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【14-016】中国の大気汚染防止の法制度および関連政策(13)

2014年 5月14日

金 振

金 振(JIN Zhen):
科学技術振興機構中国総合研究交流センター フェロー

1976年 中国吉林省生まれ
1999年 中国東北師範大学 卒業
2000年 日本留学
2004年 大阪教育大学大学院 教育法学修士
2006年 京都大学大学院 法学修士
2009年 京都大学大学院 法学博士
2009年 電力中央研究所 協力研究員
2012年 地球環境戦略研究機関(IGES) 特任研究員
2013年4月 IGES 気候変動・エネルギー領域 研究員
2014年4月より現職

そのXⅡよりつづき)

(4.2)自動車関連の法制度

「自動車」の定義

 ここでは、大気汚染対策に着眼した中国の自動車関連の法制度について紹介する。詳細な内容に触れる前に、まず、「自動車」の定義について整理しておく必要がある。なぜなら、中国にも「自動車」と いう法令用語はあるが、日本の定義に比べ種々の相違点が存在しているからである。また、中国の国内における「自動車」用語の場合、法令用語と実務用語が混在しており、同じく整理が必要となる。

 以下では、日中間における用語の相違点、中国国内における法令用語と実務用語との相違点の順に沿って説明する。

日中間における用語の相違点

 日本の道路交通法上の定義によれば、「自動車」とは、「原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であって」、原動機付自転車や路面電車はこれに含まれない(第2条、4の2項、9号)。こ れに対し、中国における定義の範囲はやや広い。日本の道路交通法に当たる「中華人民共和国道路交通安全法」(以下、交通安全法)は「自動車」を、「乗用、運搬、または作業目的で道路を走行する、動 力装置を用いた車輪付車両、またはトレーラー(動力装置を持たない:筆者注)」として定義している(第119条3項)。日本における定義と異なり、動力装置を持たないトレーラーや原動機付自転車、レ ール電車も自動車として整理している。

表1 中国における「自動車」分類および区分基準
出典:GA802-2008「自動車類型 専門用語の定義」
※路面電車、LRTなど。
分類 区分基準(詳細データは省略)
汽車 乗車汽車 大型、中型、小型、微型(極小) 車体大きさ、乗車制限人数
貨物汽車 重型(大型)、中型、軽型、微型、三輪汽車、低速、作業用車 車体大きさ、重量、車輪数、設計速度、エンジンタイプ(ディーゼルエンジン、三輪汽車に限る。)
専門作業車 車体大きさ、乗車制限人数など
軌道電車※ 車体大きさ、乗車制限人数など
バイク 普通 最大設計速度、排気量
小型(原動機付自転車) 最大設計速度、排気量
トレーラー 重型(大型)、中型、軽型 総重量

法令用語と実務用語との相違点

 環境行政、とりわけ、大気汚染防止分野において実に多様な実務用語が用いられている。実務用語とは、政策実施過程において定着した政策用語であり、場合によっては法令上の用語と矛盾する場合がある。例 えば、道路交通行政上、道路を利用しない農業トラック等は「非自動車」として整理しているが(道路交通安全法)、環境行政分野では、これらを自動車として整理している。それは、道 路交通行政は道路利用の前提となる登録手続を得た自動車(以下、登録車)のみを規制対象としているのに対し、環境行政では、排出や騒音など環境規制の観点から未登録車も自動車として整理している。さ らに詳しく見てみると、「軽型車」や「重型車」などの車種に関する定義も両分野においては差異がある。例えば、道路交通行政における定義は「総重量12,000 kg以上の貨物車、または、トレーラー」である( GA802-2008)のに対し、環境行政における重型車は、「車両設計総重量3,500kg.以上のもの」を指す(GB14762-2008)。前者は自動車構造に着目した分類であるのに対し、後 者はエンジンタイプに着目した分類であるため、同じ用語であってもこのような相違点が生じる。

自動車管理行政の分散化問題と基準不統一問題

 用語不統一の背景には、中国の自動車管理行政の「分散化」がある。中国の場合、自動車の生産から廃車に至るまでのライフサイクルに即し、様々な行政管理主体(以下、規制機関)が並存している。そ れぞれの規制機関は、所掌範囲に応じ基準策定権限が付与されている(以下、業界基準)。例えば、同じ自動車安全分野であっても、装置(部品)に関する基準は工業情報化部、構造等に関する安全基準は中国公安部、廃 車の基準に関しては商務部、また、公共バスなどの運輸部門における自動車は交通運輸部、が基準策定機関となる。それぞれの規制機関が策定した業界基準には、重複するものや矛盾するものも少なくない。業界基準は、国 務院直属機関である中国質量監督検験検疫総局が公布する全国基準に取って代わるまで有効とされる。しかし、全国基準の策定は、規制機関同士の事務再配分の問題に直結するため、いまだに中国には、日本の「 道路運送車両の保安基準(道路交通法第三章)」に相当する統一化された基準体系はない。



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