第43号:光触媒技術
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特集巻頭言:光触媒技術

中国科学技術月報2010年5月号(第43号)  2010.5.7発行

はじめに

 光触媒は1972年世界的に権威のある学術誌Natureで初めて発表されました。これは、二酸化チタン(TiO2)に光を照射することによって水を人工的に酸素と水素に分解できるという報告で、世 界中に大きなインパクトを与えました。この論文を契機に著者の本田健一先生、藤嶋昭先生のもとに世界中から多くの研究者が訪れて理論と技術を学び、今では世界各国で更なる開発・革新が進んでいます。既 に様々な光触媒商品が日本や中国、欧米諸国で誕生しており、それに伴い特許出願数も年々増えています。光触媒の可視光化が実現されると3兆円規模の市場になる可能性があると言われています。今日では、中 学校や高校の教科書にも登場するようになり、社会一般にも「光触媒」という言葉が広く浸透するようになりました。

 酸化チタンに代表される光触媒は、光を照射することによって触媒機能が活性化し、通常では困難な化学反応を促進する物質です。もちろん触媒ですので、光触媒自身は変化せずに半永久的に効果を発揮します。身 近な光触媒製品としては、強い酸化作用を利用した抗菌・除菌製品、また、超親水作用を利用したセルフクリーニング効果のある窓や外壁などが挙げられます。今年開催される上海万博の日本館にも、日 本を代表する技術として光触媒が用いられています。未来の環境浄化テクノロジーとしても期待されています。

 今回の特集では、日中両国の発展した光触媒研究の現状について紹介します。また、光触媒の発明者、ノベール賞候補者とも言われています藤嶋先生にもご寄稿頂きました。読 者の皆様のご理解を深める一助となれば幸いです。

中国総合研究センター

記事一覧

光触媒との出会い

・・・ 藤嶋 昭(東京理科大学 学長)

光エネルギー変換を目指した光触媒技術の開発

・・・ 工藤 昭彦(東京理科大学理学部 教授)

高効率光触媒材料の研究開発

・・・ 葉 金花(物質・材料研究機構 光触媒材料センター長)

日本における光触媒の応用

・・・ 中田 一弥(神奈川科学技術アカデミー 研究員)

生物から学ぶスマート界面材料

・・・ 江 雷(中国科学院化学研究所研究員、北京航空航天大学化学・環境学院院長、中国科学院院士)

中国の光触媒技術応用の現状及び展望

・・・ 付贤智(中国工程院院士、福州大学 学長)

中国の光触媒産業の現状および応用

・・・ 只金芳(中国科学院理化技術研究所 教授)

中国における光触媒材料の研究開発

・・・ 劉興軍(アモイ大学材料学院 院長)/周忠華(アモイ大学 材料学院 教授)

有機汚染物質の光触媒分解およびそのメカニズムの研究

・・・ 趙進才(中国科学院化学研究所研究員、国家重大科学研究計画プロジェクト首席科学者)

二酸化チタンの光触媒反応に基づく光機能材料の設計と調製

・・・ 張 昕彤(東北師範大学物理学院先進光電子機能材料研究センター 教授)