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【15-12】交流から共働・共創へ 北京で日中大学フォーラム開催

2015年 3月26日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)

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 日中共通の国家的あるいは地球的課題に挑むには日中大学間の交流を共働・共創の関係に発展させる必要がある―。3月23日、北京で開かれた日中大学フォーラム( 科学技術振興機構中国総合研究交流センター主催、中国科学技術協会国際連絡部など共催)で、日中双方の大学トップから協力関係を一段と強化する決意が示された。特別講演者の毛利衛日本科学未来館館長は、「 人類が生き延びるために必要な総合知を生み出す責任は、日中といったレベルを超え若者すべてにかかっている。それを若者にきちんとさせるのが一流大学の役割」と、大 学人と参加者の大半を占める大学生の双方に繰り返し訴えた。

 今年のフォーラムのテーマは「日中の科学技術・学術交流の新展開」。宇宙飛行の経験談をふんだんに盛り込んだ毛利氏の講演に先立って、川口清史・前立命館大学学長と郭東明・大連理工大学学長が、そ れぞれ国際共働の実績を詳しく紹介した。両大学は、緊密な関係にある。大連理工大学の中に昨年9月、両大学が共同運営する国際情報ソフトウエア学部が設立された。授業は日本語と英語で行い、半 分以上の専門科目は立命館大学から招集された教授が担当している。郭学長は同学部が中国教育部の許可した初めての国際共同学部であることを強調、「初年度の入学者は100人だったが、毎年増やし、3 年後には300人にする」と意欲を語った。

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 国際合同学部の設立は、大連理工大学が早くから国際交流と日本語教育に力を入れ、立命館大学も日本の大学ではとりわけ国際化に力を入れてきた実績を基盤に実現した。郭氏は、「両国の産業界、学 界とも共通の課題に直面しており、それは産学にとって新たなチャンスでもある」と語り、環境、エネルギー、交通、社会保障、少子高齢化を日中共通の課題として挙げた。川口氏も、同 大学が取り組んできたさまざまな国際共同プロジェクトを詳しく紹介した上で、「これからは研究者個人のネットワークを頼りにした共同研究では不十分。大学同士の共同研究が必要とされている」ことを力説した。 

 3氏の基調・特別講演の後に開かれたパネルディスカッションでも、国際化に熱心な日中双方の大学学長や副学長、理事から大学のグローバル化と、日中大学による科学技術・学術交流の重要性を指摘する報告、提 言が相次いだ。

 日中大学の連携、産学連携についての議論では、中国側のパネリストからより積極的意欲と具体的な提言が続いたのが目立つ。「 欧州連合(EU)各国の大学との間で行われているようなプロジェクトの共同申請が、日本の大学ともできるようになるのが望ましい。これまでのような人的交流にとどまらず」(潘建偉中国科学技術大学副学長)、「 高速鉄道など交通の安全システムは複雑。最前線でニーズを把握しているさまざまな関連企業と万遍なく連携し、業界の発展をけん引してきた」(寧濱北京交通大学学長)などだ。

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 パネルディスカッションの最後にコメンテーターとしてあいさつした藤嶋昭東京理科大学学長によると、氏が東京大学教授時代に研究室に留学してきた中国人研究者の多くが現在、中 国の大学などで指導的な立場にある。藤嶋氏の話は長年続くこうした研究者との緊密な交流の紹介がほとんどで、「日中の科学技術・学術交流の新展開」も結局、基 盤は研究者同士の緊密なつながりにあることを会場の参加者たちに強く印象づけた。


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