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【15-07】日本語学習のきっかけアニメ 作文コンクール優勝の姚儷瑾さん

2015年 2月 9日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)

 「中国人の日本語作文コンクール」で最優秀賞を受賞した姚儷瑾(ヤオ・リーチン)さん(20)が2月6日、日本記者クラブで記者会見し、日 本のアニメやテレビ番組がきっかけで日本に対する関心を深めた体験を語った。姚さんは上海にある東華大学日本語学科3年生。「アニメやドラマから日本に対し良いイメージを抱く中国の若者が増えれば、日 中関係の改善につながるはず」と文化の力に対する大きな期待と信頼を示した。

 中国の若者の日本語熱や日本のアニメやマンガに対する人気の高さは、国際交流基金の調査でも明らかになっている。同基金の 「 2012年度海外日本語教育機関調査」は、中国が日本語学習者の最も多い(約105万人)国で、学習目的の第1位が「アニメ・マンガ」(63.6%)で あることを示していた。

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 姚さんは、アニメ「機動戦士ガンダムSEED」を観て「深い内容」に気付き、いろいろなアニメやテレビ番組に触れて日本文化への関心を深め、日本語学習を始めたことを明らかにした。上 海で開かれるアニメ大会の参加者がほとんど中国人であることを紹介し「日本人を誘って交流できる場がつくれたら」という夢も語った。

 日本に対する関心から韓国の文化にも興味を持つようになり、テレビ番組をよく見るうちに韓国語も理解できるようになったとのこと。「中国語、日本語、韓国語は似ている。そ れぞれの文化に若者が興味を持つようになれば、3カ国の関係は良くなるはず」と未来志向の言葉が続いた。

 「中国人の日本語作文コンクール」の主催者は、日本で出版・研究・コンサルタント事業を営む「 日本僑報社」。記者会見には、同 社の設立者で編集長でもある段躍中氏のほか、姚 さんの日本語指導をしている岩佐和美さんも同席し、作文に対する日中両国の考え方の違いなど興味深い話を披露した。

 姚さんの受賞作文は、大学の授業で先生と学生が日中関係で何度も討論したことと、14歳の時にアニメ「機動戦士ガンダムSEED」を観て以来、戦 争の意義についてずっと考え続けている自身の体験をまず紹介している。ACG(アニメ・コミック・ゲーム)のマニアサイトに「もし戦争が起これば、その傷はどれほど大きい勝利でも癒せない。私 は心から日中関係の平和を祈る」と記したところ、日本人から『私もそう思う』という返事をもらった時の感動も盛り込まれている。

 岩佐さんによると、中国人の作文は、書き出しや締めの言葉が似たような表現になり、オリジナリティがあまり求められない。実際に「優秀作文集」というものが売られており、そ の枠組みから出ないような練習を小さいころからやらされている。自分が体験したエピソードが重視され、どれだけ読み手を納得させられるかで評価が決まる日本の作文教育との違いは大きい、という。

 「中国ではまず広いテーマをめぐっていろいろな面から分析して書くほどよい作文とされる。私の(受賞)作文を中国語に訳したら『内容がない』と中国の先生たちは思うだろう」。姚 さんも岩佐さんの指摘に同意した。

 一方、段氏からも興味深い指摘があった。日本僑報社は2005年に「中国人の日本語作文コンクール」と共に、日本人向けの「中国語作文コンクール」を始めた。ところが、こちらは6回で終わってしまう。応 募者が最大で240人。年々減って70人くらいになってしまったことが理由だった。昨年末で10回目となった「中国語作文コンクール」の応募者は、196校4,133人に上ることから、差は大きい。

 「中国人はうまくなくても投稿するのに対し、日本人は満足する内容でないと応募しない。中国人の方がチャレンジ精神は旺盛だ」

 段氏は「日本には100万人近い中国人がおり、旅行で訪れる人も増えている。中国語で話すチャンスはいくらでもある」と中国人との積極的な対話を促していた。


関連ウェブサイト

YouTube動画サイト 「 日本記者クラブ 姚儷瑾さん「 中国とどうつきあうか」⑫若者の日本観
日本僑報社 「 中国人の日本語作文コンクール」& amp; amp; lt; /dd>
科学技術振興機構 「 日本・アジア青少年サイエンス交流事業「さくらサイエンスプラン」

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