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【14-26】中国に青空戻す第2の宝山プロジェクトを

2014年12月10日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)

 大気汚染対策が中国にとって喫緊の課題になっていることが、11月20日都内で開かれた「日中産学官交流フォーラム」で、中国側参加者の発言からあらためて明らかになった。 

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張季風・中国社会科学院日本研究所所長助理

 同フォーラムは、日中産学官交流機構の設立10周年記念として、日中双方の著名な人々を講師、パネリストに迎え、開かれた。省エネ・環境問題とりわけ中国の大気汚染対策に日中双方が協力して取り組む必要を訴えたのは張季風・中国社会科学院日本研究所所長助理。張氏は「スモッグ対策」という言葉を何度も繰り返し、中国で発生したスモッグは「ビザや航空券なしでも日本に飛んで来る」とジョークを交えて、対策が日中両国共通の緊急課題であることを指摘した。

 中国第12次5カ年計画でもスモッグ対策は重点項目になっており、巨額の投資が行われている現状を紹介し、対策が日中共通の課題であるばかりでなく、経済的利益を双方にもたらすことも強調した。「力を合わせれば必ずや中国に青い空が見られるようになる」。張氏は協力プロジェクトを、新中国誕生後最大の国家プロジェクトで日中技術協力の代表例ともいわれる宝山製鉄所に次ぐ、第2のシンボルにしようと呼びかけた。

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陳永潔・中国国際経済交流中心副秘書長

 張氏はさまざまな数字を挙げて日中経済協力の現状について「楽観できない」との考えも示している。しかし、「中国の消費、需要はいずれも比較的高い成長率を引き続き維持し、経済関係は前途洋々」だと断言した。「5、6年後には中国からの観光客は年間2,000万人になるだろう」。東京オリンピックの開かれる2020年に海外からの観光客を2,000万人に、という日本政府の目標が、中国からの観光客だけで簡単に実現可能であるとの見方を示した。

 陳永潔中国国際経済交流中心副秘書長も、中国が製造からイノベーションへと産業のグレードアップを図り、多国籍企業にチャンスを与えている現状を紹介し、日本企業との協力強化を訴えた。陳氏は「米国や韓国、ドイツの企業の方が成功している。日本企業も研究開発、技術協力により中国企業を支援し、中国市場でのシェアを拡大し、発展のチャンスを得てほしい」と促した。

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清川佑二・日中産学官交流機構理事長

 こうした中国側パネリストの発言に呼応するように、清川佑二日中産学官交流機構理事長(元特許庁長官)が、直面する課題について日中の協力を推進する提案を行った。この中で清川氏は、世界貿易機関(WTO)が進める「自由無差別のグローバル経済協力体制」を協力して推進強化することを求めている。具体的には、「日中韓FTA(自由貿易協定)の早期締結」「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の早期発足と、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の推進」「TPP(環太平洋連携協定)への中国の早期参加」を提案した。