【20-26】2020年GDPプラス成長は中国のみ OECD経済見通し中間報告発表
2020年9月18日 小岩井 忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)
今年の世界全体の実質国内総生産(GDP)成長率はマイナス4.5%となり、2021年は5.0%に回復するという「経済見通し中間報告」を16日、経済協力開発機構(OECD)が発表した。2020年の成長率がプラスになる国はG20(金融世界経済に関する首脳会合)を構成する20カ国のうち、1.8%の中国のみとなっている。2021年末になっても、多くの国々の経済生産は依然として2019年末の水準に達せず、新型コロナウイルスの世界的流行が起きる前の予測を大幅に下回る、とOECDはみている。
G20国別の実質GDP成長率
(OECD経済見通し中間報告から)
中国は2019年の6.1%から2020年は1.8%に低下するが、2021年には8.0%に上昇すると予測されている。残る19カ国は軒並み2020年にはマイナス成長に落ち込むとされた。2020年にマイナス10.2%に急落すると予測されたインドは2021年にはプラス10.7%へ戻すとされた。2020年にマイナス3.8%の米国、マイナス5.8%の日本は、2021年にはそれぞれプラス4.0%、プラス1.5%と予測されている。
この中間報告で示された数字は、6月に発表されたOECD経済見通しほど悪くはない。主な要因は、今年上半期の中国と米国の経済生産と、大規模な政府の対応の成果が予測されたほど悪くなかったことによる。今後の見通しについては、新型コロナウイルスの脅威が現在の予測よりも早く薄れれば、企業と消費者の景況感が改善され、2021年には世界全体の経済活動は急速に活性化する可能性がある。しかし、ウイルスが再び勢いを増したり、より厳しいロックダウン(都市封鎖)措置が採られたりすれば、2021年の世界経済の成長率は2~3ポイント下落し、失業率がさらに高まり、投資が弱まる期間が長くなる恐れがある、としている。
さらに、需要が回復しなければ、交通、娯楽、レジャーといった封じ込め措置の影響が最も大きかったサービス部門の多くの企業が支払い不能に陥り、大規模な雇用喪失につながる。失業率が上昇すると、特に新興市場諸国で正式な雇用契約も社会保障もない数百万人に上る労働者の貧困と搾取のリスクが高まることになる、と警告している。
報告書は、財政、金融政策を含むさまざまな政策支援を継続して提供することを各国政府に求めた。その際、回復を強化するための短期的な支援の提供と、深刻な打撃を受けた部門の労働者と企業がより将来性のある活動へと移行するのを奨励する支援とのバランスを取る必要を指摘している。
報告書が勧めているのは、支援を存続可能な企業へ集中させる政策。デジタル化への投資と、今後数十年にわたって必要になるとみられる製品やサービスに投資するのを助ける支援だ。特に環境に配慮したエネルギー、インフラ、交通、住宅への投資を増やすことを支援の条件とするなど、回復計画の中に気候変動への取り組みをさらに強化することも求めている。
経済見通し中間報告の内容について説明するローレンス・ボーンOECDチーフエコノミスト(OECD WEB TVから)
報告書の内容についてローレンス・ボーンOECDチーフエコノミストは、真に持続可能な回復計画を実行して、経済を再活性化する政策の実行を各国政府に求めた。「世界は、急性の健康危機と、第二次世界大戦以来最も深刻な経済不況に直面している。政策当局は、中小企業が何よりも必要としているデジタル性能の向上と、環境にやさしいインフラと交通、住宅への投資を引き出し、より良い、より環境に配慮した経済復興を遂げるまたとない機会を手にしている」と語った。
関連サイト
OECD Economic Outlook September 2020
OECD東京センター「経済回復の先が見えない中で景況感を取り戻すことが必須」
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