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【14-020】中国の大気汚染防止の法制度および関連政策(16)

2014年 9月8日

金 振

金 振(JIN Zhen):
科学技術振興機構中国総合研究交流センター フェロー

1976年 中国吉林省生まれ
1999年 中国東北師範大学 卒業
2000年 日本留学
2004年 大阪教育大学大学院 教育法学修士
2006年 京都大学大学院 法学修士
2009年 京都大学大学院 法学博士
2009年 電力中央研究所 協力研究員
2012年 地球環境戦略研究機関(IGES) 特任研究員
2013年4月 IGES 気候変動・エネルギー領域 研究員
2014年4月より現職

(4.2)自動車関連の法制度

企業平均燃費目標制度

 2012年から導入された現行基準は、基本的に第1、2段階の重量タイプ型規制方式を引き継いでいるが、「企業平均燃費目標制度」という新たな規制手法も導入している。

 企業平均燃費目標制度とは、事業者が生産または取り扱っているすべての重量タイプ自動車の平均燃費数値(以下、企業平均燃費数値)を持って企業の基準達成への取り組みを評価する制度であり、企業には、年 度ごとに達成すべき燃費改善目標が法的義務として課されている。

 企業平均燃費数値は、事業者が生産または取り扱っているすべての重量タイプ自動車の平均燃費数値を該当規制基準の平均値で割って得られるパーセンテージの値であり、規 制基準に対する企業の平均燃費レベルが分かる(表2)。値が100%より大きいほど、規制基準から乖離していることを表す。表2は、企業が達成すべき年度ごとの平均燃費目標値についてまとめたものである。 

表2 企業平均燃費目標値

表2

典拠:工业和信息化部「意见征集:《乘用车燃料消耗量限值》、
《乘用车燃料消耗量评价方法及指标》强制性国家标准修订」、GB27999-2011

企業平均燃費目標制度の目的

 第1、2段階規制制度にはなかった本規制手法の導入には、少なくとも以下のような政策的狙いがある。

 まず、新基準導入による企業負担を軽減する効果が挙げられる。第1、2段階の規制の場合、基準適用日を境に、基準を達成していない自動車の生産、出荷、販売を一切禁止した。規制基準を遵守するために、事 業者はすべての車種の設計・生産体制を見直さざるを得ず、莫大な設備投資を強いられることも少なくなかった。言わば、硬直な基準適用に伴う企業負担増の問題がここにはあった。これに対し、第3段階基準では、全 車種の画一的な基準適用を止め、企業平均燃費目標値さえクリアできれば、基準非達成の車種の製造・販売を許した。

 つぎに、燃費改善に向けた事業者の経営判断に柔軟性を持たせる効果がある。企業平均燃費数値は、事業者が生産または取り扱っている自動車数を考慮して算出される(図2)。つまり、燃 費性の高い自動車の販売台数が多ければ多いほど、目標達成には有利に働く仕組みである。また、規制基準を上回る燃費改善があった場合、その改善分または超過達成にあたる企業平均燃費目標値の翌年への繰り越し( 3年間有効)が認められるボーナス制度もある。例えば、燃費基準を上回る新車種の販売好調によって2014年における事業者の企業平均燃費レベルが90%に達したと仮定した場合、翌年を含む3年間、事業者は、年 度企業燃費目標値13%相当の負担軽減の権利を享受することができる。

 このような仕組みは、企業の選択と集中を可能にさせ、企業の自主的経営権に対する行政の過剰な関与をある程度減らす効果が期待できる。

目標非達成の場合の制裁措置

 2014年6月7日、工業和信息化部は、「乗用車企業平均燃費目標値の管理監督に関する通達」を発表し、目標非達成の事業者に対する不利益措置などを定めた規則に関するパプリックコメントを実施した。こ の規則によれば、目標非達成に事業者には、事業改善計画書の提出の求めや新規事業計画の許認可の不受理などの制裁措置が発動される。大幅な修正がないまま本規則が執行されれば、事 業者にとっては大きなインパクトになる。



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