80万元以下)
  • 光MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品・システム(助成テーマ:3件、助成額:各80万元以下)
  • 高効率のマイクロ・エネルギー装置(助成テーマ:2~3件、助成額:各80万元以下)
〔目標指向型テーマ〕
  • MEMSシミュレーションライブラリーと設計ツールの統合(助成テーマ:1件、助成額:400万元以下、但し別途100万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
  • MEMSとIC統合製造技術および応用(助成テーマ:2件、助成額:各300万元以下、但し別途150万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
  • MEMS部品の高性能・低コストパッケージ技術および応用(助成テーマ:2件、助成額:各260万元以下、但し別途150万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
  • マイクロ・ナノメートル圧印中核設備と工程技術(助成テーマ:1件、助成額:300万元以下、但し別途200万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
  • MEMSによる人工視覚マイクロシステム(助成テーマ:1件、助成額:260万元以下)
  • MEMS技術による工業汚染モニタリング・センサーとマイクロシステム(助成テーマ:2件、助成額:各260万元以下、但し別途150万元の自己負担が必要等の付帯条件)
d) 重大製品・重大設備の寿命予測技術
〔調査指向型テーマ〕
  • 寿命・信頼性設計と試験技術(助成テーマ:5件、助成額:各70万元以下)
  • システム故障診断と安全分析技術(助成テーマ:8件、助成額:各70万元以下)
〔目標指向型テーマ〕
  • 重大装備・設備の寿命と信頼性総合設計および検証技術(助成テーマ:3件、助成額:各300万元以下、但し別途150万元以上の自己負担が必要等の付帯条件)
  • 重大装備・設備の状態モニタリングと安全分析技術(助成テーマ:4件、助成額:各300万元以下、但し別途150万元の自己負担が必要等の付帯条件)

(2)研究予算

 中国の製造技術産業は、「国民経済産業分類・コード」に従うと、「汎用設備製造業」と「専用設備製造業」に大きく分かれている。このうち「汎用設備製造業」には、高速プレス機製造技術やNC主軸ヘッド製造技術、高速冷間・熱間圧延・鍛造技術等が、また「専用設備製造業」には原子力発電用大型機械製造技術や大型車輪式あるいはキャタピラ式トラクター製造技術等が含まれている。

 「中国科技統計年鑑」の各年版によると、「汎用設備製造業」と「専用設備製造業」別に見た研究開発機関の活動には大きな違いが見られる。

 まず、産業別に見た研究開発機関の研究開発内部支出は、「汎用設備製造業」の研究開発機関が2005年を例外として例年700万元台で推移しているのに対して、「専用設備製造業」の研究開発機関では2002年以降着実に増加してきており、2006年には2億1690万元に達し、同年における「汎用設備製造業」の実績の約29倍となった。

 研究開発内部支出の内訳では、「汎用設備製造業」、「専用設備製造業」の研究開発機関とも、基礎研究と応用研究への配分がきわめて少なく、「汎用設備製造業」では2002年以降、基礎研究に対する支出がゼロとなっている。「汎用設備製造業」では、2005、2006年にかけて応用研究に対する支出もまったくない。

 一方で、試験開発支出の割合が両製造業の研究開発機関とも高く、2006年実績では「汎用設備製造業」が100%、「専用設備製造業」でも93.3%を占めた。

 研究開発機関の資金の出所は、「汎用設備製造業」では政府資金の占める割合が大きいのに対して、「専用設備製造業」では政府資金とその他資金(金融機関からの借り入れ等)がほぼ同水準となっている。「専用設備製造業」では、2002年以降、その他資金が着実に増加してきている。また自己資金の占める割合は、両者とも低い水準にあったが、これがさらに減少する傾向にある。

表5.2 製造技術分野における研究開発機関の研究開発内部支出の推移(万元)

分野


項目

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

汎用設備製造業

研究開発内部支出

739

736

794

3789

754

 

基礎研究

0

0

0

0

0

応用研究

22

95

91

0

0

試験開発

717

642

703

3789

754

専用設備製造業

研究開発内部支出

5841

10419

15842

18754

21690

 

基礎研究

2

0

24

117

177

 

応用研究

485

1149

304

1460

1266

 

試験開発

5655

9270

15515

17177

20247

出典:「中国科技統計年鑑」(2003~2007各年版、国家統計局・科学技術部編、中国統計出版社)
表5.3 製造技術分野における研究開発機関の研究開発内部支出の資金出所(万元)

分野


項目

2002

2003

2004

2005

2006

汎用設備製造業

研究開発内部支出

739

736

794

3789

754

 

政府資金

331

373

417

2895

411

自己資金

246

172

215

386

131

国外資金

0

25

0

0

0

その他資金※

162

167

162

507

213

専用設備製造業

研究開発内部支出

5841

10419

15842

18754

21690

 

政府資金

3532

5145

9283

8280

9559

 

自己資金

1597

2093

1059

1056

724

 

国外資金

0

0

0

0

6

 

その他資金※

712

3180

5501

9419

11401

※:金融機関からの借り入れ等
出典:「中国科技統計年鑑」(2003~2007年版、国家統計局・科学技術部編、中国統計出版社)

(3)研究人材

 製造技術分野で研究開発に投入されている人的資源は、「汎用設備製造業」と「専用設備製造業」では好対照をなしている。

 産業別に見た研究開発機関の人的資源投入量では、2006年実績で製造業が6786人・年となり、産業全体の23万1923人・年の約2.9%を占めた。また、製造業のうち、「専用設備製造業」は同年実績で1330人・年となっており製造業全体の約19.6%を占め、医薬製造業の2103人・年(約31%)に次いだ。一方で、「汎用設備製造業」は127人・年で、製造業全体に占める割合は1.9%に過ぎない。

 「汎用設備製造業」の研究開発機関の人的資源配分を見ると、基礎研究分野への人的資源投入は2002年以降、ゼロである。応用研究に投入される人的資源も少なく、2002年から減少傾向にあったが、2005年からはゼロとなった。しかし、試験開発に投入される人的資源は100人台を維持している。

 これに対して「専用設備製造業」では、研究開発に投入される人的資源が2002年以降、着実に増加している。人的資源の配分では、応用研究と試験開発についてはそれほど大きな変化は見られないものの、量的にはまだ少ないが基礎研究分野での人的資源投入が増加傾向にある。

表5.4 製造技術分野における研究開発機関の人的資源投入量の推移(人・年※)

分野


項目

2002

2003

2004

2005

2006

汎用設備製造業

研究開発専従換算人員投入量※(1+2+3)

173

148

114

237

127

 

1.基礎研究

0

0

0

0

0

2.応用研究

19

15

7

0

0

3.試験開発

154

133

107

237

127

研究者と技術者※※

113

116

86

201

104

専用設備製造業

研究開発専従換算人員投入量*(1+2+3)

749

1088

1129

1280

1330

 

1.基礎研究

1

0

20

20

62

 

2.応用研究

186

130

50

134

132

 

3.試験開発

562

958

1059

1126

1136

 

研究者と技術者※※

588

927

905

1057

1025

※:専従換算人員投入量:「専従人員」とは、当該年において研究開発活動に従事した時間が当該年の全作業時間の90%以上を占める人員を指す。また「非専従人員」とは、当該年において研究活動に従事した時間が当該年の全作業時間の10%以上-90%未満の人員を指す。「非専従人員」は、実際の作業時間に応じて「専従人員」に換算される。例えば、3人の「非専従人員」が当該年の全作業時間のそれぞれ20%、30%、70%を当該年の研究開発活動にあてた場合、「専従換算人員」は0.2+0.3+0.7=1.2(人・年)≒1(人・年)となる。したがって「専従換算人員投入量」は、「専従人員」に、作業時間に応じた「非専従人員」を加えたものである。例えば、2人の「専従人員」と3人の「非専従人員」(作業時間はそれぞれ20%、30%、70%)がいた場合、「専従換算人員投入量」は2+0.2+0.3+0.7=3.2(人・年)となる。
※※:研究者・技術者:高・中級技術のポストを有する科学技術活動に従事する人員と、高・中級技術のポストを有しない大学本科以上の学歴の人員を指す。なお高級技術職は日本の大学教授レベルに、また中級技術職は大学講師レベルに相当する。
出典:「中国科技統計年鑑」(2002~2007各年版、国家統計局・科学技術部編、中国統計出版社)

(4) 大・中企業の研究活動

 次に企業側での実態を見ると、大・中企業では、「汎用設備製造業」、「専用設備製造業」とも、精力的に研究開発が行われている。とくに「汎用設備製造業」では、研究開発機関の低調な活動とは対照的に、研究開発への人的資源の投入量、資金とも着実に増加している。

 「中国科技統計年鑑」によると、「汎用設備製造業」で2006年に研究開発に投入された人的資源は4万9865人・年となり、「専用設備製造業」の4万2822人・年を上回った。「汎用設備製造業」の研究開発経費は、基礎研究や応用研究が少なくほとんどが試験開発向けであるものの、103億4914万元に達した。

 「汎用設備製造業」の研究開発プロジェクト件数も顕著に増加しており、2006年には8201件となった。プロジェクト向けとして投じられた経費も98億元を記録した。

 「専用設備製造業」の研究開発も「汎用設備製造業」と同様な傾向を示しており、投入人的資源や経費も2003年以降、大きく増加している。

表5.5 製造技術分野における大・中企業の研究開発活動

分野


項目

2003

2004

2005

2006

汎用設備製造業

研究開発専従換算人員投入量※(人・年)

37920

47220

43369

49865

 

研究者と技術者※※

26884

34841

34550

39773

研究開発経費(万元)

428689

646184

688160

1034914

 

試験開発

420094

610082

648514

990036

研究開発プロジェクト(件)

5029

5492

6216

8201

研究開発プロジェクト経費(万元)

381750

538504

627120

980319

専用設備製造業

研究開発専従換算人員投入量※(人・年)

32021

37474

38870

42822

 

研究者と技術者※※

24473

29335

32732

36598

研究開発経費(万元)

317356

485104

551519

759041

 

試験開発

302547

445341

510075

720017

研究開発プロジェクト(件)

3023

3718

3252

4221

研究開発プロジェクト経費(万元)

272736

403227

520860

720922

※:前掲
※※:前掲
出典:「中国科技統計年鑑」(2004~2007各年版、国家統計局・科学技術部編、中国統計出版社)

(5) 研究成果

 製造技術分野での研究成果の一応の目安となる特許については、「汎用設備製造業」、「専用設備製造業」とも、2002年以降、申請件数が着実に増加している。申請件数、発明特許所有件数に関して、両設備製造業できわだった違いは見られない。

 新製品開発を含めた科学技術プロジェクトの件数も両設備製造業とも増加傾向にあるが、「汎用設備製造業」の実績が、「専用設備製造業」の実績を大きく上回っている。

 また、国家知的財産権局がまとめたデータによると、設備製造業の9分野(発電設備、石油化学設備、冶金設備、工作機械、計器類、石炭関連機械、工事機械、農業用機械、環境保全設備)の特許申請件数は、国内機関・個人によるものが顕著に増加している。

表5.6 製造技術分野における大・中企業の新製品開発プロジェクトと特許の実績

分野


項目

2001

2002

2003

2004

2005

2006

汎用設備製造業

科学技術プロジェクト件数

10331

11855

11699

10772

13844

15101

 

新製品開発件数

7015

8107

8291

8871

10424

10961

特許申請件数

824

859

1513

4572

3484

4390

 

発明特許件数

146

175

305

952

678

1078

発明特許所有件数

599

603

791

2463

1246

1855

専用設備製造業

科学技術プロジェクト件数

5094

5576

5840

6822

6248

8108

 

新製品開発件数

3460

3517

3612

5792

4274

5304

特許申請件数

768

922

1805

4442

2880

3418

 

発明特許件数

133

124

261

1120

611

889

発明特許所有件数

672

580

950

4092

1127

1462

出典:「中国科技統計年鑑」(2002~2007各年版、国家統計局・科学技術部編、中国統計出版社)
表5.7 産業設備製造業9分野における国内外機関と個人の中国での特許申請状況

 

発明特許件数

実用新案件数

発明特許承認件数

合計

中国

外国

合計

中国

外国

合計

中国

外国

1985-1990年

4094

1936

2158

5955

5824

131

1196

545

651

1991-1995年

4813

2859

1954

12274

11556

718

2018

969

1049

1996-2000年

10184

3537

6647

16465

14907

1558

2274

922

1352

2001-2005年

26027

12321

13706

29060

26308

2752

10935

4121

6814

2006年

10053

5638

4415

9023

8405

618

3564

1573

1991

合計

55171

26291

28880

72777

67000

5777

19987

8130

11857

注:9分野とは、発電、石油化学、冶金、工作機械、計測器、石炭関連機械、工事機械、農業機械、環境保全分野。
出典:「中外専利数拠庫服務平台」(国家知的財産権局、2006年のデータは1-11月末までの累計数値)

(6) 国際研究活動の展開

 表5.3に示すように、製造技術分野における研究開発機関の研究開発内部支出の資金出所を見ると、国外資金はほとんどない。一方で、製造技術関係は国際研究と国際協力活動を積極的に展開する必要がある分野に指定されている。

 「国家中長期科学技術発展規画綱要」を実施するうえでの実施計画として、科学技術部が2006年11月29日に公布した「『第11次5ヵ年』国際科学技術協力実施綱要」(「"十一五"国際科技合作実施綱要」)は、協力領域の拡大、協力方式の革新、協力効果の向上をめざすとしたうえで、4つの協力重点分野の1つとして「先端製造技術、重大設備とモノ作り技術」をあげている。