取材リポート
トップ  > コラム&リポート 取材リポート >  File No.20-13

【20-13】たくましい中国人の姿浮き彫りに 博報堂が新型コロナの影響調査

2020年5月01日 小岩井 忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 将来の不安よりも自分の生活を見直したいと考える人が多い、など新型コロナウイルス流行を前向きに受け止めているたくましい中国人の姿が博報堂の調査で明らかになった。

 4月16日に博報堂が公表したのは、博報堂生活綜研(上海)が、北京、上海、広州、深圳、天津、青島、南京、蘇州、杭州、鄭州、武漢、長沙、東莞、成都、重慶、西安の16都市で2月24日~3月4日に実施した「新型コロナウイルス流行による生活者意識調査」。インターネットによる調査で、20~59歳の男女1,440人から回答を得た。中国では、現在世界中で当たり前になっている自宅待機をいち早く多くの人たちが強いられた。しかし、自宅滞在時間が増えたことで「将来の生活に対して漠然とした不安を感じるようになった」と答えた人は35.8%、「今の生活に物足りなさを感じるようになった」という答えも30.9%にとどまった。これに対し「自分の生活の在り方を見直したいと思うようになった」という前向きな答えをした人は57.2%と過半数を占めているのが目を引く。

生活意識・行動の変化

image

(博報堂プレスリリースから)

 新型コロナウイルス流行によって新しく始めた生活習慣や行動を問う設問に対し、最も多かった回答は「家族を大切にしたいと思うようになった」で、74%に上る。日本をはじめ海外でも外出自粛要請や外出禁止でドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)が増えていることが問題になっているが、中国では4人に3人は家族を大事にするようになったことを示している。

 外食ができない期間が長期化したことによる変化として「自宅での料理方法やメニューを工夫するようになった」と回答した人が57.4%と半数を超えたことも興味深い。「冷凍食品などの即食を利用する機会が増えた」と回答した28.1%を大きく上回っている。これは新しく始めた生活習慣や行動を問う設問に対し「健康を意識した食生活をするようになった」、「健康のために運動を意識して行うようになった」と答えた人がいずれも60%を超えていることとも合致する。「デリバリー利用が増えた」との回答は31.7%に留まっている。

 消費意識・行動の変化を見る設問では、「家の外より、中でできるレジャーの利用機会が増えた」(63.4%)、「オンラインスーパーを利用する機会が増えた」(56.2%)、「EC(電子商取引)を利用する機会が増えた」(54.6%)といった回答が上位を占めた。一方、「デリバリー利用が増えた」との回答は31.7%に留まっている。博報堂生活綜研(上海)は、新たな"インドア消費"が生まれているのがわかるとしている。

 情報に関する意識・行動の変化をみる設問に対しては、やはり「スマホを見る時間が増えた」と回答した人が69.7%に上った。50.8%の人が「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の他の人の投稿をよく見るようになった」と回答した。オンライン・アプリサービス利用での変化として、「ショート動画」、「ネットショッピング」とともにオンラインの情報やサービスと実店舗への来店や購買などを結びつける「O2O(Online to Offline)」サービスの利用が増加したと回答した人が、いずれも50%を超えていることも目を引く。

オンライン・アプリサービス利用の変化

image

(博報堂プレスリリースから)

 中国は新型コロナウイルス感染が始まった武漢の封鎖が4月8日に解かれ、対外政策でも積極的な支援活動が目立つ。博報堂生活綜研(上海)は今回の調査結果について、厳しい制限のもとで不自由な生活を余儀なくされながらも、自分や家族の生活をポジティブに見つめ直し前に進もうとするたくましい中国生活者の姿を浮き彫りにした、とみている。

 中国の現状については、3月27日日本記者クラブで記者会見した孔鉉佑駐日中国大使も新型コロナウイルスに対する戦いの結果、オンライン教育やオンラインエンターテインメントなど新たなサービス産業が大きく発展する可能性が見えてきた、と前向きな発言をしている。

 博報堂は2018年5月に、中国最大の検索サービス企業「百度」の日本法人「バイドゥ」と、中国市場をターゲットとする企業・団に最適な広告配信方策を提供することを目指す戦略的パートナーシップを締結している。また同年9月にはゲーム、ECなど幅広いネット事業で急成長している中国企業「ネットイース(網易公司)」と、個々のユーザーが求めていると思われる広告をネット配信する新しい手法を共同で開発し、中国国内でサービス提供を始めている。博報堂生活綜研(上海)は博報堂の子会社として2012年に上海に設立され、中国での企業のマーケティング活動支援やこれからの中国の新しい暮らしのあり方を洞察・提言する活動を行っている。

関連サイト

博報堂プレスリリース「博報堂生活綜研(上海)『新型コロナウイルス流行による生活者意識調査』を実施

関連記事

2020年03月30日 SPC取材リポート「サービス業の大きな発展も 孔中国大使新型コロナ抑制に自信

2020年03月13日 和中清の日中論壇「新型ウイルスと武漢そして今後の中国経済

2018年08月08日 SPC取材リポート「ネット広告配信サービスで提携 ネットイース (网易公司)と博報堂

2018年05月16日 SPC取材リポート「博報堂と「百度」日本法人が市場活動支援で提携