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第4節 サイエンスパーク・ハイテクパークの主管官庁・機関

 中国における国家サイエンスパーク・ハイテクパークは、中国国務院の承認を得て設立されるケースと、該当中央官庁または複数の中央官庁の認定を受けて設立されるケースとがある。しかし、その後の運営、または各パークの具体的な事業内容の取り組みによって関連する機関が替わる場合もあり、また、中央レベルと地方レベルの共同推進によって展開されるパークも少なくない。これらの結果、個々のサイエンスパーク・ハイテクパークに対して複数の機関が関係したり、互いの関係が錯綜することも少なくない。

 例えば、54カ所の国家ハイテク産業開発区の中の一つである「武漢東湖新技術開発区」(Wuhan East Lake Hi-Tech Development Zone)は、1991年3月、中国国務院の承認を受けて第1次国家ハイテク産業開発区のグループに入った。その後、2000年7月に中国科学技術部、外交部の認定により「APECオープンハイテク産業パーク」、2001年7月に国家計画委員会(現国家発展改革委員会[1])の認定により中国唯一の「国家光電子産業基地」、2007年4月に国家発展改革委員会の認定により「国家バイオ産業基地」となった。更に、2007年11月には、本報告書の調査対象ではないが、国家標準化管理委員会[2]の指定により「国家ハイテク産業標準化モデルゾーン」となった。また、前述したように、中国初と言われるインキュベータも武漢国家ハイテク産業開発区の中に設けられている。

 このような状況から、武漢東湖新技術開発区は、他の国家ハイテク産業開発区と同様に、基本的には中国タイマツハイテク産業開発センターが主管・指導しているが、日常的な運営は武漢市政府が行っている。その一方で、サブパークの多様な事業内容にかかわる他の関連機関とも多層的な関係を持つようになった。特に、ソフトウェアを含む情報産業、バイオ産業、現代農業、資源産業といった特定分野に重点を置いた国家ハイテク産業開発区は、中国工業・情報化部、中国国家発展改革委員会、中国農業部、中国衛生部、及びそれらに所轄される関連研究機関などとも多様な関係を持っている(詳細は次章からの説明や後掲資料・個票を参照)[3]

 以上のように、中国におけるハイテク産業の育成、集積、発展と言う中長期的な目標の実現に向けて、「国家科学技術委員会」の時代から策定された中国「タイマツ計画」の継続的な具現化が進められている。特に国家ハイテク産業開発区や国家インキュベータなどの事業推進や発展に当たっては、現在も中国科学技術部が中心となっている。中国科学技術部に所管される事業法人であるタイマツハイテク産業開発センターが、「発展高科技、実現産業化」(ハイテクを発展し、産業化を実現する)と言う重大な任務を実現するために、「国家目標、地方組織、市場導向」(国家の目標を立案し、市場ニーズを満たすように推進する方向で、地域が主体的に実施する)と言う方針の下に、時には国家大学サイエンスパークに関する共同認定など、関連官庁の所管機関と共同で、特定分野の具体的な政策の立案や運営の指導業務を行っている場合が多い。

 一方、国家発展改革委員会は、中国におけるハイテク産業全般を視野に、マクロ面での計画や政策の立案に取り組んでおり、国家バイオ産業基地のように自らが認定や承認を行う場合もある[4]。本報告書の調査対象である10種のサイエンスパーク・ハイテクパーク及びそれらの下の多種多様なサブパークの関係は、非常に複雑であり、制度面から見た主管機関と運営面で見た主管機関とは、必ずしも完全に一致しているとは言えない。

表2.7 サイエンスパーク・ハイテクパークの認定機関
No 名称 認定機関 備考
1 国家ハイテク産業開発区 科学技術部  
2 国家大学サイエンスパーク 科学技術部、教育部 共同認定
3 国家バイオ産業基地 国家発展改革委員会  
4 国家イノベーションパーク   パークごとに中央官庁と地方政府の共同建設
5 中外共同運営国家ハイテクパーク   2カ国協定等
6 国家特色産業基地 科学技術部  
7 国家ソフトウェアパーク 科学技術部 工業・情報産業部も類似の制度があり
8 国家インキュベータ 科学技術部  
9 国家帰国留学人員創業パーク 科学技術部、教育部、人事部、外国専門家局 共同認定
10 国家知的財産実証パーク 国家知識産権局  
出典:現地情報をもとに技術経営創研が作成(2008年12月)

 上記の「国家バイオ産業基地」と「国家特色産業基地」については、それぞれ国家発展改革委員会中国科学技術部が認定するとされているが、具体的な認定規則などは現在公開されていない。また、「国家イノベーションパーク」の設立については、何らかの決まった手続きに沿って認定されるのではなく、時の関連政策に沿って、中央官庁と各地の政府などが、現地の事情に応じて個別に設立を進めている。

 具体的には、中国科学技術部と天津市政府が「国家バイオ医薬イノベーションパーク」を、中国科学技術部、中国工業・情報化部、中国商務部、山東省政府が「国家情報通信国際イノベーションパーク」を、中国科学技術部、中国商務部、江蘇省政府の支持の下で、中国科学院と江蘇省科学技術庁が「国家ナノテク国際イノベーションパーク」を、それぞれ共同で建設している。


[1] 国家発展改革委員会は、中国国務院体制改革弁公室の機能と、前国家経済貿易委員会の一部機能を吸収した前国家発展計画委員会をもとに、2003年5月6日に正式にスタートした国家級のマクロ統制を行う行政機関である。経済・社会発展政策を総合的に研究・制定し、全体のバランスを保ち、経済全体の体制改革を指導するマクロコントロール部門に当たる。

[2] 国家標準化管理委員会は2001年10月11日北京で創立された。その記念式典にて呉儀・国務委員(中共中央政治局候補委員)が国務院を代表してスピーチを行い、「わが国の製品の中には、レベルや品質が悪く、競争力が弱いと言う問題を抱える製品が存在する。問題の決定的な原因の一つは、基準そのものの低さである。品質を改善するためには、まず、基準を高く設定しなければならない。高い基準がなければ、良質の製品は生産できない」と強調した。

[3] また、中国における54の国家ハイテク産業開発区の中で、唯一農業に重点を置いている「楊凌農業ハイテク産業モデルパーク」はその事業内容の多様性から、例えば、中国科学技術部、中国商務部、中国教育部、中国建設部、中国農業部、中国水利部、中国国家環境保全総局、中国国家林業局、中国国家知識産権局等と多様な関係を持つ。

[4] このことについて、マクロ政策の策定機関が自ら何かの基地について認定を行うことが果たして適切なことと言えるかとの意見も一部にある。


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