【14-21】積み上げてきた事実忘れるな 毛里和子氏が日中関係で提言

2014年10月22日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)

 毛里和子早稲田大学名誉教授は10月15日、新聞通信調査会主催の講演会で日中関係について話し、「日中政府か過去に積み上げてきた努力を忘れず、善隣関係を構築すべきだ」と提言した

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 毛里氏は、日中関係の構造変化が2012年に起きたとして、3つの理由を挙げている。日中間の問題は、歴史・価値レベル、パワーレベル、具体的利益レベルの3層構造をしているが、そ れぞれが絡み合って総体的な対抗関係ができてしまったのが、第1の理由。第2は経済的に切っても切れないウインウインの関係が政治的対立によって薄くなってしまったこと。さらに、安 倍政権が軍事力を背景にした平和主義という新保守主義の立場を明確に打ち出す一方、中国も近代150年間の屈辱と、2 0世紀後半の冷戦時に不当な扱いをされたことへの報復を図る新しいナショナリズムが高まってきたことで原理主義的対立が生じたことを、日中関係の構造的変化の第3の理由に挙げた。

 政治的な対立で経済的な互恵関係が希薄になってしまったことを説明する例として、毛里氏は2006年5月に経済同友会が出した提言を挙げた。提言は小泉首相(当時)の靖国神社参拝に異を唱えたもので、毛 里氏は、現在、財界からこうした動きがないことに疑問を呈している。

 また、日中政府の原理主義的対立が新しい事態であることを説明する例として、1979年5月31日付の読売新聞社説を挙げた。この社説が、尖閣諸島について「日中双方が領土主権を主張し、現実に論争が“ 存在“することを認めながら、この問題を留保し、将来の解決に待つことで日中政府間の了解がついた」などとしていることに注意を喚起し、「原点に戻る必要がある」ことを強調している。

 日中関係を仕切り直しするためのモデルとして、氏は2つの文書、演説を挙げた。1998年の小渕首相(当時)、金大中韓国大統領(当時)による日韓共同宣言で、小渕首相が、過 去の戦争について韓国国民に向けて謝罪し、韓国の民主化と経済発展を高く評価したことと、金大統領が、日本の戦後の平和主義や経済発展、経済援助を高く評価したことの意義を指摘した。さらに、2007年4月、来 日した温家宝中国首相(当時)が国会で演説し、日中国交正常化後、日本が侵略を謝罪したことを評価し、中国への経済支援について謝意を表明したことも重要視した。

 毛里氏は、「批判するだけではなく、日中がこれまで苦労して積み上げてきた事実をきちんと評価し、多くの人に思い出させる役割もあるのでは」とメディアに求め、過去の積み上げを忘れず、日 中関係を再構築することの重要性を訴えた。

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