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【19-007】中国の外商投資法がようやく成立

2018年4月3日

伊藤 ひなた(Ito Hinata)

中国弁護士、アクトチャイナ(株)代表取締役社長。北京大学卒。日本企業の中国進出・事業再編・撤退、危機管理・不祥事対応、労務紛争等中国法業務全般に携わる。

 2019年3月15日、中国の外商投資法が立法機関である全国人民代表大会で可決され、2020年1月1日より発効することとなった。外商投資法は、計6章42条で構成される法律であり、2015年にその草案が公表されたが、4年間の長い検討期間を経てようやく成立に至った。

 外商投資法の発効に伴い、従来の「外資三法」(即ち、「中外合弁企業法」、「外資企業法」及び「中外合作経営企業法」である。)が失効することとなり、外商投資企業に関して、今まで「外資三法」に基づき規制・管理が行われてきたところ、今後は、企業の組織形態を問わず、統一して外商投資法の適用を受けることになる。

 本稿では、外商投資法の立法趣旨及び主な内容を紹介することとする。

1.立法趣旨

 中国は、1980年代頃より、外国投資者による中国への投資を規制する目的で、投資先の事業体によって異なる「中外合弁企業法」(1979年制定)、「外資企業法」(1986年制定)及び「中外合作経営企業法」(1988年制定)といった「外資三法」を制定し、「外資三法」は、制定後の約40年間、中国における外資誘致と外資規制の基本法としての重要な役割を果たしてきた。

 しかし、中国の経済発展及び国際社会の変化に伴い、「外資三法」は、「全面的に改革を推し進め、さらに開放を拡大する」といった中国政府の方針へ対応できなくなってきており、また、外国投資に対する規制緩和が図られている近年では、投資先の事業体によって異ならない、統一した「外商投資法」の制定が求められるようになった。

 立法趣旨について、外商投資法の立法担当者の解説によれば、外商投資法の制定・施行により、①積極的な対外開放の拡大及び外商投資の促進という主要な理念を貫きさせ、②外商投資の基本法として、外商規制の基本的な枠組みを構築し、③中国の実情に即し、かつ国際規則及び慣例に沿った外商投資法律制度の構築を目指し、④中国企業及び外商投資企業との同等な取り扱いを徹底すること等が挙げられた。

2.外商投資法の主な内容

(1)適用範囲(法2条)

 外商投資法は中国国内における外商投資に適用されることとされており、「外商投資」とは、外国の自然人、企業及びその他の組織(以下「外国投資者」という)による、中国国内での直接又は間接的な投資活動をいい、具体的には次の投資活動が含まれる。

  • 外国投資者が単独又はその他の投資者と共同して中国国内において外商投資企業を設立する活動
  • 外国投資者が中国における企業の株式、出資持分、財産持分又はその他これらに類似する権益を取得する活動
  • 外国投資者が単独又はその他の投資者と共同して中国における新規プロジェクトに投資する活動
  • 法律、行政法規又は国務院の規定するその他の方法により投資する活動

(2)ネガティブリスト制度及び内国民待遇

 中国は、外商投資について、「参入前内国民待遇」と「ネガティブリスト」とを組み合わせた管理制度を実施することとされた(法4条)。参入前国民待遇とは、投資する段階で、中国投資家による投資と外商投資とを同様に取り扱うことである。ネガティブリストとは、外商投資を行うことが禁止又は制限される特定分野のリストであり、国務院により公布され、又は承認されることとされた(法4条)。外商投資が禁止される分野については、外国投資者は投資を行ってはならず、外商投資が制限される分野については、外国投資者は一定の条件を満たす限り投資することができることとされた。なお、ネガティブリスト以外の分野については、中国投資家外国投資家一致の原則により管理することとされた(法28条)。

(3)平等原則

 企業の発展を支援する国の各政策は、外商投資企業にも平等に適用されることになる(法9条)。外商投資に関する法令を制定する際には、適切な方法により外商投資企業の意見や提案を求めるべきこととされる(法10条)。国は、外商投資サービス体系を構築し、外国投資者及び外商投資企業に対して、法令・政策・投資プロジェクト情報等のコンサルティング及びサービスを提供する(法11条)。国は外商投資企業が公平に政府調達活動に参加することを保障し、政府は外商投資企業が中国国内で生産する製品又は提供するサービスについて平等に取り扱うべきこととされた(法16条)。また、外商投資企業は株式公開、債券発行等の方法により資金調達を行うことができることとされた(法17条)。

(4)優遇原則

 国は、外国投資者について、特定の業界、分野及び地区への投資を奨励し(法14条)、地方政府は、法令で認められた権限の範囲内で、外商投資奨励政策及び利便化措置を制定することができることとされた(法18条)。

(5)収用の禁止

 国は、外国投資者による投資に対して収用を行わないこととされた。特殊な事情があって、公共利益のために収用・徴用が必要となる場合にも、法定の手続に基づき収用・徴用を行わなければならず、また、適時に外国投資者に対して公平かつ合理的な補償を行わなければならないこととされた(法20条)。

(6)その他の保護制度

 この他にも、海外送金の確保(法21条)、知的財産権の保護(法22条)、営業秘密の保護(法23条)、当局による適正な職務履行(法24条)及びクレーム対応体制の構築(法26条)等が定められている。

(7)情報報告制度及び安全審査制度

 国が外商投資情報報告制度を構築し、外国投資者又は外商投資企業は企業登記システム及び企業信用情報公示システムを通じて商務部門に投資情報を報告しなければならない。外商投資情報報告の内容及び範囲は、確実に必要な情報に限定するという原則の下で確定することとなり、政府部門間の情報共有により取得できる投資情報については、更なる報告を求めることができないこととされる(法34条)。また、国が外商投資安全審査制度を構築し、国の安全に影響を与え、又はそのおそれのある外商投資について安全審査を行うこととされた(法35条)。

(8)組織形態等の変更

 外商投資法の発効に伴い、「外資三法」が同時に失効するため、外商投資企業の組織形態等(法定代表や意思決定機関の定めなど)については会社法等の法令を適用することとなる。すなわち、外商投資法発効日の2020年1月1日以降に設立される外商投資企業は、同法の規定に合致する必要があるが、2020年1月1日以前に設立された外商投資企業については、同法発効日から5年間(即ち、2024年12月31日まで)の経過期間が設けられている。従来の「外資三法」に基づく組織形態等は外商投資法に抵触する場合、経過期間満了までに改正を行わなければならない。

3.まとめ

 外商投資法は、外国投資者による投資活動を規制する基本法として、外国投資者及び外商投資企業に重大な影響を与えるため、外国投資家を含め国内外から大きく注目を浴びている。今後、外資規制に関する各制度の詳細は、外商投資法を基本として今後制定されることとなる実施細則等において定められることになるので、引き続き注視するべきかと思われる。

以上