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【22-07】「日本に好感持つ中国人大幅減 対日メディア世論調査で判明」

2022年03月03日 小岩井忠道(科学記者)

 日本に好感を持つ中国国民の割合が26.3%と、前年の39.7%に比べ大幅に低下したことが、新聞通信調査会の調査で明らかになった。5年前の調査に次ぐ低い数字で、調査対象の欧米、アジア6カ国中で、最も低い。

日本に好感を持つ中国人26.3%

 新聞通信調査会は、2015年から米国、英国、フランス、中国、韓国、タイの6カ国を対象に自国の新聞に対する信頼度や報道の自由、日本への関心などについて調べる「諸外国における対日メディア世論調査」を毎年、実施している(2018年は2回)。2月26日に公表された第8回調査(昨年11~12月実施)結果によると、自国以外の調査国と日本に対し「どう思っているか」を尋ねた最初の質問に対し、日本に「好感が持てる」と答えた中国人は、26.3%にとどまった。

 この数字は、前年の調査に比べ13.4ポイントの大幅な減少。前年、26.6%と最低だった米国が今回は29.0%と2.4ポイント上昇したため、日本は調査対象国中、中国国民にとって最も好感度が低い国となった。「好感の持てる国」と答えた中国国民の割合が最も高かったのはフランスで62.5%。次いでタイ54.7%、英国46.7%、韓国43.6%となっている。

 中国に最初にこの質問をした2016年の第2回調査から、中国国民の日本に対する見方はどのように変化したか。第2回27.8%、第3回23.4%、第4回27.9%、第5回33.9%、第6回33.5%、第7回39.7%だったから、今回より低かったのは2017年2月実施の第3回調査だけとなる。

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(新聞通信調査会「第8回 諸外国における対日メディア世論調査 調査結果」から)

日本に関する報道も低い関心

「日本のことが報道されると関心を持つか」という問いに対し、「とても関心がある」ないし「やや関心がある」と答えた中国国民の割合も、前回より7.4ポイント減の51.7%となっている。これまでの調査で最も小さい数字で、日本に対する関心が低下していることが見て取れる。英国人の29.4%に比べるとだいぶましとはいえ、米国人(50.9%)、フランス人(51.7%)とほとんど変わらないか全く同じ。同じアジアのタイ(80.9%)、韓国(64.5%)の人々よりも日本に関する報道に対して関心を持つ人がだいぶ少ないという結果になっている。

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(新聞通信調査会「第8回 諸外国における対日メディア世論調査 調査結果」から)

中国にも厳しい他国の目

 では中国に対する調査対象国の好感度はどうか。「好感の持てる国」と答えた国民の割合が最も高かったのは、タイの57.4%。他はだいぶ下がり、フランス32.5%、米国31.0%、英国29.2%、韓国23.0%。これまでの数字を見ていると第2回、第3回調査はすべての国が40%台か50%台で、第4回調査も韓国が30%台に低下したのを除き、残りはすべて50%台となっていた。

 好感度の低下が目立つようになったのは、2018年11~12月実施の第5回調査から。英国、フランスの約10ポイントをはじめすべての国が前回調査から数字を落とし、前回の第7回調査(2020年12月~2021年1月実施)でも、米国の14.6ポイントを最高に新型コロナウイルス感染拡大で調査ができなかった英国を除くすべての国が好感度を下げた。今回の調査結果では、韓国がさらに下げたほか、他の国の回復もごくわずかにとどまり、調査対象国が引き続き中国に厳しい目を注いでいる現実がうかがえる結果となっている。

日本の印象悪化他の調査でも

 中国国民の日本に対する好感度が急激に低下している現実は、非営利シンクタンク「言論NPO」が中国国際出版集団と2005年から17年間継続実施している日中共同世論調査でも明らかになっている。昨年10月に公表された「第17回日中共同世論調査結果」によると、日本に対し「良くない印象」を持っている中国人は、前年の52.9%から66.1%と13.2ポイントも増加した。「良い」印象も前年の45.2%からは32.0%へと大きく落ち込んだ。日本に対する印象が悪化に転じるのは、8年ぶり、としている。

 さらに、「現在の日中関係」を「悪い」と考える中国人も、前年の22.6%から42.6%と20ポイント増加している。日中関係を悪いと考える中国人は、2016年以降、減り続けていたが、悪化に転じたのは5年ぶり。「言論NPO」が2016年に公表した「日中韓共同世論調査」では、日本に対し、「信頼できない」と答えた中国人は78.9%に上っていた。

 一方、日本国民の中国に対する「印象」も前々年の調査から悪化しており、改善は見られていない。中国に「良くない」という印象を持つ日本国民は90.9%(前年89.7%)に上り、過去4番目に高い数値となっている。これらの結果から「言論NPO」は、日中関係が最も困難な時期とされ、日中共同世論調査を始めた年でもある2005年の水準に日中両国民の意識は戻りつつある、との見解を明らかにしている。

 新聞通信調査会は、新聞通信事業に関する調査研究、資料収集、講演会の開催などを行っている公益財団法人。「諸外国における対日メディア世論調査」は、各国1,000人を対象に、米国、フランス、韓国が電話調査、英国、中国、タイは面接調査で実施している。各国とも男女ほぼ同数、年齢も10歳代(18、19歳)から70歳以上まで年代がほぼ均一になるよう調査対象者を選び、電話調査では、回答の選択肢の順番をランダムに読み上げて答えに偏りがないようにする手法も取り入れている。

関連サイト

新聞通信調査会プレスリリース「第8回 諸外国における対日メディア世論調査 調査結果

新聞通信調査会「第8回 諸外国における対日メディア世論調査報告書

新聞通信調査会「諸外国における対日メディア世論調査

言論NPOプレスリリース「中国国民の日本に対する意識が、この一年間で急激に悪化したことが明らかに

言論NPO「第17回共同世論調査分析

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