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【14-018】中国の大気汚染防止の法制度および関連政策(14)

2014年 6月17日

金 振

金 振(JIN Zhen):
科学技術振興機構中国総合研究交流センター フェロー

1976年 中国吉林省生まれ
1999年 中国東北師範大学 卒業
2000年 日本留学
2004年 大阪教育大学大学院 教育法学修士
2006年 京都大学大学院 法学修士
2009年 京都大学大学院 法学博士
2009年 電力中央研究所 協力研究員
2012年 地球環境戦略研究機関(IGES) 特任研究員
2013年4月 IGES 気候変動・エネルギー領域 研究員
2014年4月より現職

その13よりつづき)

(4.2)自動車関連の法制度

自動車環境対策の分野

 中国において、自動車の生産から廃車に至るまでのライフサイクルには様々な行政管理主体(以下、規制機関)が関与し、それが自動車管理行政の「分散化」を招いたと指摘した。この「分散化」問 題は自動車管理行政の「非効率化」問題として捉えることも可能である。しかし、視点を変えれば、その根底には環境自動車対策の多重性、複雑性の問題がある点についても看過してはならない。 

 現在、中国において実施している自動車環境対策には、実に幅広い政策分野が含まれている(図1)。

図1

車体規制

 直接規制という意味において、車体規制は最も効果的な手法の一つである。車体規制は、1)排ガス規制、2)燃費規制、3)廃車規制、の3つの分野に分けることができる。

 環境保護部の所掌事務に属する1)排ガス規制は、さらに、エンジン排ガスの濃度規制(以下、排ガス規制)と排ガス浄化設備など付属機器に関する規格基準に分けられ、い ままで計29の国家基準が公表されている(2005年〜2011年)。

表1 新規生産自動車の排ガス基準の適用状況

図2

 表1は、新規自動車排ガス規制の導入時期についてまとめたものである。表1から分かるように、排ガス規制の導入時期は、自動車の種類、エンジンタイプによって導入時期が異なっている。導 入時期がそれぞれ異なる理由として以下のような点が挙げられる。

自動車環境基準の統一性の欠如

 中国における自動車環境基準は、エンジンタイプ(ディーゼル車、ガソリン車、LPG燃料車)、車種(重型、軽型;自動車、非道路移動機器)ごとに策定されるだけではなく策定時期も異なる。結果、基 準体系のみならず適用時期においても統一性が欠ける。

非道路移動車両に関する規制の出遅れ

 そもそも非道路移動車輛(非道路移動機器)に関する環境対策は全体的に遅れている。非道路移動車輛とは「エンジン(原動機)を搭載している機械、運 送可能な工業設備であって乗客または貨物の運搬を目的としない車輛」のことで(典拠:GB26133—2010)、ショベルカーやブルドーザ、農業トラクターなどがこれに含まれる。中国道路交通法における「 自動車」の定義には、非道路移動車輛が含まれない。それは、非道路移動車輛は、車輛登録や車検制度の適用を受けないことを意味する。それゆえ、長い間、車両数の把握を含む行政管理が進まず、結果、環 境対策の遅れを招いた。非道路移動車輛に関する環境基準が制定されたのは2010年、つい最近のことであり、その実施はさらに遅く2011年3月1日からである。今日に至っても、非 道路移動車輛に関する管理体制に抜本的な変革があったとはいい難い。

規制適用時期を巡る計画と実施のずれ

 規制適用時期に関し、規制計画と実施の時期のずれがとりわけ指摘するに値する。例えば、自動車排ガスの第三段階国家基準(以下、国Ⅲ)の適用時期は、計画予定より半年の遅れが生じ、国 Ⅳ基準の場合のディーゼル車の適用時期は二年半の遅れが発生した。

 国Ⅲの適用時期が遅れた背景には、重複した国家基準の存在と係る適用時期の矛盾にある。2005年、旧環境保護局(現在の環境保護部)は、エンジンタイプ(GB17691—2005)と車種別( GB18352—2005:軽型車が対象)に策定された2種類の排ガス基準が公表された。両基準はいずれも国Ⅲについて定めたものあり、一部の規制領域が重複(軽型ディーゼルエンジン搭載車、軽 型LPG等燃料エンジン搭載車)していた。それにも関わらず、両基準はそれぞれ異なる適用時期を採用していたため、重複領域における基準適用の時期を巡り矛盾が生じた。この問題を解決するため、2008年6月、環 境保護部は通達「自動車排ガス基準の適用時期について」(環弁函[2008]384号)において適用時期の統一化を図った。

 国Ⅳの適用時期が遅れた背景に関しては、低公害燃料の供給が予定とおり進まなかった経緯がある。2005年公布した国家基準GB17691—2005は、デ ィーゼル車への国Ⅳ基準の適用予定日を2011年1月1日と定めていた。しかし、2011年末になっても階環境基準をクリアした第四段階ディーゼル燃料の普及が進まなかったため、国 Ⅳ基準の適用が現実的ではないと判断した環境保護部は、2011年第92号公告を持って、ディーゼル車への国Ⅳ基準適用時期を2013年7月1日に変更した。これは計画より二年半遅れた計算になる。



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