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【23-11】中国への親近感さらに低下 ロシアも悪化 内閣府調査

小岩井忠道(科学記者) 2023年02月09日

 中国に親しみを感じる日本人は17.8%と前年に比べ2.8ポイント減ったことが内閣府の「外交に関する世論調査」で明らかになった。2014年10月と2016年1月調査の最低値14.8%は上回るものの、その後4年間続いた回復時期を経て2021年9月の調査から再び低下に転じた流れは今回も止まらなかった。世界八つの国・地域に対する比較では、中国より親近感が低い国・地域は、ロシアだけ。「アフリカ、例えば南アフリカ、ケニア、ナイジェリアなど」や「中東、例えばトルコ、サウジアラビアなど」も下回る数値となっている。

 3日公表された「外交に関する世論調査」は、1975年から毎年実施されている。調査員による個別面接調査法が新型コロナ感染拡大によって継続不能となり、2020年以降は郵送法による調査に変わった。今回は昨年10月から11月にかけて全国18歳以上3,000人を対象に実施し、1,732 人から回答を得た(有効回収率57.7%)。

親しみを感じる人17.8%

 中国に対する親近感を聞いた調査項目の結果は、「親しみを感じる」2.2%、「どちらかというと親しみを感じる」15.6%を合わせ、親しみを感じる人は17.8%に留まっている。前年の調査結果は、「親しみを感じる」3.4%、「どちらかというと親しみを感じる」17.2%を合わせると20.6%だったから、前年に比べ2.8ポイントの減少。一方、「親しみを感じない」45.9%、「どちらかというと親しみを感じない」35.9%を合わせると81.8%となり、前年の79.0%に比べ、2.8ポイント増となった。親しみを感じる人との大きな差はこの1年でさらに開いたことになる。

中国に対する親近感

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(内閣府「『外交に関する世論調査』の概要」から)

42年前8割弱が親しみ感じる

 経年変化を見ると、日中共同声明の調印により日中国交が正常化された8年後の1980年の調査で中国に「親しみを感じる」日本人は78.6%という最高値を記録している。この年「親しみを感じない」も14.7%とこれまでの最低値だったが、1989年以降急速に差が縮まり、わずかに逆転する時期も経て、2004年以降になると「親しみを感じない」人が「親しみを感じる」人を大きく上回る状況が続く。

 年齢別でみると20歳代(2016年調査からは18~29歳に変更)に「親しみを感じる」人が比較的多い傾向が10年以上続く。前回も41.6%と多かったのが、今回は28.0%と大幅に減った。逆に年齢別で飛び抜けて少ない58.4%だった「親しみを感じない」人が72.0%と大幅に増えている。中国に対する親近感が他の年齢層より高かった18~29歳の変化が、日本人全体の中国に対するこの1年の親近感低下に大きく影響したことがうかがえる。

中国に対する親近感経年変化

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(内閣府「『外交に関する世論調査』の概要」から)

 親近感を調べる調査対象は、今回、中国を含む八つの国・地域となっている。これら八つの地国・地域の比較からも中国に対する日本人の親近感の冷え込みぶりがうかがえる。「親しみを感じる」と「どちらかというと親しみを感じる」を合わせた数字が最も高かったのは、米国で87.2%。次いでオーストラリア78.5%、韓国45.9%、「中南米、例えばメキシコ、ブラジル、 ジャマイカなど」42.1%、「中東、例えばトルコ、サウジアラビアなど」29.7%、「アフリカ、例えば南アフリカ、ケニア、 ナイジェリアなど」27.0%、中国17.8%、ロシア5.1%となっている。

 近年、この調査対象国・地域は、米国、ロシア、中国、韓国が毎年変わらず、残り4国・地域は、今回の対象国・地域のほか、インド、東南アジア、欧州、中央アジア・コーカサスを加えた8国・地域が2年に1回代わる代わる調査対象になっている。前回調査で「親しみを感じる」日本人の比率は、毎回、調査対象となっている米国が88.6%、ロシアが13.1%、中国が20.6%、韓国が45.9%。一番低いロシアの数値が今回よりはだいぶ高い(この1年で急落)のが目を引く。今回の調査に含まれていなかった4地域・国はどうか。インド51.4%、東南アジア(タイ、インドネシアなど)71.5%、ヨーロッパ(イギリス、フランス、ドイツなど)71.4%、中央アジア・コーカサス(ウズベキスタン、ジョージアなど)22.6%という結果だ。

 結局、中国に対しては、中央アジア・コーカサス(ウズベキスタン、ジョージアなど)を含めた10の国・地域より親しみを感じる日本人が少なく、唯一、下回るのはロシアだけという国になっている。直近10年間の調査結果を見ても、日本人が親しみを感じる国・地域で中国を下回ったのは2017~2022年のロシア以外にない。

各国・地域に対する親近感

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(内閣府「『外交に関する世論調査』の概要」から)

 

各国・地域に対する親近感(2021年調査結果)

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内閣府「『外交に関する世論調査』(2021年)」から作成)

関係良好と見る人11.0%に低下

 現在の日本と中国の関係はどう見られているか。前回調査で14.5%まで落ちこんでいた「良好と思う」(「良好と思う」0.9%、「まあ良好だと思う」13.6%)は、さらに悪化し、11.0%(「良好と思う」0.3%、「まあ良好だと思う」10.7%)に低下した。他方「良好だと思わない」と「あまり良好だと思わない」と答えた人を合わせると、前回の85.2%から84.4%とわずかながら減っている。しかし、無回答が4.6%と前回より大きく増えている。全体としてみれば、日本と中国との関係を良好だと思わない人が大半という状況は変わらない。

現在の日本と中国との関係

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(内閣府「『外交に関する世論調査』の概要」から)

関係重要視する人も減少

 今後の日本と中国の関係についてはどうか。調査は、日中両国の関係の発展が両国や、アジアと太平洋地域にとって重要と思うかどうかを聞いている。重要と思う人は「重要だと思う」35.3%と「まあ重要だと思う」38.2%を合わせ73.5%。重要と思わない人は「重要だと思わない」8.4%と「あまり重要だと思わない」13.7%を合わせて22.1%となった。前年調査に比べると、重要と見る人が5.2ポイント減り、重要でないとみる人が1.3ポイント増えている。

今後の日本と中国との関係の発展
(両国や、アジア及び太平洋地域にとって重要か)

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(内閣府「『外交に関する世論調査』の概要」から)

 これら二つの調査項目は中国を含む5カ国が対象となっている。「良好だと思う」「まあ良好だと思う」を合わせた数字が最も高いのは米国の84.9%。次いでオーストラリア84.4%、韓国28.3%で、11.0%の中国より低いのは、こちらもロシア3.2%のみだ。一方、日本との関係発展がその国と日本、さらにアジア・太平洋地域にとって重要と思うか、という質問に対する答えはやや異なる。「重要だと思う」と「まあ重要だと思う」人を合わせた数字が最も高かったのは、米国で93.8%。次いでオーストラリア85.1%、中国73.5%、韓国67.9%、ロシア57.8%という結果だ。その国に親しみを感じる、あるいは現在の関係を良好と見るかどうかという見方と、今後の両国関係の発展を重要と見るかどうかは同一視できないとする日本人が少なくないことを示している。中国に関しては、より親しみを感じるオーストラリアに比べると両国関係の発展を重要とみる日本人もまた少ない。しかし、同じくより親しみを感じる韓国よりは両国関係の発展を重要とみる日本人が多い、という結果となっている。

現在、今後の2国間関係に関する5カ国調査結果比較

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(内閣府「『外交に関する世論調査』の概要」から)

 中国との協力は引き続き重要とする日本のシンクタンクの報告書や提言が公表されているものの、中国に対する日本人の親近感の低下に加え、中国人の日本に対する好感度も低下しているという報告もみられる。メディアの果たす役割についての調査・研究などを行っている公益財団法人新聞通信調査会は、米国、英国、フランス、中国、韓国、タイの6カ国を対象に、「諸外国における対日メディア世論調査」を2015年から毎年実施している。昨年2月に公表された最新の調査結果(調査実施時期は2021年11~12月)によると、日本に「好感が持てる」と答えた中国人は、26.3%にとどまる。前年の39.7%に比べ大幅な低下で、調査対象6カ国中、最も低い。

 一方、2005年から「日中共同世論調査」を続けている日本の民間非営利シンクタンク「言論NPO」と中国共産党の機関「中国国際出版集団」が昨年11月に公表した最新の調査結果(調査実施時期は2022年7~9月)は、中国と日本の経済・貿易関係が今後「増加する」とみる両国民がこの1年でともに増えていることを示している。日中経済協力が自国の将来にとってこれからも「大切だと思う」と回答した中国人は77.4%、日本人は73.0%に上る。ただし「両国経済は相互に補完しており、win-winの関係を築くことができる」と見る中国人は前年より3.6ポイント増えて75.2%となったのに対し、日本人は前回より3.9ポイント増えたものの、28.2%にとどまる。「両国経済は競合しており、win-winの関係を築くことは難しい」と見る日本人が依然42.5%(前年より1.9ポイント減)おり、現状に関しては、肯定的な見方をする人がさらに増えた中国との差が目立つという結果となっている。

関連サイト

内閣府「『外交に関する世論調査』の概要

内閣府「外交に関する世論調査一覧

新聞通信調査会「第8回 諸外国における対日メディア世論調査 調査結果

言論NPO「「台湾海峡」「ウクライナ侵略」について中国国民の意識が世界初で明らかに~第18回日中共同世論調査結果を公表しました~

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