第11回中国研究サロン「和解学」シンポジウム実行委員会 国際シンポジウム「和解学」への学際的アプローチ:方法論と応用(2014年11月30日開催)

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開催概要

日 時: 2014年11月30日(日)13:00 - 18:00

会 場: 独立行政法人科学技術振興機構(JST)東京本部別館1Fホール(※下記参照)

主 催: 「和解学」シンポジウム実行委員会

助 成: 国際交流基金・トヨタ財団・東華教育文化交流財団・東洋文庫現代中国研究班

協 力: 早稲田大学現代政治経済研究所

※プログラムはページ下方に記載

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ナショナリズムに立ち向かう努力を 日中の和解目指しシンポジウム

小岩井忠道(中国総合研究交流センター

 日本と中国はどのようにすれば真の和解ができるか、内外の研究者が議論するシンポジウム「『和解学』への学際的アプローチ―方法論と応用」が、11月30日東京都内で開かれた。

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 毛里和子早稲田大学名誉教授ら「新しい日中関係を考える研究者の会」に参加している研究者などからなる実行委員会が、科学技術振興機構中国総合研究交流センターと共催で開いた。日中双方の実情に詳しいスタンツェル元ドイツ駐中国・駐日本大使や北アイルランド紛争に長年関わってきたポーター英カンタベリー和解局大司教など内外の研究者たちが、それぞれの体験、見解に基づき、日中の和解のあり方を探った。

 研究者たちの基調講演、パネルディスカッションで明らかにされたことの一つは、国や地域間の浅い和解というのはこれまでも例があるが、深い和解は非常に難しく、できたとしても非常に時間がかかるという現実。深い和解を妨げているナショナリズムについても、多くの議論が交わされた。

 ナショナリズムの厄介さを端的に表現したのが、スタンツェル元ドイツ駐中国・駐日本大使で「ナショナリズムは不可避」と言い切っている。「世界全体でグローバル化が進み、利益は得ているもののそのスピードに乗り切れないという不安感が、ナショナリズムに安易な解決を求めようという動きの背景にある。グローバル化に対する不安感が強まるほどナショナリズムに傾く人は増える」と、氏は指摘した。

 沈旭暉・香港中文大学准教授は、習近平政権が打ち出した「中国の夢」が集団的利益を追求しているという意味で、「個人の利益を求めるアメリカンドリームなどより優れている」と評価する一方で、「中国政府がナショナリズムに依存しようとしている」現状に懸念を示した。

ツェン・ワン米シートンホール大学准教授は、「われわれはナショナリズムの時代に入っている」と語り、日中を含む東アジア地域が「戦後70年、いまだにアイデンティティ探しをしており、全ての地域、国が普通の国ではないと感じている」との見方を示した。日中国交正常化を実現した1972年の日中共同声明は「トップレベルのものであって、草の根では和解は成立していない」というわけだ。「紛争の源を国民のレベルで十分理解していなかった。両国間の大きな問題では和解していない」というワン氏と同様な見解は、スタンツェル氏も同じ。「日中間に本当の意味のディスカッションは行われなかった」と言っている。

 では、ナショナリズムに解決を求めようとする動きを抑え、深い和解を実現するにはどうしたらよいのか。研究者の多くから聞かれた言葉は、中間層、草の根レベルの交流、努力の大事さだった。

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 スタンツェル元ドイツ駐中国・駐日本大使は、「ナショナリズムに傾く人が増えるのに抗するには、政府や学術界が立ち向かう必要がある」と提言している。ポーター大司教も北アイルランド紛争の経験に基づき、「宗教対立のように、指導者たちが世界を支配するための一番簡単なことは恐怖をつくること」と指摘した上で「互いに手を差し伸べることで、相手の苦悩を共有することができる」と市民一人ひとりの努力の必要を強調した。また、マイオール英ケント大学名誉教授も「北アイルランド紛争にも見られるように、政治的に正常化するだけで深い意味の和解というものはなかなか実現しない。ナショナリストが過去を神話化するのを防ぎ、歴史家の共同委員会をつくるといった国同士の対話が物事を前進させる」と語った。

 こうした主張に呼応し、「日本のことを研究しているNGOが中国に生まれている。政府レベルよりNGO同士の話し合いが効果的だ」(沈旭暉・香港中文大学准教授)、「中間層が立ち上がって社会全体の認識を変えてほしい。経済界の人的交流に学んで事態を打開すべきだ。研究者も情報を社会の指導層と草の根に伝える役割を果たすべきだ(ツェン・ワン米シートンホール大学准教授)、「研究者であるが故に積極的に意見交換していくことが重要」(天児慧・早稲田大学教授)など、中間層、市民レベルの対話を促す提言が相次いだ。

 一方、深い和解を実現するには長い時間を必要とするという指摘も多い。中国本土から唯一参加した袁偉時・中山大学教授が「今、戦争をしたら国と国の融合が進む経済が立ち行かなくなる、とどこの国の政治家も思っている」と楽観的な見通しを述べた一方、スタンツェル元ドイツ駐中国・駐日本大使は「不幸なことが重なれば武力紛争の可能性はゼロではない」と注意を促した。

 マイオール英ケント大学名誉教授も、和解のために国の指導者が公的な立場で謝罪することの重要性を指摘しつつ、共同記念式典や補償と修復、原状回復といった適切な補完行為によって指導者の謝罪が国民に支持され、繰り返され、社会がそれを共有することで、ドイツのような成功例が生まれたことに注意を喚起した。こうした条件が満たされないと、謝罪もかえって関係する国や集団間の関係をあおる国内的な反発を招く恐れがあるということだ。

 シンポジウムの最後に主催者を代表してあいさつした毛里和子早稲田大学名誉教授(「新しい日中関係を考える研究者の会」代表幹事)は、「これまで日中は深い和解のチャンスがあったのに逃してきたのではないか。72年の日中共同声明時にももっと深い和解をすべきだった。戦後70年を迎える来年に、日中共同の記念行事ができないものか、私も努力したい」と語った。

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プログラム

13:00  開会の辞

久保 亨(信州大学)

広瀬 研吉(科学技術振興機構中国総合研究交流センター副センター長)

13:10 - 14:20  第Ⅰ部 基調講演

Volker Stanzel(Claremont Mckenna College訪問教授、元ドイツ駐中国/ 駐日本大使)
“Bold Enough for Reconciliation? Why a Social Consensus is Indispensable?”

Canon David Porter(The Archbishop of Canterbury's Director for Reconciliation)
“On the Far Side of Revenge: Making Peace in Northern Ireland”

14:25 - 15:45  第Ⅱ部「和解」学の現在

モデレータ:
村田 雄二郎(東京大学)

報告者:
石田 勇治(東京大学)
Hugh Miall(University of Kent)
袁 偉時(中山大学
Simon Shen(香港中文大学)

16:00 - 17:45  第Ⅲ部 ラウンドテーブル・ディスカッション「和解」学の応用

モデレータ:
平野 健一郎(東洋文庫)

パネリスト:
汪 錚(Seton Hall University)
天児 慧(早稲田大学)
竹中 千春(立教大学)
Volker Stanzel
Canon David Porter

17:45  閉会の辞

毛里 和子(早稲田大学)

18:30  懇親会

場 所:  市ヶ谷アルカディア私学会館(東京都千代田区九段北4-2-25) 

シンポジウム概要・プログラム(2.63MB)  PDFファイル


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