7.原子力開発分野
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7.2.1 原子力開発分野の現状

(1) 原子力発電

1)原子力発電所の実績

 中国電力企業連合会によると、中国では2006年、2007年と2年続けて1億kWを超える発電所が新たに運転を開始し、2007年末時点での合計発電設備容量は7億1329万kWに達した。電源別の内訳は、火力発電5億5442万kW(総発電設備容量に占める割合77.7%)、水力発電1億4526万kW(同20.4%)、原子力発電907万kW(同1.3%)などとなっている。

 2007年の総発電電力量(3兆2559億kWh)に占める各電源の割合は、火力発電82.9%、水力発電15%、原子力発電1.9%となった。火力発電のうち、石油と天然ガスの占める割合は両方合わせても数%程度に過ぎず、ほとんどが石炭火力である。

 国家エネルギー局によると、2008年9月までの原子力発電電力量は517億kWhを記録し、前年同期に比べて13%増加した。このうち送電網に供給された電力は487億kWhとなり、前年同期比13%増となった。発電所の性能指標となる平均稼働率は、前年同期から2.7ポイント上昇し88.7%を記録した。

2)原子力発電所の運転・管理

 中国の原子力発電所は、国が定めた原子力安全法規に従い、安全確保を最優先に運転が行われている。これまでに、各原子力発電所間で運転経験を共有し、安全性を全体的にレベルアップすることをねらった「原子力発電所運転経験交流管理弁法」と「原子力発電所運転経験交流実施細則」が制定、実施されているほか、原子力発電事業者間の情報交換を促進するための「中国原子力発電運転情報ネットワーク」が運用を開始している。

 こうした努力の結果、中国の原子力発電所は世界的に見てもトップレベルの安全実績を達成している。計画外の自動スクラム(停止)件数は、基数の増加にもかかわらず減少傾向を示しており、2002年(稼働中5基)が7件であったのに対して、2006年(稼働中9基)は2件であった。

 原子力発電所での異常事象の発生件数も顕著に減少してきている。8段階で評価される国際原子力事象評価尺度(INES)に基づくと、レベル2以上の事象は1件も報告されていない。2008年9月までの実績でも、異常事象が13件発生しているが、すべてレベル0以下の事象である。なおINESでは、レベル0を「安全上重要ではない事象」、レベル1から3までを「異常な事象」、4から7までを「事故」として定義している。

 そうしたなかで中国では、運転中の原子力発電所の稼働率をさらに向上させる動きが活発化している。稼働率向上には、「計画外停止の回避」、「燃料交換停止期間の短縮」、「長期サイクル運転の導入」が大きく貢献する。

 中国有数の原子力発電事業者である広東核電集団有限公司は、高燃焼度燃料を用いた18ヵ月(長期)サイクル運転を大亜湾発電所で実施している。同社は、大亜湾発電所での成功を踏まえ、嶺澳(Ⅰ期)、嶺澳Ⅱ期発電所でも採用を予定している。

3)原子力発電所の国産化

 「原子力発電中長期発展規画」では、原子力発電開発にあたって技術路線を統一し、原子力発電の安全性と経済性を重視したうえで、「中国を主体として外国と協力することを堅持するとともに、外国の先進的な技術を導入し国内の組織を統一して消化・吸収する」という原則が明らかにされた。

 また、「さらに新しいものを創造し、先進的な加圧水型炉(PWR)のプロジェクトの設計、設備製造、建設、運転管理の自主化を実現する」という方針が打ち出された。

 中国では2008年11月現在、11基の原子力発電所が稼働している。このうち、完全な自主設計と言えるものは秦山(PWR、30万kW)しかない。秦山Ⅱ期(同、65万kW)も自主設計だが、フランスの技術をベースにしている。これ以外の原子力発電所はフランス、カナダ(CANDU炉)、ロシアから輸入した。

国産化率は、秦山発電所の70%が最も高く、フランスから輸入した大亜湾発電所はわずか1%、また同発電所の8年後に運転を開始した嶺澳発電所でも30%に過ぎない。国内の原子力発電所としては初めて「CPR1000型炉」を採用し、2005年に着工した嶺澳Ⅱ期発電所では1号機で50%、同2号機で70%に達する。

 中国は、遼寧省で建設中の紅沿河原子力発電所Ⅰ期プロジェクト(PWR、100万kW級4基)を国産化率引き上げの実証プロジェクトとして位置付けている。同発電所に採用される原子炉は、計画中の多数の原子力発電所で採用が予定されている「CPR1000型炉」で、主要設備に限った国産化率を85%以上としたうえで、1・2号機については70%、3・4号機については80%の国産化を達成することを目標として掲げている。プロジェクト全体として国産化の目標は75%以上に設定されている。

また、紅沿河Ⅰ期プロジェクトでは、原子力級バルブの国産化率が60%に達する見通しとなった。従来は、原子力2級と3級のバルブの96%、原子力1級のバルブの100%を輸入に頼っていた。

4)原子力発電所の投資・収益

 中国では健全な原子力発電基準・規格体系が構築されていないとの理由から、「原子力発電中長期発展規画」では、「原子力発電の基準と安全体系が完全になるまで、国は原子力発電所の建設、運転・管理、運営に参加する企業の資質について適切に管理する」との方針が明らかにされた。こうしたことから、他の発電プロジェクトが国家発展改革委員会の承認事項であるのに対して、原子力発電プロジェクトは国務院の承認事項となっている。

 建設に多額の費用を要する原子力発電所は地元に対する経済効果も大きいため、地方政府も原子力発電所の誘致には積極的な姿勢を示しており、原子力発電開発は事業者と地元政府の二人三脚の形で行われている。

 一方で、中央政府の意向が具体的に反映されたプロジェクトもある。5大発電事業者の1つ、中国華電集団公司と河南省の洛陽市政府は2008年1月3日、同市での原子力発電所建設に合意した。市政府は、最大限の努力を払う意向を表明したが、河南省発展改革委員会は中央政府の方針にしたがい、中国華電集団公司の実績不足を理由に同プロジェクトを支持しない考えを示した。

 しかし中国では、発電事業者にとって原子力発電を外した事業展開は考えられない情勢となってきている。中国華電集団公司は2008年10月20日、遼寧省東港市政府との間で、遼寧東港原子力発電プロジェクトの枠組み協定に調印した。同社は10月13日には第1期原子力発電人材養成訓練を開始するなど、原子力発電所の導入に向けて着々と準備を進めている。

 同社以外の5大発電事業者である中国華能集団公司や中国電力投資集団公司、中国大唐集団公司、中国華能集団公司も積極的に原子力発電プロジェクトを展開している。

 なお中国では、原子力発電所については5大発電事業者よりも広東核電集団有限公司と中国核工業集団公司の方が実績を持っており、今のところ2大原子力発電事業者としての地位を確立している。また、原子力発電プロジェクトを進めるにあたっては、5大発電事業者や地元の有力企業と組むケースが一般的になっている。

 5大発電事業者による原子力発電事業への積極的な参入は、中国政府が原子力発電の開発を強力に推し進めていることだけが理由ではない。国内産業の平均利潤率が10%程度であるのに対して、原子力発電産業の利潤率は30%を超えており、事業者にとって魅力的な事業となっていることも理由としてあげられる。

 中国では、原子力発電所の経営は、国務院が定めた「以核養核、滾動発展」(原子力発電所の運転で得られた資金で次の原子力発電所を建設する)という方針のもとに行われている。しかし、そうしたアプローチだけでは今後予想される多数の原子力発電所の資金を調達することはできない情勢となってきた。

 「原子力産業『第11次5ヵ年』発展規画」では、原子力発電所建設にあたっての資金調達問題に関して、投資主体の多元化を積極的に推進し、国による投資、銀行貸付、自己資金とエクイティファイナンスなどを相互に結合させた投融資制度を確立する方針を打ち出している。

 

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