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中国の交通問題「駐車場がない問題=停車難」とは

2019年10月18日

山谷剛史

山谷 剛史(やまや たけし):ライター

略歴

1976年生まれ。東京都出身。東京電機大学卒業後、SEとなるも、2002年より、中国では雲南省昆明市を拠点とし、中国のIT事情(製品・WEBサービス・海賊版問題・独自技術・ネット検閲・コンテンツなど)をテーマに執筆する。日本のIT系メディア、経済系メディア、トレンド系メディアなどで連載記事や単発記事を執筆。著書に「中国のインターネット史: ワールドワイドウェブからの独立( 星海社新書)」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち(ソフトバンク新書)」など。

 中国の都市問題でずっと提起されている「停車難」という話題がある。これは中国の駐車場不足で駐車が難しいことに関わるものだ。

 これは何を意味しているのか。新華網も転載した2017年4月の経済参考報の記事で、「停車難」について、重慶市交通計画研究院の周涛氏の発言を引用している。周涛氏いわく、「駐車場不足が目立つのは都市の中心地域で、繁華街、病院、学校、交通ターミナル、住宅地などで顕著だ」と指摘し、また「駐車場不足は都市の中心地域で顕著で、外側の新興住宅地や商業地には多数の駐車場がある」と語った。地下駐車場の場合、駐車スペースまでの走行距離が長く、駐車のテクニックも必要で、出口を見つけにくく、さらにしばしば車が駐車スペース以外で駐停車をしていると記事では指摘する。西南政法大学教授の徳安氏は「『停車難』が渋滞をつくりだし、また排ガスや車による騒音を必要以上に生み出している。直接的には生活コストがあがり、交通事故を生み出し、間接的には街の調和を乱し、幸福指数が下がる。ひいては政府の管理能力に疑問符がついてしまう」と警鐘を鳴らす。

 2019年9月9日付人民日報でも「停車難」について報道している。「都市のどの通りも、どの住宅地の敷地でも駐車していて、空いている駐車スペースがまるで見つからず、見つかっても車を止めるは針の穴を通すように難しい」という市民の声をとりあげた。こうした「停車難」の問題は「大都市から中小都市に移行している」と上海交通大学の李朝陽教授は語り、また2019年の該記事においても「朝晩の子供の送迎時間の学校周辺や、患者が多く集まる時間の病院周辺や、繁華街に人が集まる時間帯には確実に『停車難』の問題がある」と清華大学交通研究所の李瑞敏教授は指摘した。

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人口密集地で少ない駐車スペースを奪い合う

 さらにさかのぼること2015年には、中国政府発展改革委員会は「停車難」問題解決に向けた「中共中央国務院関于推進価格機制改革的若干意見」を発表している。自動車総量が増えたことで駐車場不足となっていて、「停車難」問題が起きているとした上で、「政府が駐車場利用料の定価を決める」「違反車両は厳しく罰する」ということをメインに、「駐車場の情報化や設備を改善し、電子決済を進め、支払いにかける時間を減らすことを奨励する」ことを目標として掲げている。

 つまるところ、2015年に既に判明している「停車難」問題に対して政府は対策を打ち出したものの、2019年現在も根本的な解決には至ってないわけだ。

 公安部の統計によれば、2019年6月末での中国全土の自動車保有台数は2億5,000万台で、うち自家用車は1億9,800万台である。北京、成都において車両数500万台が登録されているのを筆頭に、66都市で自家用車保有台数は100万台を超えている。駐車場としてデザインがされていない駐車場も有り、利用率は極めて低い。また国家発展改革委員会が2017年に発表したデータによると、大都市の自家用車と駐車場の数の比率は大都市で5:4、中小都市で2:1と、まったく足りてない。駐車スペースは5,000万台分以上不足しているという。

 そんな「停車難」の問題に積極的に取り組む都市がいくつかある。例えば内陸の寧夏回族自治区の区都銀川市はスマートシティについて取り組んでいて、百度(Baidu)が提供するオンライン地図サービスの「百度地図」と提携し問題を解決しようとしている。百度地図をカーナビモードにした上で、目的地を設定すると空きのある駐車場を指定し、仮にそこが満車となりそうな場合は、別の場所に指定を変えるというものだ。また初めて使う駐車場に止めた場合、駐車場の中のどこに止めたのか覚えにくいが、これも百度地図のほうで、どの場所に止めたかを記憶し、再度駐車場に行き車を見つけるときにはナビゲートしてくれる。これにより停車に必要な時間を平均で1割削減させることに成功したとしている。中国全土の全ての大都市に広がるにはもう少し時間がかかる。

 また中国で広く普及した微信支付(WeChatPay)や支付宝(Alipay)でのキャッシュレス払いに特化したスマート駐車場も登場した。その多くはQRコードを無人料金所の機械にかざして、現金を手渡すことなく支払うことにより、支払での時間削減を実現する。場所によっては車のナンバーを紐付けて、駐車場から出ると自動で、キャッシュレスで、駐車料金が引き落とされるスマート駐車場もある。これも「停車難」問題を解決する積み重ねのひとつのソリューションだ。

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キャッシュレス払いの駐車場広告

 駐車場不足について、中国各都市では、既に存在する駐車スペースをオーナーのほか、他人にも有料で利用ができるようにすることで解決を目指す。「共享車位」と名付けているので、日本語にするならシェア駐車スペースといったところか。これは駐車スペースオーナーにとってはビジネスのチャンスとあって、飛びつく人々もいたようだ。中国各メディアは各地のオーナーに取材している。

 北京晩報が取材したオーナーは、「シェア駐車スペース1台分1時間につき6元で設定している。6割が取り分なので3.6元が私の収入で、1ヶ月で多くて60元程度稼げる。とはいえ駐車場の賃料が月200元なので魅力的ではない」と言い、三湘都市報が取材したオーナーは、「去年病院の近くのビルでシェア駐車スペース19ヶ所をやりくりしたがもうやめた。人気の場所なので誘導する人が別に必要になるし、各スペースに移動しては駐車料金を回収しに行くのは面倒くさい。1ヶ月でやめた」と言い、燕趙晩報が取材した石家庄市のドライバーは「地下駐車場にある数百台分のスペースのどこがシェア駐車スペースなのかわからない。おまけにシェア駐車スペースのサービスが複数に分散している。駐車のために4つのアプリをインストールしたが、とにかく捜すのが困難」と語った。シェア駐車スペースのプラットフォームが分散する問題については、各都市がプラットフォームを新たに構築する動きがある。同時に各地方政府が法制度を整備していくとし、年内にも数都市で発表されるという。

 このように今後「停車難」問題解決に向けて様々な取り組みが行われ、ひいては渋滞解消へと向かうことが期待されている。最後に日本と比較した駐車場に関する話をおまけとして書いていきたい。

 日本で車を運転するシチュエーションを想像してほしい。駐車場を捜すにはどうすればいいか、考えてみてほしい。駐車したい場合は、道沿いの市営や公営の駐車場を捜すだろうし、コンビニやスーパーに車で行こうと思えばそこに駐車場がある。中国に行ったことがある人なら思い出してみればわかるが、駐車場が通り沿いに少なく、また多くのコンビニやスーパーには駐車スペースがないのだ。ショッピングモールには駐車スペースはあるが、そこに向けて車が集中し、駐車しようとする車で大渋滞が発生してしまう。したがって中国の「停車難」問題は、中国の街づくりの習慣に起因するところも大きいのではないかと考える。

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